コーヒーショップみどりのとさか

近所のコーヒーショップにはしあわせとふしあわせの2種類しかメニューがない、
ふしあわせにはミルクを入れますか、
しあわせはお持ち帰りですか、
行くたびに違う動物の頭になる店員の、
上機嫌でも不機嫌でもない声が好きだった、
にわとりの頭のときと、おおかみの頭のときは、
どきどきするからふしあわせしか頼めない、 
名札の着いていないみどりいろのエプロンはいつも清潔にしゃんと伸びている、
あと4回くらい人生があるなら1度くらいは名前を知りたい、
今回はのこりの3回のうちのどれかだって、
分かっているからそんなこと言うんだね。
 
 
隣の席のおとことおんな、
たぶんマッチングアプリで出会って、
今日はじめて会ったんだろうな。
トールサイズのしあわせがふたつ、
木造りのちいさなテーブルに置かれている、
盗み聞きしているわけじゃないんです、
隣だから聞こえてしまうだけで、
今日は黒山羊の頭の店員さんに、
くだらない言い訳の念を送る、
多分今日は白山羊になって、
ひつじの群れに馴染めない夢を見る。
 
 
足りないかもしれない、と、
余らせてしまうかもしれない、を、
往復してばかりいるから、
小学5年生のときはメトロノームと呼ばれていたんです、
嘘です、
あだ名をつけられたことはないから、
グランデかショートしか頼まないんです、
あだ名をつけられたことはないから、
角砂糖をふたつ溶かすんです。
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 

生活になるし、だからそのうち詩になります。ありがとうございます。