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『文豪ストレイドッグス』備忘録メモ① 解説と考察

※この記事は『文豪ストレイドッグス』に関する考察となっております。
※単体では分かりにくい『備忘録メモ』の補足説明となりますので、先に資料をご覧頂くことを推奨しております。


【ご挨拶】

 皆様、初めまして、逢魔の黄昏と申します。基本的には『小説家になろう』を中心にネット小説らしきものを書いては放流する日々を送っています。
 そんな私ですが、昨日、思い切ってnote様に進出し、思いついたよしなしごとを放流していくことにしました。

 そして、最初に放流したのがあのメモになります。ただ、あれは何を目的としたものなのか、何を意図しているのかが伝わらない可能性が高いと考え、今回、こうして補填的な内容の記事を出すことにしました。今後も何かしらの資料的なものを放流する場合は、こうした補填的な考察らしきものを別途投稿させて頂きたいと考えております。

【大枠考察】

 『文豪ストレイドッグス』といえば、やはり異能力者というところに視点が行きがちです。
 勿論、異能が全てという訳ではなく、頭脳戦など異能以外に焦点を当てた場面も多分に含まれていますが、物語の性質上やはり異能に注目が集まることが多いと思います。

 勿論、異能力についても多分に考察の余地がありますが、今回は非異能力者を中心に焦点を当てることになりました。

 先述の資料を見て頂ければ一目瞭然だと思いますが、基本的に非異能力者の出展はその所属先と関係が深い異能力者となっている文豪の作品の登場人物に統一される傾向にあるようです。
 例えば、武装探偵社の社員は谷崎潤一郎の著作『痴人の愛』から、国木田独歩と関わる人物については『春の鳥』、『非凡なる凡人』などから、といった感じです。佐々木信子は実在の人物ですが、彼女も国木田独歩と関わりの深い人物なので、実在か作中人物かは別として関わりの深い人物をピックアップしてきたという法則からは外れないと思います。

 基本的に、この非異能力者の命名法則は外伝『綾辻行人 VS. 京極夏彦』も含めて存在しているように見えますが、例外も存在します。

 組合のことではありません。ジェームズ・Lが例となるルーシーの著作の登場人物から取られたと思われる系統と、それ以外のフランシスの関係者や著作の登場人物から取られたと思われる系統がありますが、どちらも組合の関係者ですからね。それに、ルーシーとジェームズの絡みも作中にいくつかあるため、違和感も特にありません。

 小栗虫太郎の関連でもありません。
 彼の場合は金田一というペンネームを使っていた小説家のヨコミゾ一人に限られますね。
 彼の元ネタであると思われる横溝正史は小栗虫太郎と互いにピンチヒッターの関係にあったようです。横溝正史も異能力者として登場しても良い筈ですが、彼が異能力を持たないと思われる顔すら描かれない(虫太郎の目を通してしか存在を確認できない)人物として描かれたのは、ヨコミゾと小栗虫太郎が表裏一体の存在として描かれたのかもしれません。この辺り、更に深掘りできそうな話ではありますが、技量も知識もないためこの辺りで止めにしておきましょう。

【探偵社設立秘話の倉橋について】

 さて、それでは例外とは一体誰かといいますと、脚本家の倉橋です。
 彼は「探偵社設立秘話」に登場した人物で、舞台俳優の村上時雄(村上青年)と組んで逆転する演劇を実行しました。村上青年の逮捕時には既に死んでおり、出番はそこで終わってしまいます。

 この「探偵社設立秘話」に登場する人物は基本的に江戸川乱歩の著作の登場人物から取られていると思われます。
 例えば、江川女史は江戸川乱歩も参加した合同合作探偵小説『江川蘭子』に登場する妖女・江川蘭子から、前述の村上青年は江戸川乱歩の小説『怪人四十面相』の登場人物から、三田村巡査長は江戸川乱歩の少年探偵シリーズ『幽鬼の塔』に登場する画家の三田村から、といった具合です。

 ただ、この倉橋については江戸川乱歩の著作との関係を発見することができませんでした。

 この村上青年が演じた演劇は、作中でⅤと呼ばれる組織と繋がりがあったと思われる倉橋によって執筆されており、その倉橋は密室で殺害されました。アニメ版の最後でヒョードル君(ドス君)によってⅤがファイブ(つまり天人五衰)であることが示されたこと、殺害できそうな人物にニコライ・ゴーゴリが挙げられることから、倉橋が天人五衰と繋がっていた人物であることは疑いようがありません。
 そして、この演劇は天人五衰編と密接に関わりがあるのではないかというものあし先生の先行研究もあります。

 この倉橋、明らかに鍵を握っている人物なのですが、知識不足で誰と関わりがある人物なのか、正直見当がつきません。
 流石に適当に名付けたとは思えませんし、この辺りが明らかになれば、『探偵社設立秘話』時点で天人五衰の黒幕が暗示されていたとか、色々と言えるかもしれませんが、現時点ではここまでです。今後も調査を続けるつもりですが、ご意見を頂けると大変助かります。ご協力のほど、よろしくお願いします。……って、完全に丸投げですね。

【中島敦と斗南端蔵について】

 実はもう一点、この資料で気になる点があります。
 それは、司法省の斗南端蔵司法次官です。彼は政府の秘密会議のメンバーで父親である斗南撫山を暗殺した福沢諭吉を恨んで探偵社転覆を企てていました。その願いは結果として、ゴーゴリによって果たされることになります。
 実はこの二人は中島敦と深い繋がりがある人物が元ネタとなっています。

 斗南端蔵は中島敦が最も影響を受けたという伯父で中島端(幼名、端蔵)が由来となっていると思われ、この中島端は中島敦の著作『斗南先生』に登場する三造の伯父のモデルにもなっています。伯父の開蔵も含まれているという説もありますが、定かではありません。
 斗南撫山のモデルは中島撫山で、中島敦の祖父にあたる人物です。

 実はこの話題、お題箱でものあし先生にお送りしたものとなっています。

 その際にものあし先生が『斗南と撫山の登山の写真を史実に照らし合わせたときに、本来斗南の位置には中島敦がいて、撫山の位置には斗南先生がいることになります。』とご指摘されている通り、中島敦を避けるように奇妙なスライドがなされているのです。

 敦君が斗南端蔵司法次官と実際に会っているのはは白紙の文学書の頁(ページ)が使われるよりも以前のところで、一対一で対面している場面だけになります。
 その後、ゴーゴリの手によって不楽本座の作戦は実行されますが、別行動をしていた乱歩君と福沢先生を除いて、他の探偵社員と共に事件阻止に動いていた筈の敦君はゴーゴリの足止めを食らってその場に居合わせることができなかったのですよね。

 しかし、何故ゴーゴリは敦を捕縛するのではなく足止めをしたのか。作中のほとんどの敵は白紙の文学書を目指しており、既に頁(ページ)を手に入れていた天人五衰も白紙の文学書を手に入れることができれば作戦が簡略化できるにも拘らず、奇妙なことに捕縛を試みていないのですよね。これは、敦君の殺害を狙った神威(福地桜痴)にも言えることですが。
 例え、白紙の文学書を欲していないとしても、敦君にあの場でトドメを刺さなかったことで、結果として探偵社の再集結が行われてしまうのですから、結果論としては悪手だったとしか言いようがありません。

 ですので、あのゴーゴリの足止めには何かしらの意味があったのではないか、と私は考えております。
 あえて福沢諭吉の関係者ではなく、主人公・中島敦の関係者をモデルにした人物を探偵社を破滅させるトリガーにした理由があるのかもしれません。もしかしたら、敦君と斗南端蔵の間には本人達も知らない何かしらの繋がりがあるのかもしれません。天人五衰事件が解決した後にも残る斗南端蔵との蟠りの解消、そして敦君の出自について明かされる伏線がこの時点で貼られていたのかも……と妄想を膨らませてしまいました。

【ポートマフィアのAとカルマについて】


 ポートマフィアは探偵社のように、具体的にこの登場人物の関係者や作中人物がモデルに、ということはありません。
 そして、残念ながら元ネタ不明の人物が二人存在しています。A(エース)とカルマです。

 この二人、特にA(エース)については異能力者であるということもあってネット上で確認してみると元ネタが誰なのかと興味を持たれている方もおられるようでした。
 二人ともドス君と関係したので、ドス君関係なのかという説もあり、今回はネット上にあったフョードル・ドストエフスキーの長編小説『賭博者』のアレクセイ・イワーノヴィチという説を挙げてみましたが、彼は作中人物であって文豪ではないのですよね。文豪でないものが異能力を持つとなると、異能力者の前提条件が色々と揺らいでしまいます。かといって、該当しそうな文豪も無し、と八方塞がりです。カルマに関してはもっと情報がありません。
 ということで、こちらも情報提供を求めております。

 大変長い記事となってしまいました。ここまでお読みくださりありがとうございました。

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