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日本最大級のオンラインギャラリー代表に「アーティストのプロモーションのしかた」について聞いてみた

「アートで食べていけるアーティストの数を増やす」ことを掲げ、17年つづくオンラインギャラリータグボート
徳光さんが代表になったのは12年前です。現在でも積極的に新規取り扱いアーティストの発掘を行っているタグボート代表の徳光さんに、アートにまつわるウラ話を伺って来ました。

今回のテーマは「アーティストのプロモーションのしかた」です。

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↑ ギャラリータグボート代表の徳光さんとみじんこです。

Ouma(以下、O)「タグボートってオンラインギャラリーの強みを活かしてることもあって、取扱いの作家は多いですよね」

徳光さん「そうですね。現在は140人ほどです。でも300人まで増やすつもりでいますよ」

O「えっ。めっちゃ多いですね。それなら多くのアーティストにチャンスがありそう」

徳光さん「イメージ的にはAKBみたいな感じにして育成していきたいんだよね。ギャラリーっていうのは、そもそも芸能プロダクションみたいな仕事だから」

O「なるほど、確かに」

徳光さん「作家をプロモーションしていく場合に、どういうビジネスモデルがあるのかっていうのを調べたんだけど、たとえば日本とアメリカってプロデュースのしかたが全然違うのね」

O「へえー、どんな違いがあるんですか?」

徳光さん「アメリカはオーディション型。1万人の中から受かった1人だけを徹底的に推しまくる感じ。受かれば後は至れり尽くせりで、上っていけるみたいな感じだね」

O「なるほど。日本もホリプロのオーディションとかがそんな感じですかね」

徳光さん「そうだね。日本は他にもうまくいってる芸能事務所としては、ジャニーズ、AKB、吉本があるんだけど、これらの事務所の特徴っていうのは育成なんだ」

O「育成?」

徳光さん「そうそう、本人たちはまだ何にもない状態から育てられているんだよね」

O「あー! 確かに、初期のAKBメンバーとかまだ初々しい感じだったのが、だんだんプロの顔になっていくというか」

徳光さん「ファンとしては、その過程も応援したくなるよね。吉本だって何期生みたいなのがあるし、そういう言い方から考えても、学校的な要素があるんだよ」

O「なるほどなぁ」

徳光さん「吉本は売れている一部の芸人が、若手を食わせる構図になってて、そういうのはギャラリーと同じだよね」

O「トップアーティストが所属してると、その儲けを若手育成に使える感じですね。そういえば、バルセロナのギャラリーで大御所アーティストと若手が作品内コラボしてたのありましたよ。2人展なんですが、1つの作品を2人でつくるようなコラボをしてるのがありました」

参考:バルセロナのSendaギャラリーでの展示の様子。Peter HalleyとYago Hortalのコラボ展です ↓

徳光さん「なるほどね。あと、AKBはメンバーの所属事務所もいろいろなんだけど」

O「えっ、違うんですか」

徳光さん「うん、いろいろ。そういうやり方だと、人数が多くてもマネージメントできるんだよね。タグボートが目指しているのもAKB方式が近くて、他のギャラリーにも所属してるけど、タグボートの取り扱いでもあるとか」

O「なるほど。なんか全然、今までのギャラリーの考え方とは違う世界観ですね」

徳光さん「タグボートとして、アーティストの教育と育成をしっかり頑張りたいっていうのもあるんだ。アイドルを推すやり方は日本という土壌にもあってると思うし。握手券みたいなやり方はアートとは合わないけど、タグボートのアーティストの中から推しメンを選んでもらう、みたいなのはアリだよね」

O「AKBの誰かが好きで見に来てたけど、この子も頑張ってるから気になってきた、みたいな横の動きもありそうですね。それでも、育成はかなり長期的な視点になりそうですね」

徳光さん「うん。楽をするなら売れてる子を引っ張ってくるのが早いんだけど、業界の将来を考えたら、腰を据えて若手を育てていく場所があったほうが絶対にいいんだよ」

O「確かに。最近は在学中のアーティストさんをタグボートではよく見かけるような」

徳光さん「ここ数年は美大を出たばかりの人や在学中の人を多くピックアップしてるね。それは将来性を考えて」

O「そういえば、SICF21の受賞式の動画を見てたら、大賞受賞した方は学生だったんですね。ただ、その方は将来アートをやるかどうかは悩んでるって言ってたみたいなんです」

O「アートで生きるってそもそも狭き門なので、22とか24歳くらいで進路として将来を確定的に決めないといけないのって結構きついと思うんですよね。10年やってこれ以上はキツイってなった時に、社会人経験がゼロでやり直せるのかっていうとそれは厳しいじゃないですか。
 そういう意味では、タグボートの取り扱いは将来に対する保険という意味でもありがたいかも。取扱いにしておいてもらいながら、就職することもできますし、アートの方がうまくいきそうならそっちにシフトできる。発表の場が学生時代から確保できるだけで、アートでやっていきたいという意識を持ち続けられますから」

徳光さん「有望な若手が、卒業と同時にアートから離れてしまうのは、やっぱりもったいないよね。ただ、作家自身もまだまだ古いところがあって、プライマリーでリアルに力を入れてるギャラリーのほうがかっこいいって思ってそうなところはあるかもね」

O「オンラインギャラリーの成功事例みたいなのがあんまりないからですかねぇ。そもそもインターネットが出てきたこと自体が数十年前だから。ただ、タグボートはリアルギャラリーも持ってるし、最近は大型のイベントも多く主催してますよね」

徳光さん「発表の場があるのは作家のモチベーションにもなるからね。あと海外での展覧会とかはね、作家同士が親密になるから。海外でバス借りてみんなでギャラリーツアーしたり、フェア見に行ったり」

O「あー、わかる! 特にインスタレーションは展示が大変なので、手伝い合うことで仲良くなりやすいのありますね」

徳光さん「だよね。タグボート内でも作家同士の交流が活発になって、切磋琢磨されていくし。アーティストだって一人じゃ生きていけないから、ライバル意識ももちながら、上を目指してもらいたいっていうのは期待してるところだよ」

O「まさにAKBだ」

徳光さん「そういうことも考慮して作家を選んでるから、作家のコミュニケーション力も大事。しっかりした意見があるのはいいんだけど、ほかの人のことも大切にできる人がいい」

O「なるほどー」

1.ぽたぽたシトシトする葉っぱ

O「オンラインのギャラリーの懸念点みたいなところを聞きたいんですが、タグボート経由で買う人は、ネット使いも慣れてそうですよね。買う人が作家から直接買おうって思って調べれば、だいたい作家と直接連絡がついちゃうはず。ギャラリーへの手数料がかからない分、安く買えるし、そっちのほうがいいって考える人は出てこないんですかね?」

徳光さん「そういう人はいるかもしれないけど、本当に作家のことを考えるなら、ギャラリー経由で買ってあげたほうが絶対にいいよ。だって、プロモーションしてくれるギャラリーがなかったら、先がないから」

O「あー、そうですね。アートフェアとかもギャラリー単位じゃないと出せないし」

徳光さん「個人がギャラリーをつくる、たとえば村上隆さんのカイカイキキみたいなこともできるけど、ギャラリー運営をしないといけないからね」

O「プロモーションまで自分でやり始めると制作時間が減るので、そういうのが得意でない限りきついかもしれないですね。プロモーションしてくれるところと組めるなら、そっちのほうが助かる部分は多そうだなぁ」

徳光さん「うん。ただ、今後、ギャラリー抜きでやるアーティストも増えてくると思う」

O「デジタルネイティブ世代か!」

徳光さん「作家がファンをもっているなら、そういう人をピックアップしちゃえば早いよね。そもそも、ギャラリーのプロモーション力より個人のプロモーション力が強ければ、もうギャラリーはいらないってことになるし。作家がどのギャラリーを選ぶかっていう問題になってくるかな」

O「そこまでできる作家って何人いるんだろう。それができる人は、何やってもうまくいってそうですね」

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https://tagboat.tokyo/category/collectorinformation

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