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「本当にやりたいことをやるっていうのは実は勇気がいることなのかもしれない」の話

「自分よりも、自分が愛しているものを傷つけられる方が辛い。そうは思わないか?」
 老人は淹れたばかりのコーヒーを口にしてから言った。
「だからね、本当にやりたいことをまっすぐやれている人は意外と少ないのかもしれないなんて思うことがあるよ」
「まっすぐやるのが難しい? どういうことですか?」
 私は老人に聞き返す。愛するものを傷つけられると辛いという言葉と、やりたいことをやれないという話が、自分の中ではうまく結びつかない。
「やりたいことをやろうとする。でも最初からそれが周りに認められる人なんてどれだけいるだろう? 少なくとも私の周りにはほとんどいないよ。それはつまり、好きなことをやっていても、誰にも響かない中で続けないといけないってことだろう?」
「そうですね」
 絵だろうと音楽だろうと。みんな、最初からうまかったわけじゃない。もちろん、最初から才能がある人だっていると思うけど、まったく努力したことがない人なんてこの世にいるだろうか。
「自分の好きなものが、誰からも好きになってもらえない。それが続くと、だんだん『好き』を守ろうとし始めることってないかな」

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