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「自分が苦しんでる時は相手もだいたい苦しんでる」の話

「何かにいら立ってしまっている時は、自分の世界が狭くなっている証拠なんじゃないかって思ってるんだ」
 老人は紅茶のカップに輪切りのレモンを落としながら言った。
「世界が狭くなっている?」
「そう。イライラさせるもののことばかり考えてしまってるってことだからね。世界にはもっと素晴らしいことがいっぱいあるし、自分がやるべきこともたくさんあるはずだ。それなのに、楽しいことから目を背けて、自分を苛立たせるものばかりに向かっていってしまう」
 イライラしたくないなら無視すればいい、なのにできないというのは、もしかしたら苛立つという状態を自分が欲しているのかもしれない、と老人は言った。
「イライラなんてしたくないですよ。イライラを欲してるなんて本当かなぁ」
「嫌ならとっとと忘れて楽しいことだけを考えていけばいいのに、なんだかひっかかってしまうと、いつまでもそのことばかりを考えてしまう。そういうことってないかな?」
「あはは、ありますね」
 ちょっと嫌なことがあると、自分はいつもそのことばかりを考えてしまう。嫌なことなはずなのに、自分の大事な時間を嫌なことに奪われてしまってる。そんなことよりもっと、自分にはやりたいことがあるはずなのに。
「嫌なことから気持ちを離す方法ってありますかね」
「無視して忘れるっていうことができないなら、自分だったらちゃんと拒絶するかもしれない」

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