老いるということは機能から存在に価値の視点が変わっていくということ~近藤 尚
ArtStickerから、近藤尚さんのこちらの作品をStickerさせていただきました。
使われなくなった古い楽器を椅子や物を入れるような「家具」として、これまでとは違う使い方を提供している作品です。
「老いる」ということについて、視点を変えさせてくれるような作品で、年を重ねることで機能に目が向いていた価値が、存在そのものに変わっていくような感じを受けました。
古くなった楽器は、つくられた時の用途「音を奏でる」という機能が果たせなくなっています。でも「音を奏でていた者」としての存在感がそこにはあります。
若い頃ってなんとなく「できること」を増やすために頑張ってた気がするんですね。パソコンが使えるようになるだったり、日本語が分かるようになるだったり。自分に付随する機能を増やすことに夢中になっていて、それは機能をつけることで自分の価値を増やそうとしていた行為に思うのです。
楽器だったら、音を奏でるという機能的価値を持ち合わせていました。
ただ、年齢が進むにつれ、目が見にくくなったり、体力がなくなったり、機能的に確実に落ちる部分が出てきます。でも、長く生き続けてきた人は誰でも、その人生の中にその人にしかないデータが溜まっています。
データの蓄積を外部の人が感じる部分は、増えた皺かもしれないし、色の変わった髪かもしれない。
どこから「機能的な価値」が「存在的な価値」に変わっていくのかは分かりません。
老化によって機能的価値が失われていくのであれば、それでもいいのだということ。老化というのは、機能を追う時期ではなく、存在という価値に目を向ける時期が来たということを諭してくれるような作品で、機能ではない、ヒトとしての価値を思い出させてくれるような作品だと感じました。
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