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「すごい人と一緒に仕事をするにはどうしたらいいか」の話

 自分は自分の周りの人の平均値になるという言葉を聞いたことがある。それが本当なら、すごい人たちと一緒に仕事ができるようになってみたい。そう思って私は老人に質問を投げかける。
「すごい人と一緒に仕事をするには、どうしたらいいでしょうか?」
 老人はデンマークに住むアートコレクターで、彼の部屋には小さなアート作品が壁いっぱいに並んでいる。
「君がすごいと思うのは、どんな人のことだい?」
 彼は私に質問を返しながら、私に紅茶を勧める。紅茶の香りが部屋に漂うのを見ながら、私は少し考える。そして言った。
「名前がすでに知られてる人は、それだけですごいなって気がするんですが、そうじゃなくても、自分に気づきをくれる人のことは、すごいなって感じます」
「気づきっていうのは、どんな?」
「ええっと、そうですね、自分がこれまで思いついたことがないアイデアとか視点とか。発見をくれる人はすごいなって思います」
「発見をくれるかどうかは、どこで分かるの?」
 私はこれまでに会って、自分がすごいと感じた人たちのことを思い出してみる。彼らの実績を私が知ってたわけではないし、自分のことを褒めてくれたわけでもない。それでもすごいと感じたのは、なぜか。
「話している時に感じます。そんなこと考えたことなかったなとか。自分が気づかなかった視点を気づかせてくれたって感じた時にすごいと思います」
 話していて私は考える。豊富な知識を紹介されるだけでは、自分はすごいと感じないかもしれない。知識は、その知識を構築した人がすごいのであって、知識を語る人がすごいわけじゃないから。

「じゃあ、そういう人たちは、なんで君と仕事したいと思うんだろう?」

 老人に言われて私は言葉に詰まる。そうだ、すごい人は一緒に仕事をする人を選べるはずだ。私がすごい人たちと仕事をしたいと思ったとして、相手がそう思ってくれるわけじゃない。むしろ、そんな思いでやってくる人となんか仕事したくないはずだ。
「思わないかも。思わなそうです」
「ははは、そうか」
 私の答えに老人は明るく笑う。それからチョコレートが入った箱を私に差し出す。

「すごい人と一緒に仕事をする方法は簡単だよ。相手をすごい人にしてしまえばいい」

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