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ウーゴ・ロンディノーネ「孤独のボキャブラリー」レイヤーによって変わるコミュニケーション

スイス生まれのアーティスト、ウーゴ・ロンディノーネ。2019年のあいちトリエンナーレでもメイン作品として発表されていた作家さんです。

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かわいい!

↑ こちらの写真はあいちでの展示風景なんですが、2018年にデンマークのアルケン近代美術館で展示されていた時は、ライトアップされていてこんな感じになってました。↓

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華やかな服装のピエロさんたちとも合ってて、このライトの演出は私はけっこう好きです。それにしても、展示っていうのはつくづく、「作品単体」だけでなく、①どこに設置するか、②どのように設置するか、で見え方が変わるものだなと感じます。

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かわいい。

あいトリで展示されていたので、日本語でも解説があるのですが、本作のピエロたちにはそれぞれのピエロが行う行為によって名前が付けられています。

佇む/呼吸する/寝る/夢見る/目覚める/起き上がる/座る/聞く/見る/考える/立つ/歩く/おしっこする/シャワーを浴びる/着る/飲む/おならする/うんちする/読む/笑う/料理する/嗅ぐ/味わう/食べる/掃除する/書く/空想する/思い出す/泣く/居眠りする/感動する/感じる/うめく/楽しむ/浮かぶ/愛する/望む/願う/歌う/踊る/落ちる/罵る/あくびする/脱ぐ/嘘をつく

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うんちしてるやつ誰だよって感じがするんですが、料理してるっぽいピエロさんも特にいません。いや、この休んでるっぽい姿勢で45の行為を表しているんでしょう。

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いろんな読み解きのできる素晴らしい作品だなと思うのですが、今回はコミュニケーションについて考えてみたいなと思います。

1)態度によるコミュニケーション

最初はピエロの態度によるコミュニケーション。孤独のボキャブラリーというタイトルがついているだけあって、無表情なピエロからは相手と対話しようみたいな気がまったく感じられません。

同じ空間にいても周りの人に構う気がないよ、っていう空気をピエロが出しているんですね。

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ピエロはただ休んでいるように見えて、ちゃんと「拒絶」みたいな意志を態度で表しています。周りの人なんて知らないよっていう態度で。

2)孤独を作っているのは誰か

ピエロ同士も関わりあっているように見えてそうでもない。背中越しに対話しているのでしょうか。お互いの温度を感じるかもしれないけど、どうでしょう。

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私は、ピエロの孤独は「周囲への拒絶」によって自ら作っているように感じられました。孤独を作り出しているのはピエロ本人であって、周りの人が孤独を与えているわけではないということですね。

態度によって自分の周囲に拒絶感を生み、それによって自ら孤独になろうとしている。そこらへんが「孤独」というボキャブラリーに思えてなりません。

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関わろうとしても仲間にはなれない感じ。

3)ピエロは誰か?

ピエロっていう存在を考えると、楽しく人を笑わせてくれる道化師なわけですよね。しかし、ピエロの歴史を調べてみると、障がい者をサーカスで笑いものにしていたとか、悲しい気持ちを抱えているために仮面に涙を流しているんだ、とかいろんな説が出てきます。

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ピエロを見かけたら、いろんな背景はあれど、自分を楽しませてくれそうだな―、構ってくれそうだなーっていう感じがします。

しかし、ウーゴのピエロたちは全然かまってくれません。

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どちらかというと、鑑賞者のほうがピエロに「構ってもらいたがる」感じで、写真を撮りまくります。なんか、ピエロと立場逆転してる感じですよね。

4)集団としてはウェルカム

個別のピエロたちはなんだか拒絶してくる感じですが、展示全体を考えた時、やっぱりこの展示は鑑賞者に対してウェルカムなんです。

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それはピエロたちの間にちゃんと空間があり、自分たちが歩けるスペースがあることや、ピエロ同士が密集して背中を向ける、みたいな集団としての拒絶姿勢がないからです。

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ピエロたちが同一方向を向いているわけではなく、いろんな方向を向いているので、背中だけを見せられるアングルっていうのが存在しないんですね。

5)個体としてのコミュニケーションと集団としてのコミュニケーション

そんな感じで、作品を集団的にとらえるか、個体としてとらえるかでコミュニケーションに変化があるところがこの作品のおもしろいところの一つだなぁと思っています。

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都市に声があるというこちらの記事がとても参考になるのですが

個が発しているメッセージ、コミュニティが発しているメッセージ、集団が発しているメッセージ、のように、コミュニケーションっていろんなレベルで行われているんですよね。

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そのコミュニケーションは、もしかしたら上位レイヤーのほうが影響が強いかもしれない。ピエロが他者との対話を拒絶していても、ピエロ集団は他者の存在を受け入れている=他者は拒絶されない、という感じです。

態度という言語からさまざまな示唆が感じられて、それでいて何も考えなくてもコミカルで、とても楽しい作品でした!

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