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「卯の花腐し」のラフから完成まで

【物語】

終わりの見えない雨は美しいものを枯らせる
人も過剰な愛や妬み、憎しみの雨に耐えられない


挨拶

こんばんは、伊織滄桜です。作品の制作過程を載せる載せると言って、中々出せていませんでした……。今回は思いれのある作品の制作過程をご紹介したいと思います。
どんな風に作品が出来上がっていくのか、どんなことを考えているのかをお見せしてより深く作品を楽しんでもらえたら嬉しいなと思います。

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この作品は銅版画で制作しました。大学で版画を専攻し、まだまだ分からないことがある中、試行錯誤しながら制作しました。
銅板サイズ   18×12.8cm

※今回は流れを紹介しようと思うので、銅版画の技法については簡単な説明になっています。


制作過程


1,言葉探し&大まかな物語を考える

制作に入るときは最初にまず、言葉を探します。メモ帳に気に入っている言葉や単語を日々書き留めているので、その中から探したり、本やネットで探すこともあります。言葉が決まったら、物語の方向性を考えます。悲しいのか喜びなのかなどの大まかな方向性です。

「卯の花腐し(うのはなくたし)」
意味
陰暦四月の中・下旬に降り続く長雨が卯の花(白いウツギ)を腐らすこと
転じて、五月雨(さみだれ)に先立って降る長雨

「卯の花腐し」は本で見つけました(何の本だったかは忘れてしまいました…)今度からは引用もちゃんと控えておこうと思います!

この言葉の名前の響きと意味を知って、何だこれは!絵描きたい!ってなりました。意味は卯の花を枯らす雨のことですから、卯の花を人に倣えようと考え、どんな物語かなー?と想像します。そんな想像をしながら、とりあえず、手を動かします。描いているうちに出来上がることもあるので!


2,ラフのラフ

ラフというようりイメージをとりあえず沢山描きます。画像を参考にしながら描きます。案は出せるだけ出した方がいいです。納得できるまでやることが大切だと思います。最初のラフは小さく、3×5~5×7くらいのサイズ感で描いています。

ボツラフ達

最初はマリオットとかをイメージしたり、構図が中々決まらなくて色々描いているうちに倒れた人の周りに枯れた植物たちと骸骨を置いて、人と一体化している感じにしようと、頭に中に絵が見えるようになってきました。

この辺で倒れさす形なった。

徐々に完成系に近づいきます。

最近では、デジタルでラフを描くことも増えました。


3,ラフを描く

何となくイメージが出てきたら、花やその他のモチーフの参考画像等を探し、どこに何を配置するのかを決めます。今回は銅版画ということで、黒一色なので、着彩ラフはありません。

元々花や植物は描く予定でした。でも、植物も人も美しい姿を保つのは難しく、過剰に水を与えられた花は枯れ、人も過剰な愛や妬みは身を亡ぼすと思い、全て枯らすのではなく、美しく咲くものと一緒に描くことでその意味合いが増すように心掛けました。また、人が「人」と目立たないように女性の描き込みはあえて、控えめにして、逆に植物は書き込みました。

最終的なラフ

いつも元気な花や植物を描いていたので、枯れているものを描くのは新鮮でした。思えば、咲いている姿は思い浮かぶのに、どうやって枯れるのかは分からないことが多く、植物でもなんでも終わりはあるのだから、そのことを考えるいい機会になりました。


4,トレーシングペーパーに線画を描く

ラフが出来たら、トレーシングペーパーに直接線画を描きます。
ラフ→清書→トレーシングペーパー→銅版→エッチングと版画は何回も描き写します。大変なので、直接トレーシングペーパーに清書しています。

これで線画は完成です!

5,銅にグランドをかける

今回は間接技法という技法で制作してます。簡単に説明すると間接技法は腐食液(銅の表面を溶かす液体)という赤茶色の液体の中に銅板を浸けて、銅が出ているところを溶かして、線や凹を作る技法です。そして、出来た凹にインクが入り、紙に写り絵が出てきます。
銅板のすべてを溶かしたくないので、腐食液から銅板を守るために、銅版に防蝕剤(グランド)をかけます。

今度、銅版画についても書きたいと思ってます。


6,銅に写し、エッチングする

銅に写したところは撮影するの忘れてました…。
チャコペーパーで銅に写したら、ニードルという道具を使用してエッチングしていきます。

※当たり前ですが、版画なので、絵は反転します!そこを踏まえて、写さないといけません。私も間違えたことあります(笑)

エッチングしています。

7,腐食する

線の濃さや太さは腐食時間によっても変化します。なので、エッチングして腐食して、試し刷りしてまたエッチングしたり、そこからは作家の個性やイメージのもと試行錯誤しながら制作してきます。


8,試し刷り

銅板画では、試し刷りをして確認しながら、進めていくことが大事です。過程が多く大変ではありますが、少しずつ形になっていく様子は楽しくもあり、醍醐味でもあります。
手順としては、防蝕剤(グランド)を専用の薬品で落として、インクを出来た凹や線にのせて、プレス機で紙に写し取ります。

インクが乗っている状態
試し刷り
一回目
この後、何回か摺りました。

9,作品完成

線の濃さや太さなどイメージに近づけるために試行錯誤を繰り返し、完成です。エディション(タイトルとサイン)を書いたら、額に入れて制作終了です。

©「卯の花腐し」2021/11/19 エッチング

10,額装

額に入れると一気に完成度があがりますね。木製で赤色がとても可愛いくて、一目惚れして即買いました!


おまけ

結構色んなところに走り書きのメモがあります。その都度、物語や気持ちを書いておきます。走り書きも多く何て書いてるのか分からないときもあります(笑)。
あと、腐食時間や何処の線や太さに違いを出すかなどもメモしています。

物語を言葉にして残してる。

終わり

作品の制作過程お付き合いいただきありがとうございました。
noteを開始してやっと作品の制作過程をお話し出来ました。作品が一つ完成するまでには沢山の過程があり、思いがあります。作品を見ただけでは伝わらないこともありますが、知ることで違う見方もできて楽しいと思います。あえて、考えは書かずに鑑賞者に託すというのもいいですし、芸術は自由なので、自由に感じてもらえた嬉しいなって思います。

これからも作品の制作過程をあげていく予定なので、よろしくお願いします!

それでは、また

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