夢物語

    いつから夢を諦めたのだろう …… 。
子供の頃は、なりたいものがたくさんあった。
    
    下から吹き上げる風がすごい。
    でも、真っ暗な夜空に浮かび上がるネオン街は、たくさんの人が行き来してるんだろうな。

┄┄┄┄ 私は、もうすぐネオンの海に飛び込む。

    オーディションとか受けて、TVに映ってみたかったな。顔は …… まあまあだから、アイドルには手が届かないかも。
    漫画家にもなりたかった。
    声優にもあこがれた。


    結婚して、温かい家庭をつくりたい。
    子供は２人欲しいな。男の子と女の子。

┄┄┄┄ 全部、叶わなかったよ …… 。

    家は裕福じゃなかった。
    勉強よりも、アルバイトを頑張った。
    高校を出て就職した。

    就職先で出会った同期と、２１で結婚した。けれど、子供は授からなかった。私には持病があって、ずっと薬を飲んでいなきゃならなかったから。
    医師からは、諦めなさいと。

    同期の夢は、２つあった。
    子供を持つことと、起業して成功すること。
    そんな主人は、働くことが嫌いだった。


    何度も喧嘩した。
    夢しか追いかけない主人と。
    夢を叶えるための勉強も努力も、ほとんどしないことについても。

    私のなにがいけなかったのかな …… 。
    いろんな夢を持ちすぎたから？
    持病があったから？
    子供が産めなかったから？

    子供がいたら、主人はちゃんと頑張っていたのかな …… 。夢を持ちながらも、アルバイトでも何でも掛け持ちしてくれたのかな？

    でもね、子供がいないから、貴方が夢だけを追いかけて来られたのも事実なんだよ。

    ごめんね。
    私はちょっと、疲れちゃったよ。

    借金をして生活を続けることも、未来が全く見えないことにも。

┄┄┄┄ だから、飛ぶの。この綺麗なネオンの中に。きっとまだ、夢がいっぱい詰まってる、この街の中に …… 。

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