見出し画像

涙 嫌気と逃亡壁 貴方だけ 甘いもの静か 駄目なところ 探し物 貴方のもの  


 貴方は何時も私しの横顔を見ている
 昔から運転をしていも
 …そんなに見たら穴が空いちゃうわよ
 と、言うのにそれでも見ていた

 私しが書き物を再開した日も
 …書く横顔が好きと微笑っていた

 そして昨晩は知らない間に貴方は起きていて
 隣のベッドルームから私しの横顔を見ていたそうなのです
 出掛けようと覇者いでいたのに
 パソコンをカタカタと鳴らす私しを見て
 そっと見ていただけ

 朝が明けると実は見ていたよなんて
 そんな意地悪を言う
 辛くて悲しかった事も知っていた筈なのに
 イジらしい人

 昼になってもとても出掛ける気分じゃないと言うと
 勝手に私しのパソコンを弄りだす
 カタカタと私しの代わりに

 私しの息が上がると
 …辛いよね……の一言で閉じてくれた

 …沢山泣いて良いよ
 そう言って手を広げ微笑むものだから
 何をどうしても泣き切れなかった私しが滲み出てしまう

 甘えたい……
 そう言った私しにくれたのは
 幾らでも泣いて良い時間と安らぎでした

 今は……貴方の為だけに書いて良い?
 貴方の好きな横顔でいたいのです

 もう戦場で書くのは疲れたのよ
 ジャンヌダルクには何時迄も成れないのよ

 ただ普通の貴方しか見えない
 一人の女を書きたいの

 今は静かに眠らせて
 この涙を受け止められる唯一の腕の中で

嫌気と逃亡壁

出来る事なら
貴方の為だけを想える毎日と
貴方の事だけを書ける幸せと

貴方しかいない日々でも
私しはきっと満足出来るのよ

けれど
それでは貴方は
きっと満足してくれない

もっと自由になりなさいと
また放し飼いにするのだわ

そんな自由なら要らないの
私しはそんな我儘を言って

一緒に歩けない自由なんて
自由じゃない

貴方の手を引っ張り
無邪気に笑ってみせるのよ

貴方の困った顔…
その顔…
本当は大好きなの

ねえ、逃げて私しと何処までも
貴方だけと居られる場所で
貴方だけを書いていられるように

どうか…今の私しを
貴方だけは可哀想と
この泪ごと
包み離さないでいて下さいませ

貴方からは
私し……逃げないと誓っているのよ

だから言って下さる?
100の羨望の言葉より
貴方の一言が欲しいの

読みたいって……言って。

貴方は言ったわ
私しの書く横顔が好きだって

私しは想う
貴方が読む その細めて文字を追う
流れる様な目付きが好きで
手も灘らかで 優しい……から好き

だから、不安を掻き消す程何度も言って

君の物語が読みたいって

他の物語なんて今は読まないで

私しだけを見ていて欲しいのよ

そして言って
私しの何が違うのか
貴方だけしか……分からないのよ

私しを読めるのは 貴方だけなの

だから
読みたいと言って

 貴方だけ

「怖かったの……。ねぇ、怖かったのです。」
 震えながら貴方の顔も見れずに
 子供の様にしがみ付く
 けれど、
「泣けないの。泣けないのよ。
 ……何時もはあんなに嬉し泣きや
 感動泣きばかりしてしまうのに。」

 こんな日に限って涙は意地悪なのです。

 そっと髪を撫でる貴方の手
 静かに待ってくれるこの時間

 何も大した事なんか 貴方はしていないの
 けれど、涙が貴方の服に滲んで行く

「怖かったね。頑張ったね。」
 濡れたシャツも気にせず、抱きしめてくれたから
 私しは少し平静でいられる

「……大丈夫。……君が書けなくなっても、其れでも僕は変わりません。」
「君の真面目な横顔が好きな事も変わりませんけど。」
 貴方はそう言って微笑み、
 顔を見せる様にと口付けで少しずつ、上を向けさせる
「情けない顔だわ……。」
 私しは、視線を下げ言うの。
「か弱い可愛い天使じゃないか。」
 そう言って貴方は茶化すの。
「天使?……そんな歳じゃないわよ。」
 と、私しは少し笑った。冗談にも程があるって。

「見ていたよ。さっきまで。天使が心地良さそうに眠っていた。変わらない寝顔。
 起きて来ても、目がとろんとしたまま…天使のまんま。」
「何にも出ないわよっ。悪魔の間違えでしょう?」
 私しはツンとして、珈琲を淹れる

 嘘でも嬉しいのよ
 嘘でも少し気が楽になったの
 貴方だけよ
 何の気も使わず
「天使」の一言で
 私しを勇気付ける様な人
 狡いわ……
 何の相談もせずに
 其れで良いと思わせてしまうなんてね

甘いもの

 チョコレートは溶けて指に付くから要らないわ
 クッキーは齧ると
 お気に入りのテーブルクロスを汚すから要らないわ
 甘い言葉だけで良いの
 詩人じみた堅物の言葉じゃ嫌よ
 素直に言ってくれる言葉が欲しいの

 私しの書く物語には存在しない
 貴方だけの言葉が欲しいの
 だから私し今日は拗ねます
 貴方が言って下さるまで
 書いたりなんてしませんわ

 だってどんな愛を書こうとも
 貴方がくれる言葉に勝るものなど無いのですから

 ちゃんと姿勢良く座って待っています
 貴方が起きたらただ見上げます
 お早うと口付けが降れば
 微笑み返すでしょう

 其れからもじっと貴方だけを見て
 貴方が私を甘やかす言葉を待とうと思います

 もし
 貴方が私しの瞳や笑顔に負けて
 私しの欲しい物を与えてくれたのなら
 私しは喜んで貴方と買い物に行くわ
 とびきり甘いチョコレートと
 ザクザクの甘いクッキーを

 溶け合うまで頂きましょう
 溢れる程愛で満たしましょう

 早く早くと心、急く
 甘い甘い貴方へ


静か

 今日も静かですわね
 貴方がすやすや眠って
 其れを時々見るだけで
 頑張れる気がするわ

 貴方、何時か同じ様な事……言いましたでしょう?
 覚えていらっしゃるかしらん?
 書き疲れて 倒れ込む様に眠ってしまいましたら
 翌朝、貴方が起こして下さらないから
 予定がぐちゃぐちゃになってしまったと
 私し、少し怒ってしまいましたのよ

 なのに貴方ったら……
 寝顔を見ていたら心地良さそうで
 可哀想に思えて起こせなかった
 なんて仰るから
 私し怒る気もすぅーと失せてしまいましたの

 貴方は何時だって
 目覚ましにはなってくれないの
 目を開けたら横に座っていて
 目が合った時は
 本当に驚きましたのよ
 何時から寝顔を見ていたのか聞いて
 呆れてしまいましたわ

 それでもね
 それでもなのですよ

 貴方が何もしないで静かな理由が
 私しは好きなのです

 好きな事をさせていたいからと
 心配し乍らも
 只管見守って下さるでしょう?

 目覚めて目が合った時
 今思えば少しだけ心配そうな目をしていらした

 貴方は何もしないし
 貴方は何も言わない事もあるけれど
 見守って下さる温かさに
 私しは毎日甘え
 ギリギリまで子供のやうに好きな事をする

 ねぇ……今夜も静かですわね
 貴方の優しい寝息だけが聞こえ
 安心してこれを書いているのです
 その寝息さえ愛しくて……
 貴方が見詰めるのと同じ様に
 私しは聞いて安堵するのですよ

 余りにも子守唄のやうで
 私もウトウトとしてきましたわ

 貴方の横に参りましょう
 貴方はどんな時間でさえ
 私しが隣に行くと目を覚まして微笑むから
 今夜は貴方の為だけに
 ほんの少し早い

「おやすみなさい」

 静かな夜ねと
 きっと声を掛けますわ
 だから
 安心してお休みになって下さいましね

駄目なところ

「ねぇ……私しの何処がそんなに気に入ったの?」
 全く昔と変わらず愛して下さる貴方に
 聞きましたの

 ……酔って私しが酔いの任せに話した
 恋愛話しが始めだったらしいのです

 もっと強くなって……迎えに行かなくてはいけない人がいる

 その言葉だと。
 もう過ぎた恋愛話しを聞いて
 貴方はそんな前の人をこんなに想える人はいない
 と、御思いになったそうで……
 ……普通は其れを聞いたら諦めますわ
 なのに貴方は違った

 ……この人は幸せにならなきゃいけない

 そんな風に御思いになったそうなのです
 だから私し呆れて聞きました

 では貴方がその幸せにしてやるとでも御思いになったの?
 そうだとしたら、貴方は私しが思っているよりも
 あの時、自信過剰でいらしたのね?

 そんな若い自信過剰さに負け
 今があるとするならばほんの少しがっかりだわ
 其処ら辺にありふれた
 華の無いお話しに
 華もない青春を語るなんて
 私しは少し不機嫌になっておりました
 顔や態度に出したつもりはありませんの

 「……ただ、放っておけなかったから」

 そんな言葉も
 私しは聞いていても興味を示さずにおりました

 そうしましたら昔の靴の話を貴方はするのです
 合わない靴のお話し

 私しがお友達を沢山連れ歩く表参道
 私しは一番後ろを歩く
 「良いよ、先に行って。行き先は分かるのだから」
 珍しく肩で風を切って歩かなかった
 実は酷い靴擦れを起こしていたのよ
 気付いたのは貴方だけ
 私しの強がりを知っていたのも貴方だけ
 お友達にのんびり話しているからと貴方は言って
 先に行かせて肩を貸してくれた
 片足を引き摺っていたでしょう……と

 強くならなきゃ……そんな私しが
 何度お断りしても
 君は強がりなのに
 そんなに引き摺るのは只事じゃない!って
 分かってしまって……
 変わった人だと思って貴方の肩を借りた
 何年振りの甘えだったでしょうか
 本当は靴の中は血塗れで歩いていたの
 貴方の肩を借りると
 どんなに痛くても……お友達が先に行った道のりが
 遥か遠くに思えても
 辿り着ける
 大丈夫だと何故か思えました

 帰りも貴方は遠回りして
 途中まで同じ電車に乗り
 ブレーキの度に顔を顰めて
 私しが蹌踉ける度に引き上げて下さった
 履き慣れない靴は気を付けてねと
 心配そうに言うと、その日は去って行った

 家に着いた頃
 大丈夫だった?と、メールが一通

 特別に其れがきっかけではないわ
 けれど貴方は私しの強がりの度が過ぎると
 必ず横にいて一人にしない
 今も決して変わらない

 貴方の所為で私し
 強がりが出来なくなりましたの
 だから愛していた方をお迎えにいけません
 ですから責任取って下さい
 全部全部……貴方が甘やかすから
 私しの未来設計図が台無しになりました

 ……なのに……私し……
 気付いてくれて……嬉しかったのです

 あの靴擦れの日の事を
 貴方も鮮明に覚えていらして
 こう仰るの
「強がる君を暫く見ていたら、気付いてしまいました。……本当は甘えたがりの、お茶目さんだって。」
「長く一緒にいたら、そんな事……良く言われますわ!」
 なんて……恥ずかしくてそう言ったけれど
 どうせ分かってしまうのよ

 ……ほらね……
 ……やっぱり微笑んでいらっしゃる
 ……だからずっと私しは幸せなのです
 ねぇ、貴方なら少しは自信過剰になっても許すわ
 確かに
 私しを幸せに出来たのは
 貴方なのですから

 駄目なところも好きになってくれる
 そんな貴方だから
 私しは素直に甘えられるの

探し物

 時々貴方は私しを探すの
 ……こんなに近くにいるのよ?
 私しに伸ばしたまま
 眠ってしまった貴方の手を取るの

 必ず貴方は覚えていようがいまいが
 薄ら寝惚けて少しお喋りをする

 ……明日は何処へ行きましょうか
 ……お花が欲しいわ
 ……休憩は何処にする
 ……何時もの喫茶店で構わないわよ
 他愛無い話し程
 貴方は安心してまた眠るのだと
 分かっているのよ

 数日後……私しが魘されて起きた時の事
 同じ様に手を取る貴方がいて
 安心して眠りましたの

 貴方を探して……瞼も開かないまま、手だけが彷徨っていた気がするのよ
 何時もいる筈の隣に貴方がいなくて


貴方のもの

 私し、自分の無い女は大嫌いですの
 惚れたが最後で
 自分の色香さえ男に合わせて
 その実捨てられ
 空っぽの有り様なのですから

 空っぽになったお友達が言いますの
「ねぇ?私、捨てられる程、何にも魅力ないかしらん?」
 項垂れて
 泣き腫らして
 確かにみっともない

「今はその男が持って行ったからでしょう?
 折角空っぽになったのだから、何にでもなれるわよ」
 私しはそう言って
 また小さな事をとワインを呑むだけ

 本当は一つ嘘を付いているの
 クラッカーの層のミルフィーユに

 私しはある月の綺麗な日
 貴方のものになっても構わないと思ったの
 貴方色に染まるだとか
 そんな可愛いものでは無いわ

 貴方の優しさを
 この熱くなった身体中に覚えさせても良いものか
 不安になったのよ

「貴方は今、何を考えているの?」
 そう聞いたら
「どうしたら君が安心してくれるかなって」
 なんてキョトンとした顔で言うものですから
 二人で笑ってしまいましたわ

 飢えた獸でも無く
 変わらない優しい貴方

 私しは何色にも成りません
 けれど
 その優しさに満たされて
 その優しさを受け入れた時

 貴方の花になりました

 貴方そっくりの
 優しく
 柔らかな
 花で在りたい

 私しは私しの色のまま
 貴方は其れが好きなのよ
 今夜どんな形の花にするかだけ
 貴方は考えていれば良いのよ




お賽銭箱と言う名の実は骸骨の手が出てくるびっくり箱。 著者の執筆の酒代か当てになる。若しくは珈琲代。 なんてなぁ〜要らないよ。大事なお金なんだ。自分の為に投資しなね。 今を良くする為、未来を良くする為に…てな。 如何してもなら、薔薇買って写メって皆で癒されるかな。