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目指すのは高い「関係の質」

おうちの診療所では、診療(結果)の質を高めるためにも「関係の質を高める」ことを大事にしています。その理由と、これまでに実施してきた関係の質を高めるための取り組みについてお伝えします。


 「関係の質」とは、MIT組織学習センター共同創始者のダニエル・キム氏によって提唱された「成功の循環」モデル(図1)の中に出てくる言葉です。このモデルによれば、周囲との関わり方やコミュニケーションといった「関係の質」が高くなると、自然と考え方も前向きになり、目的意識が高まって「思考の質」が向上。それが人々の積極性や主体性といった「行動の質」を高め、成果が生まれて「結果の質」向上にもつながります。すると、関係の質はますます高くなる、といった循環が生まれるとしています。反対に、関係の質が低下していると、ギスギスして他責的になり、受け身や指示待ちの人が増えて思考や行動の質が低下し、結果の質も低下する悪循環に陥るとしています。おうちの診療所では、この考え方に共感し、「関係の質」を高めるべく取り組んでいます。

行動指針を考えよう

 取り組みの一つが、半年に一度、組織のビジョンや価値観について全員で話す時間を取る「関係の質DAY」です。普段は緊急度の高い業務が優先ですが、この日ばかりはコミュニケーションが優先。ワークショップ形式で関係づくりを進めます。企画をしてくれるのは、当院有志からなる「関係の質」チームです。2021年秋は、おうちの診療所らしい行動指針を考えるワークショップを行いました。

 大事にしたのは、「決める」ことよりも、スタッフの意見や想いがたくさん出ること。それぞれが思う「おうちの診療所の良いところ」「課題」「より良くしたいところ」などをたくさん出して意見交換し、個人ワークやペアワークを取り入れて、自分たちの「will(したい)」「can(できる)」「must(しなければならない)」を考えて、組織の行動指針に落とし込みました(表1)。今後も定期的にワークショップを繰り返し、ブラッシュアップしていく予定です。

心理的安全性を感じよう

 2022年春のワークショップは、行動指針にも含まれている「心理的安全性」がテーマ。関係の質を高めるためにも、重視しているポイントです。チームのために行動したときに罰を受ける不安やリスクがあれば、心理的安全性が高い職場とは言えません。誰もが安心して意見を出したり行動でき、分からないことがあれば臆せず質問したり助けを求めることができて、生産的でよい仕事をすることに力を注げる職場が「心理的安全性が高い」と言えます。おうちの診療所では、関係の質を高めるために心理的安全性を担保することを常に意識して、全員が自分の居場所だと思える職場、お互いが信頼し合える職場を目指してきました。半年に一度心理的安全性を測定する7つの質問をし、その推移を確認しています。

 この日は、心理的安全性を感じられるワークを通じて、関係性の構築と行動指針を身体的に理解することを目標としました。ワークは、心理的安全性をつくる「4つの因子」(表2)から、「話しやすさ」「助け合い」「挑戦」の3因子に関するものを行いました。「話しやすさ」のワークでは、「話しやすい」の対局にある「話しにくい」瞬間やエピソードをみんなで出し合い、話にくいと感じるわけを共有。「話しにくさ」を取り除くために一人ひとりができる行動を考えました。「助け合い」のワークでは、相手にもたれかかったり、目隠しした状態で移動したりという身体的な動作を通じて、「助ける」「助けられる」「助けて」「頼る」「頼られる」といった感覚を得ました。

 2023年の「関係の質DAY」は4月と10月に実施。春は、組織の拡大・人員の増加に伴ったコミュニケーション不足を課題に「組織内で話されるべきなのに話されていないこと」をテーマとし、表に出てきにくい声に耳を傾ける対話型ワークショップを実施。秋は、未来を考える時間にすべく、組織の目指す方向性を揃えていく前準備という建付けで、職員一人ひとりが持つ理想の組織・チームイメージの可視化、自分の役割を改めて考えるデザイン思考系ワークショップを実施しました。

 関係の質DAYの締めくくりは、みんなで懇親会です。バーベキューや職人さんを呼んでの寿司パーティーなど、基本は座席自由の立食形式で、普段はなかなか話せない人とも話してみる機会をつくっています。

思考行動特性を知り相互理解を深める

 コミュニケーションの質を高めるために取り入れているものとしては他に、入職した方に受験いただくFFSという診断があります。これは、思考行動特性を5因子とストレス値で定量化するものです(表3)。単純に相性が良い、悪いと捉えるのではなく、「この人はこういう特性で、こう考えるので、こういう言い方にしよう」など、フラットに相互理解を深めてコミュニケーションの取り方そのものを考えるきっかけとしています。

 また、コミュニケーションの量自体を増やすための取り組みも日常的に行っています。毎日、始業時と終業時には全拠点をオンラインでつないだカンファレンスを行い、情報を共有。毎週月曜日は定期の診療予定を入れず、業務改善委員会や全体会議を開催して、コミュニケーションの活性化を図っています。別の診療所に勤務するスタッフ同士はコミュニケーションを取る機会が減ってしまうため、月2回は中目黒のサテライトに全員集合する日を設けているのも工夫の1つです。

縦と横のつながりを作る

 月に2回は、スタッフ同士が2人1組になった「ピア」と、60分間の対話(ピアコーチング)を3カ月間継続する取り組みもしています。自らのキャリアについてピアの力を借りて振り返ったり、相互理解を深める機会になっています。ピアコーチングが横のつながり作りを担い、年2回のマネジメント層との評価面談(面談は希望があれば適宜実施)が縦のつながり作りとして機能しています。面談の希望を伝えにくい場合も、3カ月に1回行っている「コンディションシート」に気になっていることを書いたり、面談希望にチェックをすることで面談が実施されるようになっています。



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