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読書日記|注文の多い料理小説集

 料理にまつわるアンソロジー小説集を拝読しました。知らない作家さんも多くいらっしゃったので、新しい作家さんも知れて得した気分。本書の中では、伊吹有喜さんのお話がとても印象的でした。


 料理にまつわる温まる話という意味では、伊吹さんのパートが一番定番のストーリー運び。ほかの作家さんは料理を絡ませながらも、男と女の駆け引きなど、ほかのところに主眼を置いた作品だったりします。興味深い点は個々人の作家さんの作風が色濃く出ていた事でした。


 柚木麻子さんのお話は、都会の片隅では毎晩のように起こっているんだろうなと感じましたし、井上荒野さんのお話は男女の心の機微が深堀りされて読み応えありました。男女の神経戦にハラハラしつつ、結末が気になる。落ちのつけ方に作家さんのカラーが表れていて、個々の作風も知れますよね。こういう雰囲気の小説を書かれる方なら自分と相性がいいのではないか。マッチングを図るには、アンソロジー小説はピッタリです。


 すっきりハッピーエンドで終わらない作品が多いというのも、大人の料理小説の醍醐味。恋愛や家族愛様々な関係性と料理。毎日食べ続ける営みは、多くのものと日々干渉しあっているのかもしれません。


 料理というものや食事に対し、今までとは見方が変わってしまった。食事ってドラマチックなものでもあるのだと痛感しました。美味しいご飯を食べて、日々満たされていた私には、知りえなかった世界。料理や食事とは、ダークな感情が渦巻く場でもあるのですね。


 大人の色恋や欲も絡めた小説の舞台に、料理はもってこいなのでした。もしこれから小説書く機会があったら、そういう設定でもストーリーを書いてみたいです。


 

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