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ガスティング〜巧みな心理的虐待〜

ガスティング。あまり聞き慣れない言葉かもしれませんね。
「ガスティング」とは、巧みな心理的操作を行うことで、相手が自分の認識が間違っているのではないかと疑うように仕向けていく、心理的虐待の一つだといわれています。

マニピュレーター に似ている

調べていくと、自分の支配下においてコントロールしようとするところは、マニピュレーターによく似ています。
(マニピュレーターについてはこちらをご覧ください)

マニピュレーターのように、集団の中で自分の価値を高め、利益を享受しようとする関係操作よりも、ガスティングの方がもっと巧妙で、犯罪に近い気味の悪い関係操作だと感じます。
事実、反社会性パーソナリティ障害の人がよく使う手法なんだそうです。
反社会性パーソナリティについてはこちらも参考にしてみてください。


反社会性パーソナリティとは、絶えず社会的道徳規範から逸脱し、法を破り、他人を食いものとするが、概して表面上は魅力的で、巧みな嘘つきであり、犯罪に関わるようなことはしない。従って、犠牲者になっている人は、自分の認識能力を疑ってしまうことがある。

wiki-pedia

言葉の由来

『ガスティング』という名前は、1944年の映画「ガス燈」に由来するということでしたので、この映画を観てみました。
かなり古い映画ですが、なかなか面白かったです。

アカデミー主演女優賞を受賞したイングリット・バーグマンが心理的に追い詰められていく演技が見事。(興味のある方は、Amazonプライムですぐに観れますよ)
内容は、簡単にいうとイングリット・バーグマン演じるポーラという女性は、殺された叔母から遺産を継いだ姪にあたります。そして、音楽家のグレゴリーと結婚するのですが、彼女の周囲で奇妙なことが次々と起こっていくのです。
奇妙な出来事は財宝に目が眩んだ夫が仕組んだ罠で、ポーラはまんまとその罠にはまり、神経衰弱に陥っていくというストーリー。
ポーラは何も知らず夫に助けを求めるのですが、夫は知らんふり。
それどころか「君は精神がおかしくなっている」「また忘れたの?」「覚えてないの?」と言葉や態度で彼女を追い詰めていき、彼女は自分の記憶すら疑うようになる。
自分がおかしいんだと、夫が誘導するストーリーにまんまとはまっていくのです。
…観ていてなんとも気味が悪い感じました。

ガスティングの目的

では、ガスティングの目的はなんでしょう。どうもいくつかあるようです。
1つは、映画のように相手を精神的に追い詰めて、破滅させることを目的とする場合。
2つめは、言葉と行動で、相手が自分を見失わせるように仕向けていき、心理的にコントロール下に置く場合(相手が自分から離れないように、そして、服従させることも含みます)。
3つめは、その結果、相手が犯罪を犯すように仕向けていくこともあります。(そういえば、ママ友にガスティングされ、やがてわが子を餓死させるという事件がありましたね)
その他にも、いじめのように変な噂を広めて、職場や仲間の中で孤立させるように仕向けていくこともあります。
どれもベースには、反社会性パーソナリティ障害をにおわせていると感じます。

親子関係や夫婦関係の中にも潜んでいる

ガスティングは、上下関係の明確な関係の中で、被害者が「自分が悪いんだ」と思い込まされていく関係操作になりますから、身近なところでもみられます。
例えば、親子関係や夫婦関係。
親子関係であれば、子どもが「自分は悪い子なんだ」と思い込まされていくし、夫婦関係であれば権力を持つ人に従ううちに「自分が怒らせてしまったのが悪いんだ」と思い込んでいきます。
もう少し詳しく見ていきましょう。

【親子関係の場合】
親のタイプに特徴があるようです。
親が、自分の間違いや非を絶対に認めないというタイプだと、何があろうとも「悪いのはお前だ」という流れが作られます。
また、子どもが嫌な思いをしているのは、子ども自身のせいだと思い込まされるのもそうです。
これは、虐待をする親がよく使う心理操作といわれています。
子どもからすれば、自分の考えを言ったところで、受け入れられることもないし、問題を解決することもないんだ、という経験を積み上げていくので、すっきりしないモヤモヤや怒りを抱え続けることになります。

【夫婦関係の場合】
夫婦のどちらかが、自己愛の強いパートナーという関係で起こりやすくなります。主張の強いパートナーの一方的な言い分を聞いているうちに「自分がいけないんだ」と思い込まされていく、というパターンが多いです。
これはいわゆる精神的DV。
わかりやすいので、自己愛性パーソナリティ障害を例にあげてみましょう。
自己愛性バーソナリティ障害の人は、自分はすごい!という自己愛が旺盛で、他人への共感はほとんどありません。
あるように見えても、ほとんどが見せかけです。
それでいて承認欲求が強く、ほめられることを当然のように思っていますが、口答えでもしようものなら大変なことになります。
穏やかに話すことを求めると「怒らせるのが悪い」と責められ、言葉巧みに論点をすり替えられ、劣等感を抱くような指摘をし、次第に自信を失い、すっかり「自分がいけなだ」という思い込みを刷り込まれていきます。
自己愛性パーソナリティについてはこちらを参考にしてみてください。

距離をとる

言葉巧みに仕掛けていく、厄介な関係性の罠になりますので、指摘して暴くというような方法での解決は、あまり期待できません。
ガスティングに気づいたら、距離を取る。
心理的に距離を取ることが大切です。
でも実際は、どうしても関係を精算できないという場合の方が多いですので、その場合は、物理的に距離を取る。
どちらも自力では難しいようであれば、第三者に相談をする。
問題をオープンにしていく。
これが大切です。
自分が加害者ではないかと不安になる場合は、むしろ問題の解決は早いです。
風通しの良い関係にしていくために、第三者に相談をする、自分のことや関係性の作り方を点検できるように、知識得るために学んでいくことです。


こちらに記事をまとめておきましたので、興味のある方はぜひ知識を増やしてくださいね。


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