どすん、どすん。

20代前半の頃流行ってたポストカードがあった。色々な風景写真や人物と共にその写真にあったような格言的な言葉が書いてあって恋愛系の格言もたくさんあって、150円くらいで売っていた。

私は流行りに乗りたい。流行りに踊らされたいタイプなので例にもれずその格言ポストカードに、見事にハマり1枚150円のポストカードを10枚以上も買い2000円ほどだして買ったその格言を眺めて共感し友人の誕生日には想い出の写真とそのポストカードをあますとこなく貼り付けたアルバムをつくって渡していた。受けとった友人も一緒に祝った友人もセンスがいいねと褒めてくれた。その格言ポストカードに

10数年ぶりに再会した。

近所のスーパーの文房具売り場にひっそりと奴はいた。

結婚した今恋愛的格言に心ときめく事はなくなったにせよ、当時このポストカード売り場に何十分も立ちつくしどれがいいかを悩んだり、今○○に悩んでる友人にはこのポストカードがいい!絶対喜ぶな(ニヤニヤ)とか当時付きあっていた彼氏にはこのポストカードで手紙書こう(〃〃)とか10数枚選んでた自分の気持ちがブワッとフラッシュバックした。

当時付きあってた彼は付きあってすぐに仕事関係で隣の県に引っ越すことになりプチ遠距離になった。久々に会いにいってみると仕事が忙しすぎて歩いてすぐの弁当屋の存在まで知らない彼に同情した私はまだガラケー時代真っ只中、今のようにグーグルマップが普及していなかった時代にボールペンと手帳を持ち4時間歩いて彼の自宅周辺マップを手書きで完成させた。○○皮膚科TEL09✕✕−✕✕✕−56✕とかスーパー○○火曜日がお得!!など詳細に書いた周辺マップ。


彼、全然響いてなかった。むしろちょっとひいてた。

彼への幸せな未来を信じてやまない私が選んだその格言ポストカードは結局別れのメッセージを書き残すのにちょうどいい余白がある紙として利用した。付きあってても別れを決意しても私は恋愛に酔っていた。

なんとなく愛されてないことも気づいてた。それでも少しでも会いたかった私は次の日仕事の中電車で1時間半かけて彼の家に行き

始発の電車で帰れば間に合う!と翌朝4時半にアラームをかけ起きると季節外れの雪がふってた。車で駅まで10分の距離を彼は送ってくれなかった。

いや雪!ふっとるけど!良心不在か!

とも言えずに

まさかの雪道に私はサンダルで駅まで歩いた。周辺マップ作ってよかった。周辺マップめちゃくちゃ頭に入っとる。周辺マップがうかばれた所で駅についた頃には足がキンキンに冷えていた。始発の電車は人もまばらで私は進行方向にむかって入口側2人掛けの席に1人で座りつま先の冷えをハンカチで押さえ感覚がなくなってることに気づき正座して尻の温もりでつま先をあたためることにした。そして2駅すぎた所でまさかの人、人、人、人!いきなりの通勤ラッシュ!

私の2人掛け席にもちょっと太めのサラリーマンがフンヌッと腰をおとし

わたしは正座の足を崩せないまま座高が誰よりもたかい状態で1時間半弱電車に揺られた。なんか試験監督の雰囲気で駅に到着した頃には冷えではなく痺れで足の感覚がなくなっていた。


何この思い出。


別れを決意した日

彼が仕事に行く準備をしながら洗面所にいて

私はテレビを見ていて机の上の彼の携帯の着信画面が光って

♡まどか♡

の文字が光ってる事を私は彼に問だたさなかった。未来のないとわかってる人に問いただしても謝られても開き直られても別にどうでもよかった。仕事に行った後部屋を片付け綺麗にしたあとに格言ポストカードにさよならの手紙を書く自分に早く酔いたかった。世代じゃないけど「愛することに疲れたみたい嫌いになったわけじゃなははあい」って松山千春を鼻にかけてマイクを口端において歌いたかった。

そんな事を思い出して立ち止まった先のその格言ポストカードには


幾度も値下げのシールが貼られ最終的に50円になった上から〈表示価格からさらに半額!!〉が貼られてた。

25円になっとる。10枚買っても250円。

私のこの無駄に長文書いてもうた思い出。25円になった気分。1文字いくらやねん。

でも懐かしい。買っちゃおうかな。久しぶりにこれで友人らに手紙書いたら懐かしがってくれるんやないか。25円やし。安いし、、

「かぁちゃんあっちいこうよぉう」

と私の手をひっぱる3歳の息子が1歳の妹の手をひきながら令和に引き戻してくれた。

『ごめん!ごめん!じゃあ待たせちゃったから今からお菓子買いに行こう!!』

財布から取り出した25円。

『なんとうまい棒がふたつも買えます!』

「やったあー!!!」

『ちゃんと妹ちゃんと半分するんよ』

「はぁい!早く行こ!かあちゃん!」

25円で買える幸せがあった。どんな綺麗な風景よりどんな素晴らしい言葉より

心満たされる存在に目を細め

幸せを噛み締めながら追いかけ決意した。






痩せよう。









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