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◎ドキュメンテーション事例 (5)◎ふじようちえん(東京都立川市)

● 編集部厳選☆ドキュメンテーションご紹介!

今回ご紹介するのは、東京都立川市 ふじようちえんさんの事例です。

ふじようちえんでは、これまでホームページ上で毎週公開している「子どもニュース」のほか、月1回発行する紙のクラスだより、YouTube動画などで園の様子を保護者に向けて発信してきました。今年度からはクラスだよりやYouTube動画を廃止し、おうちえんを活用したドキュメンテーションに取り組んでいます。

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● ドキュメンテーション作成のポイント

① 子どもたちの興味・関心、心の動きに着目する!

子どもたちが何かに夢中になっている様子新しい発見にワクワクしている様子、お友達と素敵なかかわりをしている様子がとてもよく伝わるドキュメンテーションです。

「何ができるようになったのか」という結果ではなく、遊びや学びのプロセスを大切にし、先生自身の気持ちや子どもの心の読み取りを交えて記録しています。

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ふとした瞬間をとらえたドキュメンテーションですが、何をきっかけに粘土を長くしようと思ったのか、この後さらにどのような遊びや学びが生まれたのか、前後のエピソードにも興味がそそられます。先生同士、また先生と保護者の対話のきっかけを作ってくれるような素敵なドキュメンテーションですね。

ポイント② 先生が伝えたい場面をどんどん写真に撮って伝える!

ふじようちえんでは日々、とてもたくさんのドキュメンテーションが作られています。写真数枚と短い文章で構成されているシンプルなものもたくさんあります。時間をかけて立派なドキュメンテーションをひとつ作成するよりも、先生が心が動いた瞬間を、こまめに記録して伝えることを重視していることがよくわかります。

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情報を発信しようとすると「状況がわかるように何枚も写真を組み込まなくては!」、「文章で詳しく説明しなくては!」と思うかもしれません。しかし写真1枚でもたった10秒の動画でも、子どもたちの心の動きは思いのほかよく伝わります。

ふじようちえんさんのドキュメンテーションを見ていると、小さなエピソードがたくさん集まることで、先生が大切にしていること・子どもたちの心の育ち・遊びや学びのストーリーが自然と浮かび上がってくることを感じます。あまり構えずに、伝えたい場面をどんどん伝えていくことが大切ではないでしょうか。

● インタビュー:ドキュメンテーションへの取り組みについて

ドキュメンテーションへの取り組みについて、園長の加藤先生と主任の徳野先生にお話を伺いました。

・おうちえんドキュメンテーションに取り組むことになった経緯を教えてください。

(加藤園長)1996年に初代ソニーサイバーショットを購入したことをきっかけに、子どもたちの姿を撮影して印刷し、簡単なコメントをつけて保護者に配布することを始めました。振り返るとこれがドキュメンテーション活動につながる原点だったのかな、と思います。そこから約25年間、今でも週1回の「子どもニュース」を欠かさずに作り続けています。

時代を経て先生一人ひとりがデジカメを持つようになり、さらにはiPodでの撮影に変わって、今では園全体で毎週5000枚ほどの写真を撮影しています。ただ、日々これだけの写真を撮影しているにも関わらず、これまでは写真についてアウトプットする場がほとんどありませんでした。

ストーリーのある保育をつくり、子どもたちの成長を実感するためには、撮りっぱなしで終わるのではなく、振り返りが必要です。そんなときにおうちえんドキュメンテーションのことを知り、これを使えば写真を有効活用できるのではないかと思いました。

簡単な活動報告からスタートして、徐々に子どもの心の動きやお友達との関係性などについて記録できるようになっていければいいなと思い、まずは挑戦することを決めました。

・ドキュメンテーション作成にあたって、大切にしていることはどんなことですか。

(徳野先生)以前は月1回のクラスだより・幼稚園ブログ・限定公開のYouTubeなど、さまざまなかたちで子どもたちの様子を伝えてきましたが、クラス全体の活動を伝えることがメインになっており、一人ひとりの育ちや興味関心などを詳しく伝えることができていませんでした。

ドキュメンテーションを始めるにあたって職員で方針を話し合ったのですが、おうちえんではドキュメンテーションをとにかく手軽に作成・配信できるので、投稿回数を増やして先生が伝えたい場面をどんどん伝えていこう、クラスの活動報告ではなく、個人の学びや育ちに注目して記録しようということを決めました。

制作頻度は先生に任せていますが、だいたい週2〜4回の頻度でドキュメンテーションを作成しています。保護者には事前に「ドキュメンテーションは活動報告ではなく育ちの記録なので、お子さんが毎回写っているとは限らない」ということを伝え、ご理解いただくようにしました。

・先生は、どのくらいの時間をかけてドキュメンテーションを作成していますか?

(徳野先生)大体10分くらいだと思います。紙のクラスだよりを作っていたときはレイアウトなどに時間がかかっていましたし、YouTube動画も編集したり、音楽をつけたりなどの負担がありました。おうちえんドキュメンテーションは、先生が頑張らなくても素敵なドキュメンテーションが作れるように設計されているのが素晴らしいと思います。

・ドキュメンテーションを始めて、保育に変化はありましたか?

(徳野先生)子どもたちを見つめる視点が変わり、写真の撮り方が変わりました。これまでの写真は、ほとんどが結果や成果を表すようなものでしたが、ドキュメンテーションに取り組むようになってからは、子どもの遊びをじっくりと見つめ、子どもたちの心の動きに注目しながら写真を撮るようになったと思います。

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ドキュメンテーションを作成することで、自分の保育を振り返る機会も増えました。写真に特定の子ばかりが写っていたら、それはしっかりと見ることができていない子がほかにいるということです。翌日はその子にスポットライトをあてて見ていこう、ということができるようになりました。

先生同士の会話にも変化が生まれています。今までは「うちのクラスではこれができていない」など、マイナスな言葉を聞くことも少なくありませんでしたが、今では「この子がこんなことに夢中になっていた」、「こんなことができるようになった」などポジティブな話題がとても増えています。

先生同士がお互いのドキュメンテーションを見ながら話をすることも多く、隣のクラスの活動を見て「私もやってみようかな!」と先生自身が新しいことに挑戦する様子も多く見られるようになりました。

ドキュメンテーションに取り組むことで、「子どもの日常の姿からこれだけたくさんのことを読み取ることができるのか!」ということを改めて学んでいます。日々の保育にもつながりが生まれ始め、子どもたちが写真を見て「明日はこれをやってみよう!」と発言する様子もたくさん見られるようになっています。

幼虫や貝殻など、子どもたちが夢中になっているものを保護者が持ってきてくれることも増えました。ドキュメンテーションは間違いなく保育の質の向上につながっていると実感しています。

====================================「先生がお互いのドキュメンテーションを見ながら、対等に感想を伝え合ったり保育について話し合ったりすることで、先生自身の自己肯定感も高まっている」と加藤園長。コミュニケーションが増え、ポジティブな空気が生まれることで先生の安心感や意欲が高まり、離職率低下にもつながるのではないか、とお話されていました。

保育の見える化が保育の質の向上につながる、とても素敵な事例だと感じました。

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