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<公開保育レポート>7/26 中央ヴィラこども園

宮崎県宮崎市を中心に、保育園・こども園・児童クラブ・児童発達支援センターを運営されている協愛福祉会さん。今回は宮崎市の中央ヴィラこども園・風光るゆめの森の2園で公開保育を実施しました。

中央ヴィラこども園・風光るゆめの森では、2022年の夏から子どもの遊び・学びの道具としてスマートエデュケーションのKitS(ICTツール)を導入しています。クラス活動の中でKitSを活用する園さんも多いのですが、協愛福祉会の2園さんはクラス活動としてではなく、興味のある子どもたちが使いたい時に自由にiPadを使える環境を用意しています。
子どもの興味関心から生まれる遊びを大切にされている園さんなので、日頃からほとんどクラスの一斉活動は行っていません。公開保育中も、本当に多種多様な遊びの姿が見られました。
今回のレポートではICTを活用した遊びを中心に、当日の2園の様子を簡単にご紹介します!

【中央ヴィラこども園】

中央ヴィラこども園には、とても素敵なアトリエがあります。さまざまな画材や道具・自然物が並ぶなかに、iPadも置いてあります。

中央にあるのは子どもたちの作品の展示棚。遊びが続き、広がっていくための大切な仕掛けです。
壁に貼ってある絵は、子どもたちがiPadでデザインした作品。

子どもたちは使いたい時にアトリエから保育室にiPadを持っていって遊んでいました。

● ICTを使った遊びの様子
「アートポン!」のBGMに合わせてみんなでダンス!


子どもたちが見ていた「アートポン!」の画面。
「アートポン!」では作品を写真にとって取り込むと、画面の中で自由に動き出します。
子どもたちは、自分の作品と一緒に音楽に合わせて踊るのが大のお気に入りのようでした。

こちらは公開保育前日の様子。iPadで調べながら、子どもたちが先生と一緒にセミ図鑑を作っていました。最近は園庭でセミとりをするのが大ブーム!

翌日には、完成したセミ図鑑が壁に貼られていました!子どもたちが作ったたくさんのセミも飛んだり、木にとまっていたりして、素敵なセミワールドが作られていました。

園庭では、生きたセミやセミの抜け殻をマイクロスコープで覗いてみようとみんなで奮闘中。「セミの目、キラキラしてるー!かわいい!」「これはクマゼミだね!」など、子どもたちの言葉に先生も「ほんとだねー!」と大興奮(笑)

園庭から何かを大切に持って保育室に戻る男の子。何が入っているかというと……。

セミの死骸でした。5歳クラスではセミの標本づくりが始まっているそうです。早速先生がアルコールに浸けていました。

5歳クラスでは、恐竜のジオラマづくりも盛り上がっています。ジオラマがストップモーションアニメづくりに発展していました。

手前のiPadでは子どもたちが作ったストップモーション映像が展示されていました。

● 子どもたちの素敵な姿がいっぱいの園舎
0歳から5歳まで、ここでは書ききれないほどいろいろな遊びが生まれ、つながり、広がっている中央ヴィラこども園さん。廊下の壁にはたくさんのドキュメンテーションや子どもたちの作品が飾られていました。見ているだけでウキウキしてしまいます。

「子どもたちの遊びがあふれかえる『カオスな空間』を作りたいんです」
と理事長の横山先生は語っていました。

● 自然との「共主体」を実現する園庭
以前は普通のグラウンドだったという園庭。そんな姿が想像もつかないほど自然があふれています。子どもたちは「名もなき遊び」に夢中になっていました。

●地域とつながるお散歩
中央ヴィラこども園のお散歩は、地域社会への興味や愛着を深めることもねらいとしています。立派なマップが掲示されていました。

● 保護者と対話するドキュメンテーション
保育者や子どもが遊びを振り返るツール、保護者に子どもの様子を伝えるツールから一歩前進し、今年度から保護者と対話するためのドキュメンテーションに取り組み始めたそうです。
乳児クラスでは、掲示しているドキュメンテーションに保護者が付箋でコメントをしていました。
園と家庭が一丸となって子どもの姿を見守っている様子がとてもよく伝わってきました。

給食をテーマとしたドキュメンテーションに、
保護者が家庭での食事の様子をたくさんコメントしていました!

【風光るゆめの森】

先日夏祭りが終わったばかりということで、子どもたちが目一杯楽しんだ余韻が残る空間となっていました。お神輿飾りを見ると、子どもたちが普段どんなことに興味を持っているのかがよくわかります。普段の遊びとつながったお祭りです。

子どもたちがiPadで描いた作品が素敵なモビールとなって、空間を彩っていました!

● アトリエ
風光るゆめの森にもアトリエがあります。

こちらは絵の具コーナー。制作遊びでは、お片付けが課題となることが多いと思いますが、こちらでは整頓の写真を置いて、遊んだ後は自分でちゃんと片付けるように促しているそうです。

いろいろな先生がアトリエを使うので、要望や気づいたことなど書き込み、共有しています。先生同士のコミュニケーションが素晴らしい園さんです。

風光るゆめの森では、iPadは各保育室に置いていますが、公開保育当日は子どもたちはiPadで遊びませんでした。そんな時に備え、子どもたちが普段KitSでどんな遊びをしているか、先生が動画でまとめてくださっていました!

アトリエで上映会。スクリーンに映っているのは、誕生会のために子どもたちと先生が一緒に作ったアニメーション作品です。KitSのツールを使って作成しています。

左下に写っているコンパクトプロジェクターは
普段、子どもたちも自由に使うことができます!

● 広大な園庭と野菜畑
風光るゆめの森の最大の特徴は、自然いっぱいの広大な園庭。立派な野菜畑もあり、たくさんの野菜を栽培しています。公開保育当日は、野菜の収穫や水遊びを楽しんでいました。

園庭には緑がいっぱい。なんと左側の白いテントの奥まで園庭は広がっています。

広い!右側に野菜畑があります。

年中さんが野菜の収穫をしていました。

立派なお野菜がたくさん。美味しそうです。

都道府県の郷土料理が給食で出るそうです。子どもたちの視野も広がりますね。

水遊びの夢中の2歳児さん。真ん中の噴水から出ているのは地下水。年間を通して水温が一定で、水は夏は冷たく、冬は温かいそう。

● ドキュメンテーション
風光るゆめの森でも、廊下にはたくさんのドキュメンテーションが飾られていました。

子どものつぶやきを拾い、丁寧に遊びの環境を作っている中央ヴィラこども園さんと風光るゆめの森さん。子どもたちが遊びに夢中になる姿を見て、参加者の方からは「目からウロコが2枚も3枚も落ちました」「子どもたちの主体性をはっきりと見ることができました」など、素敵な感想をたくさんいただきました。

講演会

午後は会場を佐土原総合文化センターにうつし、講演会や中央ヴィラ・風光るゆめの森の先生方が参加するパネルディスカッションを開催しました。

「Happy + Natural」「Happy + Challenge」
社会福祉法人 協愛福祉会 理事長 横山和明先生

「Happy + Natural」「Happy + Challenge」を理念として掲げる協愛福祉会。横山先生は、系列園のすべての先生が同じ価値観で保育に向き合うには理念の浸透が何よりも大切だと考えたそうです。誰でもすぐに覚えられるわかりやすい言葉で理念を表現したい。そんな思いから、現場の先生方と一緒に理念を作りあげたそうです。

協愛福祉会ではこの理念とは別に、子どもの主体性を大切にするための
・プロジェクト教育
・自由選択教育
・アート
・外遊び散歩の充実
という「保育の4本柱」を掲げています。
ただし、この4つを必ず保育に取り入れなくてはならないということではありません。理念を実現するための道標としているものの、何をどのように実践するかは各園に委ねられています。

理念が浸透しているからこそ、先生が主体的にその理念を実現する方法を選ぶことができる。素晴らしい組織づくりです。

組織づくりの面では、もうひとつ大きな特徴があります。それが「協愛WG(ワーキンググループ)」制度です。各園から委員を選出し、法人全体でひとつのテーマに取り組む組織横断型のプロジェクトチームです。

現在は、「広報戦略委員会」「環境構成委員会」が活動しています。子どもや保護者を一番近くで見ている先生たちの意見を汲みあげ、ボトムアップで意思決定ができる仕組みがあるからこそ、「子どもと先生の共主体」の園運営が実現できているのだと感じました。

そのほか、「最初は保育にICTを入れるつもりなんてなかった」など、興味深いお話盛りだくさんの講演でした。

園経営者が身につけておくべき21世紀型スキル
東京大学大学院 情報学環 学環長 山内祐平先生

「今の子どもたちが大人になる時代に社会がどのように変化しているのか」「それを見据えたうえで、幼児教育は何をすべきなのか」。
山内先生からは、未来を生きる子どもたちを育てるうえで、大人こそが身につけておかなくてはならない21世紀型スキルについて、解説いただきました。

最初に、これから起こる3つの大きな社会変動についてです。

これからの社会変動① 技術の進歩と仕事の変容
技術が進化することで、仕事が変化します。この図は技術の進化によってどんな仕事がどれくらいコンピュータにとって変わられるかを表しています。

横軸はテクノロジーの進化、縦軸は雇用を表しています。右に行くほどコンピュータ・AI・ロボットなどに代替されやすい仕事です。サービス業、営業、総務系のお仕事は自動化されやすい。一方で左側情報系や教育系は大丈夫と言われていた……のですが、これは1年くらい前までの話。

最近はChatGPTをはじめとする生成AIがものすごいスピードで進化しています。そして、生成AIの影響を大きく受けると言われているのが情報系・医療系・教育系の仕事です。最近のAI技術ではプログラミングやデータ分析もできますし、執筆や家庭教師の仕事などもできてしまいます。以前は大丈夫と言われていた職業も大きな影響を受けるのです。こういう時代に子どもたちは生きていくわけです。
AIに使われるのではなく、AIを使いこなして人間のための新しい仕事を作っていけるようにならないといけない時代が来ている」と山内先生は語ります。

これからの社会変動② 少子高齢化と人口の減少
そして確実にやってくるのが少子高齢化と人口減少です。人口減は社会のあり方に多大な影響を与えます。「教育機関も生き残りを考えなくてはならない。東大ですら危機感を感じている」と山内先生はおっしゃっていました。

これからの社会変動③ 長寿命化と人生の変容
人口が減少する一方で、人の寿命は伸びていきます。今の園児は100歳以上生きることはほぼ確定で、今後は120歳くらいまで寿命が伸びていくそうです。
寿命が伸びることはいいことではありますが、社会構造的には考えなくてはいけない課題もあります。これまでは55歳~60歳くらいで定年となり、そこから先は余生を楽しむという生き方をしている方がほとんどでしたが、100歳まで生きるとなると話は変わります。
「人生100年時代」では余生が始まるのが80歳。20代前半で就職してから80歳まで、60年間働き続けなければいけません。一つの仕事で定年までという時代ではなく、新しいことを学び、仕事も変えながら働き続ける。その基礎を22歳までに身につけなくてはならないのです。

そこで大切になってくるのが、どんな仕事でも必要になる高度な一般能力。それが21世紀型スキルです(21世紀型スキルの簡単な解説はこちら
幼児教育から大学教育まで一体となって21世紀型スキルの習得に取り組まなくてはならないなかで幼児教育に求められるのが、人生の土台を作ることです。とくに「自分で考える力」「他者と協力する力」「道具を使いこなす力」が大切です。

遊んでいる成功体験の中で「できる」という自信を身につけること、「これはおもしろい!」といろいろなことに関心を持つこと、「これをしたいときは、これを使える」という道具像を育むことが小学校以降の学びにつながっていく、と山内先生はお話しされました。

また、道具としてのICTという観点から、最近、国立大学附属幼稚園が文科省の助成金をとってICT活用に取り組み始めている事例もご紹介いただきました。

ここまで子どもたちについての話をしてきましたが、21世紀型スキルは大人にも必要です。自分が変わらないと子どもが変わらない。日々研鑽をしなくてはならない時代が来ているのです。

・保育者に求められるもの
これからの保育者に求められるのは「自分で探求する姿勢と能力」。「自分の役割は教えることだけです」と思った瞬間に成長は止まってしまいます。子どもと一緒に一緒に新しいことを探求していく姿勢がとても重要です。また、子どもの姿を読みとる力、そして園だけに閉じるのではなくて、いろんな人とつながっていくことが大切だ、と山内先生はお話しされました。

・経営者に求められるもの
経営者に求められるのは、目先のことにとらわれるのではなく10年先の社会的ニーズを考えられる力、失敗を恐れず挑戦する心、そして命令するのではなく、「みんなのために尽くす」という心(サーバントリーダーシップ)です。力でねじ伏せるマネジメントの時代はもう終わりです。

・教育機関に求められるもの
最後に、教育機関に求められるものについてもお話しいただきました。
公的資金をどう使うかについて、社会の目が厳しくなっている今、教育機関にも透明性が強く求められています。一般企業と同じレベルでのガバナンスが必要な時代がきています。
※EBPM=Evidence Based Policy Making

「高度な能力育成など社会の期待に応えるためには、不断の挑戦が必要になる。今日をその第一歩にしてほしい」と山内先生。
新しい視点から保育・幼児教育を考えるきっかけを与えてくれるお話でした。

これからの幼児教育 
スマートエデュケーション代表 池谷大吾

池谷からは、弊社が提供しているサービスの概要を紹介させていただきました。
これから少子高齢化が本格的に進むなかで、園も保育の質の向上に真剣に向き合わなくてはいけないません。一般企業と同じく生き残るためのさまざまな方法を考えなくてはいけない厳しい時代が訪れていますが、園だけで課題を解決することは簡単ではありません。スマートエデュケーションは、さまざまな側面から園さんと一緒に課題を解決することを目指しています。

1回15分!世界中のプロフェッショナルとリアルタイムで国際交流できる「きっつアース」

● 園庭に自然との共主体の場をつくる「ASOBIO(アソビオ)」

● 日々の保育記録から簡単に卒園アルバムを作ることができる「Myおうちえん」

● ホームページ、作りっぱなしになっていませんか?SNS時代の効果的な園広報ツール「プロモ」

※池谷の発表資料はこちらからダウンロードしていただけます。

パネルディスカッション
「これからの保育と園経営について考える」

最後に、中央ヴィラこども園・風光るゆめの森の先生方にもご参加いただいてのパネルディスカッションを行いました。
Slidoというアプリを使って参加者の先生からリアルタイムで質問を受け付け、2園の先生や山内先生にご回答いただきました。こちらも参考になるお話が盛りだくさんです!ぜひ動画をご覧ください。

次回の公開保育のお知らせ

次回は9/27(水)に北海道野付郡別海町で公開保育を行います!
こちらはオンライン開催も行います。ぜひお気軽にお申し込みください!


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