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2022年1月のおんがく

はじめに

前回のエントリーで"気が向いたら2021年のベストトラックでもまとめる(1月中に纏めたい)"というような旨を口走った気がしますが、冷静に考えると1年間で膨大な曲数を聴いており、あまりにも良い曲が多いので10曲はおろか30曲にまとめることすら難しい…と思ってしまいましたので、前言撤回します(すみません)。

今年は毎月末にミックスを作ることは辞める(気分でまた作ります。)ものの、聴いていた曲を体系的にまとめ、"自分の人生をおんがくを通してアーカイブ化すること"は自身にとって非常に有意義でしたので、その月に聴いていて特に良かった曲を複数取り上げる形で継続することとします。
あと、音楽に限らずその月に楽しんだ面白かったコンテンツも紹介しようかな。
※あくまでも私の個人的な感想です。

本エントリーはその2022年1月編です。


① 和ぬか / 進め!そっちだ!

昔から正月のCM広告が好きで、新年早々夜更かしをしていると時々流れてくる正月広告には注目していることが多いのですが、au / KDDIの正月広告は毎年新年の開幕にふさわしい希望を私たちに示してくれている気がします。
2021年の池田エライザ / みんなってエブリワン!や2020年のHalf Time Old / みんな自由だ。然り、古くはWANIMA / やってみよう、AI / みんながみんな英雄など。毎年統一した新年に対してのあかるいメッセージ感を保ちつつも、時々の時代背景を踏まえたメッセージを打ち出している気がします。以下は今年のau / KDDIの正月広告のステートメントからの引用ですが…

”いろんなことがあった2021年。 
一歩を踏み出すことが怖くなったり、 自分の選択に不安を感じることも少なくありませんでした。
 でも、どんな選択も、きっと正しい。 
にっちもさっちもみんな正解、そう信じて。 
2022年がみなさまにとって幸せな一年となりますように。”

もう、まさしくその通りですよ。

この曲を歌っている和ぬかは寄り酔いなどの楽曲がTikTokでバズり、脚光を浴びた覆面アーティスト。
maisondes.に参加していたことがキッカケで昨年から彼の曲を聴いていましたが、本曲はandropのYeah!Yeah!Yeah!などを彷彿とさせる爽やかかつエモいバンドサウンドで、au / KDDIのステートメントにガッチリハマっていると思います。
"ぼくたちの2022年の指針"のような曲です。


② 藤井風 / Kirai Remixies (Asia Edition)

年末の紅白歌合戦の演出が話題となった藤井風の2022年1stリリースが2021年の自身のヒット曲のリミキシーズである…という点ですでに興味深いですが、このアルバムはアジア各国各都市からリミキサーが参加しており(日本東京からオリジナルアレンジャー・Yaffle / 韓国ソウルからDaul / 台湾台北からFunkyMo / インドネシアジャカルタからpxzvc、Naken / 中国厦門からKnopha)、オリジナルとは異なるテイストのきらりを何曲も楽しめる…という点で素晴らしかった。

現在、アジアの音楽シーンの中心は言うまでもなくK-POPが担っており、BTSを始めとしてアジアのアーティストがビルボードチャートにチャートインすることが最早普通のことになりつつありますが、ポップス以外のジャンルにおいても88risingの躍進や、人々がSNSを経由して音楽を聴くようになっている時代背景などをフックにアップカミングなアーティストがグローバルに売れていく潮流が生まれていると感じます。
そんな中で藤井風という才能とアジア各国の才能のフュージョンが楽しめるこの一枚は間違いなく2022年におすすめできる一枚です(レコードのフィジカルが出たら買うぞ…高騰しそうだけど…)。

自身が好きなジャンルということもあり、今回のリミキシーズの中ではUK Garageの作法に則ったNakenのリミックスを特に良く聴いていました。
また、ジャケットのカバーアートもシングル「きらり」のフォトセッション時に撮影された未発表写真のリミックスということで本当に芸が細かい一枚です。

藤井風といえば年明け早々の下記配信も要チェック…


③ 宇多田ヒカル / BADモード

今月のベストソングです。
もう何年も宇多田ヒカルには心を揺さぶられ続けています。

1999年にFirst Loveがリリースされた時、私は幼稚園児でしたが、車のカーステレオから流れてくるこの曲を聴いた父親が衝撃を受けていたこと…に子供ながら衝撃を受け、以来いずれの楽曲においても脳天を穿たれ、心を揺さぶられ、安心感を与えられ続けています。
1999年から2022年というと、その間に人々の暮らしは一変し、身につけるものもたまごっちやポケベルPHSからスマートフォンへと変貌しているというのに、約四半世紀にわたって日本を代表するアーティストの最前線に立ち続けていることに脱帽です。

今回のアルバムの表題曲"BADモード"然りアルバム全体からは
"無理しなくてもいいんだよ。自分は自分で良いんだよ。"という自己愛や受容のメッセージ性を感じ、閉塞感が漂う世界の中でこのアルバムがあることで色々な気持ちが浄化されていく気がします。

"いつも優しくていい子な君が
調子悪そうにしているなんて
いったいどうしてだ、神様
そりゃないぜ

そっと見守ろうか?
それとも直球で聞いてみようか?
傷つけてしまわないか?

わかんないけど
君のこと絶対守りたい
絶好調でも BAD モードでも
君に会いたい"

サビ前段までの歌詞とかむず痒くなるほどに恥ずかしくなる一方で、共感する部分もあり…
他の歌手だと薄っぺらく聴こえてしまうようなフレーズであっても宇多田ヒカルの唯一無二な歌声と空気感がこの曲を成立させていると感じます。

また、音楽的には非常に豪華な製作陣(Floating Points, A.G.Cook, Skrillexら)が関わっており、ボーナストラックにはシンエヴァンゲリオン最終章のテーマ曲であるOne Last Kissに共同プロデュースで参加していたA.G.Cookが手掛けたFace My Fears remixが入っていて最高。必聴です。


④ WurtS / Talking Box

今月発表されたSpotifyのRader:Earlynoise2022にも選出されていたWurtS。
私が幼少の頃から感じ、持ち続けている持論の一つに"イントロがイイ曲はイイ"というものがありますが、この曲のイントロはマジで最高です。

音数が少ないのに的確に脳を揺さぶってくる感じ。
イントロの印象的なフレーズの繰り返しからピアノ調のコード進行、クラップが入ってきて、ライザーで盛り上げてサビはボーカル無でイントロの印象的なフレーズに戻る…
という構成自体はシンプルでありながら、無駄な音が何一つ無く、特にメロディーの裏で鳴ってるウォーキングベース調のシンセベースがもう最高。

今月のちょっと嬉しかったことの一つに私の働いている会社の某偉い人がこの曲を聴いていると判明したことがあります。
(元々新技術やトレンドに対してのアンテナがかなり鋭い方ではありますが…)
こういう言い方をするとかなり棘がありますが、会社の中で若者の流行やトレンド、文化(特に映像、音楽といったクリエイティブプロダクト)に対して本当に理解している人なんて誰も居ないと思っていましたし、理解しようという姿勢も感じたことほぼ皆無でしたので、1人でテンションがぶち上がりましたね。

言い方はあれど、好きなものを好きと言うこと、言える環境にしていくことは大事だと思うので、この日記然り継続して自分の好きを追求し、言語化していこうと思います。

WurtSは4月にリアルライブがあるので是非行きたいですが、コロナもまだ続いているしいけるかな…どうかな…


⑤ Kep1er / MVSK

前回のエントリーでも記載していましたが、Kep1erのデビューには着目していましたのでもちろんチェックしていました。
第一集のWADADAは二曲目に収録されている表題曲の"WADADA"も勿論イイですが、一曲目の"See The Light"と三曲目の"MVSK"が特に好きです。

MVSKは最早KPOPを語るには欠かせない名プロデューサー、e.oneが作曲を手がけており、その他の楽曲もO.O.O.を手がけたこれまたKPOPを代表する名プロデューサーmonotree、表題曲にはSEVENTEENの楽曲プロデュースも手がけるPRISMFILTERが手がけるなど文句無しの豪華布陣勢揃い。
本人たちも含めて全員四番打者みたいな様相で世に放たれた感があります。

WADADAの活動は一月末には一旦の終わりを迎えると思いますが、デビュー年でもある今年はより精力的に活動するものと思いますのでチェックし続けたいと思います。


⑥ WJSN CHOCOME / Super Yuppers! (슈퍼 그럼요)

今月聴いていた音楽にあえて順位をつけるとすれば、表一位は宇多田ヒカルのBADモードになりますが、"裏一位は?"と問われれば間違いなくこの曲です。

曲のド頭から"내 이름은 슈퍼 그럼요!(私の名前はスーパーもちろんです)"
って面白いにも程があります。

前回の曲もなかなかのトンチキソング(褒めてます)でしたが、今回はコンセプトと衣装が相まって、もはや現代のセーラームーンにすらみえてくる…
宇多田ヒカルのBADモードが悲哀を併せ持った自己愛、受容の曲であることと対照的にこの曲は歌詞にもあるとおり、"風のように、嵐のように現れて認めてくれる。肩を貸してくれる。"ストレートに受容してくれる歌です。
そんなシュポクロンミョを誰しもが求め、誰しもが誰かのシュポクロンミョになりたいと願っているのではないでしょうか。
参考までに前曲とイムダヨンが無双していたits liveパフォーマンスの抜粋を貼っておきます。


⑦ COOGIE / Good night (feat.BE'O)

AOMGのニューアーティストとしてジョインしたCOOGIEの新譜もやはり今月はよく聴いていました。
ティザーの段階ではTwitter等で多くの方が予想していたもう1人、SINCEオンニだと思っていたのですが、正解はCOOGIEでした。

リリースされたGood Night(feat.BE'O)はサビ前のフックまで同じギターアルペジオのワンフレーズが繰り返され、種々のビートパターンで盛り上がりを作っていくような曲です。
特にアジアンヒップホップではよくある展開の曲ですが…大好物です。
GRAYのシグネチャーサウンドにはもはや安心感すら感じます。
(GRAY、GroovyRoom、Cha Cha Maloneのシグネチャーサウンドが入ってると、良曲のバイアスがかかってしまいますね…新三大安心シグネチャー…)

高校生ラップ選手権やフリースタイルダンジョンの影響もあり、日本でもアンダーグラウンドシーンに限らずお茶の間にもヒップホップの裾野は確実に広がっているように思えますが、韓国も同様であり、Show Me The Money(ショミド)などの影響もあって、2010年以降の発展が凄まじいです。
日本においては高ラから羽ばたいた?BadhopやWilywnka、Novelcoreなどが活躍している構図と同じく、このCOOGIEもショミド7ではばたいた若手ラッパーの1人。2021年リリース曲ではPENOMECO、Mirani、GROOVYROOMとのUp&Downや韓国の人気ウェブトゥーン"スタディーグループ"とのタイアップでGaekoとリリースしたFastなどいずれもめちゃ良かったので2022年の彼の動向も要チェックです。


⑧ Party Pupils & Big Gigantic / Renegade

ここまでアジアの楽曲を取り上げていましたが、欧米のアーティストの曲もちゃんと聴いてました。
BTSのSUGAやONE OK ROCKのTakaとコラボレーションしたことのあるMaxのユニットParty Pupilsの新譜がよかったです。

彼等は2019年の秋に来日していた際、TJO氏がオーガナイズしていたプライベートパーティーで幸運にもパフォーマンスを観ることが出来ましたが、以来ずっとリリースは追いかけており、今回ももれなく好きな感じ…
2010年代後半以降特にですが、世界的にニュートロ、ディスコティックの流行が著しく、日本におけるシティポップの流行も必然か…と思われるほどに猫も杓子もニュートロといった感じですが(BTSのdynamiteやDua LipaのLevitatingなどでお茶の間にもかなり浸透した気がします。)
Party PupilsやCosmo's Midnightは一貫してニュートロプラスアルファの音楽表現を続けている気がして好きです。


⑨ Moonchild - "You Got One" feat. Alex Isley

Moonchildの結成10周年となる2022年ファーストリリース、通算5枚目のアルバムから一曲。
朝コーヒーを飲みながら聴くこの曲が最高でした。

MoonchildはThe Internetのサポートなども務めた実力派バンド。
この曲を一言で表すなら"ジャジー""メロウ"とかでしょうか。ベタベタな表現ですが…

Moonchildはいずれの曲も本当に甘美で日常に簡単に安らぎとおしゃれさを与えてくれますね。
私がもしカフェを開業するとしたらBGMで毎日かけたいくらい…。
私は誰がどんなときにどんなジャンルの音楽、曲を聴きたくなるのか?といったことや、シーンや場所にマッチする音楽や曲、といったことに興味がありますが、誰のどんな生活にもマッチする音楽は?と問われた場合にこの曲を推したいです。

相変わらずコロナが猛威を奮っていますし、社会人になったこともあり、なかなか人前でDJしたりする機会も無いのですが、ちょっとお洒落な雰囲気のバーやカフェで選曲したい一曲です。


⑩ HUZ & Susband / BLOSSOM (feat. Seoyoung) 

今月の良かった曲インディーズ編1位です。

韓国語で調べてみると、DelusiVというところが企画していてGenieがディストリビューター…ということまではわかったのですが、詳細な情報が無く出元がよくわからないです。

ただ、たまーにこういったインディーズ系の曲で"アッ"と思わされることは多々あり(前回のエントリーで触れたOVCOCOの247やtomgggのLove Rideなど…この2曲は出元がはっきりしてますが…)、この曲もその類の驚きがあります。
(驚きというか、好きというか。)頭のリバーブがかかったシンセベースの音や全体的な雰囲気からどことなくIZ*ONEの楽曲っぽさもあり、繰り返し聴いていました。

どうしてもメジャーな曲にばかり耳が行きがち、注目しがち…ですが、2022年も広くいろいろな曲を聴いてキャッチアップする気持ちは忘れずに臨みたいところです。


結局10曲も取り上げることになってしまいました。
次点で良かった曲たちとしてはYena / Smiley(feat.BIBI)やLo-key boi & Madaler kid / DuO!!!(Remix)、Taeyong, Jeno, Hendery, YangYang & Giselle / Zoo、Pentagon / Feelin' Like、BURNABLE/UNBURNABLE / ノンアルコールで酔うなど。Yenaは確か昔SBSかどこかの局で教育番組のおねえさんをやってましたが、またうたのおねえさんみたいな感じで子供番組とかに出て欲しい…


番外編 Netflix / ミッドナイトアジア: 食べて・踊って・夢を見て

今月観ていたNetflix作品は「脱出おひとり島〜Single inferno〜」や「新聞記者〜The journalist〜」など全体的に名作が多かったですが、私自身、人間のリアルや街のリアルが好きで、ドキュメンタリーはよく観ています。

アジア各国のナイトライフを取り上げたこのドキュメンタリーは本当に素晴らしかったです。
第一回の東京編で取り上げられていた恵比寿のバー、トレンチや、渋谷のなるきよなど、コロナが落ち着いたら是非行きたいですね。


さてさて来月、2022年2月ですが…
個人的には現在仕上げている曲の大枠を早く完成させたいです。

以上。
2022年2月が良い月になりますように。
ファイティン!

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