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Selkie セルキーと白黒まだら模様の石


Selkie セルキーと白黒まだら模様の石 (英国の不思議な妖精と石達 その2)

スコットランドのオークニー諸島に、一人の気難しい漁師が住んでいた。
クレイグと呼ばれるその漁師は、人嫌いで誰とも親しく付き合おうとしなかった。

ある朝、
クレイグがいつものように一人で漁に出ようとしたときのこと。

大きな岩壁に、白地にまだら模様の不思議な布が掛けてあるのが目に止まった。
このオークニー諸島に、古くから伝わるセルキーの伝説を信じていたクレイグは、これがすぐに、セルキーの脱いだアザラシの皮であることに気がついた。

彼が岩陰に隠れて覗くと、
人間の姿をしたセルキーが優雅に泳いでいるのが見てとれた。

クレイグは直ぐさま、そのアザラシの皮を手に取ると、
代わりに自分の着ていた厚手のコートを大きな岩に掛けておいた。
シルキーの脱いだアザラシの皮を抱えて、一目散に家に帰ったクレイグは、
すぐにその皮を屋根裏部屋の羽目板の奥、決して誰にもわからない場所に隠した。

その夜、彼の厚手のコートを羽織った細身の美しい女性がクレイグの家を訪れた。その日からクレイグとセルキーの生活が始まった。
クレイグはセルキーを、まるで召し使いのように扱った。
セルキーは、朝は早くから釜戸でパンを焼き、
畑で採れた野菜で温かいスープを作った。
着るものを洗うだけでは無く、漁に使う綱の手入れまでさせられた。
ソファーに横たわるクレイグを横目に、
セルキーは家中を隅々まで綺麗に掃除しなければならなかった。

夜ベッドに入ると、今は帰れない海の世界を思って、毎晩涙が溢れた。
出掛けたきり帰ってこないセルキーを案じているだろう夫と可愛い二人の子供達。それでも、あのアザラシの皮が無ければ海の世界に戻ることは出来ないし、
愛する家族に会うことも出来ない。
知らずと二年の月日が流れていた。

その年は不漁で、ほとんど魚が捕れなかった。
クレイグは、漁に出ることもせず家に篭って、
毎日酒浸りのだらし無い生活を続けていた。
「おまえはアザラシなんだから、海で魚を取ってこい。」と、
セルキーに辛くあたることもしばしばあった。
ずっと耐え忍んできたセルキーだったが、これ以上耐えられない。

ある晩、ふとソファーで眠りこけているクレイグに目をやると、
白い何かコロッとした物が、彼のポケットから転げ落ちているのに気がついた。
それは白地に黒いまだら模様のついたアザラシのような石だった。


セルキーは海の長老にアザラシの毛皮を借りに行った時のことを思い出していた。長老はアザラシの毛皮と共に、小さな石を彼女に手渡して、こう言った。
(おまえに魔法の石を授けよう。辛い時は、この石に願いを込めて枕の下に入れて眠りにつけ。そして夢のおつげに従いなさい。)

その夜セルキーは、その石に願いをかけて、枕の下に入れて眠りについた。
すると夢の中に、魔法使いのような不思議な人物が現れた。
彼の目の前には大きな釜があり、
その中には水と共にアザラシ模様の石が入っている。
(地で採れた石を水で晒し、火を加えて空気を呼び、四大エレメントの恩恵を受けよ。)

翌朝、目覚めてすぐに枕の下から石を取り出すと、セルキーは釜戸に駆け寄り、
鍋に水を入れて静かに石を晒した。
そして火をくべて、風を送った。

するとたちまち、部屋中が真っ白な煙におおわれ、セルキーの意識は消えた。


気がつくと彼女は、石にかけた願い通り海の世界にいた。
アザラシの皮は肌に心地よく、
セルキーは愛する夫と子供たちの待つ住処へと泳ぎ続けた。




<物語りの解説>

アザラシの皮を人間の男性クレイグに奪われてしまったセルキー。
仕方なく彼に尽くしながらも、心ではいつも夫と可愛い二人の子供を思っていた。
(海に帰りたい)というセルキーの思いは、白と黒の魔法の石を呼び寄せる。
マーリナイトは、まさしくアザラシのような、白と黒のまだら模様をした石。
マーリナイトが魔法の力を呼び覚まし、彼女の枕元に魔法使いが現れる。
この石は、地、空気、火、水のエレメントと調和する・・・
地面から採れた石を水に入れて、釜に火をかけ、空気を与えれば
四大エレメントが完成する。
その魔法の力が、セルキーの人生に幸運をもたらす。
また、マーリナイトは愛する人、家族との人間関係を良くする石でもある。




<セルキー>

セルキー (スコットランド語 selkie, selchie, silkie 「あざらし」)
セルキー族(selkie fowk)は、スコットランド特にオークニー諸島やシェットランド諸島の民間伝承に語られる、アザラシから人間の姿に変身する妖精。
いつもは海中で生活しているが、陸にあがり「あざらしの皮」を脱ぐと、男女ともに非常に美しい人間の姿となる。
もし人間の男性が女性のセルキーが脱いだ皮を盗ってしまうと、彼女は男性の言いなりとなり、妻にならざるを得ない。
セルキーは良妻賢母となり、夫に尽くすが、隠された皮を見つけた途端、本来の夫が待つ海へと帰ってしまう。
ある話では、セルキーが人間の妻となり、数人の子供をもうけるが、子供の一人が皮を発見し(それが何かを知らずに)セルキーは直ちに海へと帰ってしまう。
セルキーは、人間の夫には再び会うことを避けるが、子供たちに会いに戻ってきて、波の中で子供たちと一緒に遊ぶのだという。
また、男性のセルキーは非常にハンサムで人間の女性を誘惑する事に長けている。彼らは決まって、夫の帰りをいつも待っている漁師の妻のような、人生に不満を抱いている者を探す。
そしてもし人間の女性が身籠っても、父親だと名乗り出ることは無く、子供に責任を持つことは無い。その為、セルキーの伝説が伝えられている地方では、父親も無しに身ごもるのは男性のセルキーの仕業とされた。
もし、人間の女性の方から男性のセルキーと会いたいならば、海に七滴の涙を落とさなければならない。





<マーリナイト>

マーリナイトは、魔法の力を呼び覚まし、あなたの人生に幸運をもたらすと言われている。この石はシャーマンの知恵に溢れ、錬金術士のパワーに関連している。
マーリナイトは、地、空気、火、水のエレメントと調和する。
マジックの基本である、四大元素を始めとするエレメントについての学びを助け、それらとの結びつきを深くし、自らがそのパワーを扱えるようにサポートすると言われている。
心の平静を保つ為の石。均衡をもたらすマーリナイトのニ色の色のハーモニーは、陰と陽、意識と無意識、思考と直感、男と女のエネルギーバランスを完全にする。霊的な波動と地球の波動を融合して、体内や環境にグラウンディングさせる。
マーリナイトは強力にエネルギーのお掃除をしてくれる石。
根深く残っている精神的な癖ともいえる間違った心の持ち方や、深い心の傷やトラウマを洗い流してプログラミングしなおす。
過去の傷を癒し、過去生の能力で、人生に奇跡をもたらすと言われている。
不愉快な危険を正面から受け止め、肯定的な学びに変えるのを助け、カルマの解消に効果的だと言われている。

宇宙的な意識にアクセス出来る、また、夢を見ている間や瞑想中にその人の「学習」を援助してくれるともいわれている。霊媒的なスピリットとのコミュニケーションが可能になり、全ての種類の魔法を学ぶ為の助けになる。光と闇のバランスを保つ為の石。

人間関係を良くする石。愛する人、家族、そしてあなたの身の回りの人との関係を良くしてくれる。特に、養子が義理の両親との間の関係を良くすることを助けてくれる。お互いのことをより理解するための勇気を授ける。懐疑心や緊張を取り除き、未来の強い結びつきの基礎となる地固めをしてくれる。



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