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映画鑑賞2024

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2024年2月の記事一覧

『枯れ葉』/映画は人生を映し取っただの言うと陳腐が実際そうだから仕方ない。

『枯れ葉』/映画は人生を映し取っただの言うと陳腐が実際そうだから仕方ない。

フィンランドの監督アキ・カウリスマキが引退を撤回して作った6年ぶりの作品。引退撤回というと、ケン・ローチのように社会へのメッセージ含んだ作品(『家族を想うとき』のような)と思いきや、そういった要素はありつつも、基本的にはすごく「らしい」メロドラマ。余談だが、社会派的要素としては主人公の部屋にあるラジオから流れるウクライナ戦争のニュースがあるけど、あれ、字幕なしで観ても「ウクライナ」という単語が聴き

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『PERFECT DAYS』/小津というよりジャック・タチ。面白かったです。

『PERFECT DAYS』/小津というよりジャック・タチ。面白かったです。

 小津というよりジャック・タチ。確かに、トイレ綺麗すぎだろとか、言いたいことはある。それでもこの映画を嫌いになれない。まず、日常で繰り返される動作がスクリーンで再現されたときの気持ちよさ、これはさすがヴェンダースといった感じで、それだけで充分楽しめる。さて、平山(役所広司)だ。彼は東京を見守ってきた道祖神にも思えるし、セゾン文化の成れの果てという気もする。
 いずれにせよ、ある種のサブカル的に理想

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『カラオケ行こ!』/笑いで観客の緊張を解しつつテーマを伝えるこの映画の手法がヤクザ的な交渉術を思い起こさせるし、狂児は映画なのかも知れない。

『カラオケ行こ!』/笑いで観客の緊張を解しつつテーマを伝えるこの映画の手法がヤクザ的な交渉術を思い起こさせるし、狂児は映画なのかも知れない。

やっぱりねえ、この手の作品には弱いわけですよ。まず、聡実が属する合唱部という世界があって、狂児の属するヤクザの世界がある。そのグラデーションの中で、日常の地続きでありながら非日常感がある、という意味ではラブホと双璧の舞台であるカラオケボックスが、中間の世界として現れる。その枠をいかに踏み越えるかというところにドラマがあり、成長がある。また、舞台装置として、大阪の鄙びた風景が最高に機能している。良い

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『夜明けのすべて』/PMSとパニック障害の男女の交流という話を聞いて、およそ思いつく劇的な展開をすべて拝し、かつ面白く作っている。

『夜明けのすべて』/PMSとパニック障害の男女の交流という話を聞いて、およそ思いつく劇的な展開をすべて拝し、かつ面白く作っている。

PMSとパニック障害の男女の交流という話を聞いて、およそ思いつく劇的な展開をすべて拝し、かつ面白く作っている。あまり日本の映画を観ている感じがしなかった。『ラビットホール』とか『それでも、愛してる』あたりに近い。
物語のラストである人物が「短い間だけどお世話になりました」と言う時、そんなに短かったっけと思ってしまう。その理由のひとつには、人々の心の機微を映像(境目)で詳細に記述する演出の濃密さがあ

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