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【大月書店通信】第153号(2021/10/29)


衆院選を前に記者クラブでおこなわれた党首討論会で、自民党の岸田首相のみがLGBT法案と選択的夫婦別姓法案の通常国会への提出に賛成しませんでした。

それは、自民党の根深い家父長制的なジェンダー差別構造を象徴するものだと言えるでしょう。しかも、そのような政権への怒りの声が高まらないことも、また日本の現状なのでしょう。

他方、同様に家父長制的な抑圧が強く(『82年生まれ、キム・ジヨン』に描かれたように)、男女賃金格差がOECD諸国でワースト1の韓国(日本はワースト2)では、革命的と言われる#MeToo運動が起こりました。

女性に対する差別・暴力への怒りの声が燎原の炎のように立ち上り、政治・法律・文化など各界の著名人のジェンダー暴力が次々と明るみに出され、激しいバックラッシュを受けながらも、彼らを追いつめていったのです。

10月の新刊『#MeTooの政治学』は、そうした実態をつまびらかに描き、さらなる運動の発展に向けてフェミニズムを鍛えようとする理論が、力強くしなやかな筆致で記されています。

強姦罪に象徴される旧態依然とした法律の世界など、日本との共通点も多い韓国。だからこそ、その先鋭なフェミニズムの闘いに、勇気づけられます。

ジェンダー平等を高く掲げる日本へ、まずは衆院選――その1票が社会を変える力になるはずです。

【新刊案内】『#MeTooの政治学』ほか10月の新刊

10月の新刊です。お近くの書店にてお求めください。

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●ジェンダー暴力に対する闘いは止まらない
#MeTooの政治学――コリア・フェミニズムの最前線
鄭喜鎭[編] 権金炫怜、橌砦昀、ルイン[著] 申琪榮[監修]
金李イスル[訳] 2,400円(税別)

韓国において「革命的」といえるほど大きな盛り上がりを見せた#MeToo運動。その根底に流れる理論と実践を提示。韓国フェミニズムの現在に対する批判的な分析は、日本のフェミニズム・ジェンダー状況を対比的に浮き彫りにする。

☆推薦☆
伊藤詩織さん(ジャーナリスト)
菊地夏野さん(名古屋市立大学准教授)

試し読みできます

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●《シリーズ刊行開始》人間の誕生やからだのしくみを科学的に知る
人間と性の絵本2 からだってステキ!
浅井春夫[文] 柿崎えま[絵] 2,500円(税別)

受精卵から「おぎゃあ!」と生まれるまでに人間はどんなふうに成長するのかな? ごはんを食べたり、スポーツをしたり、からだはどのように動いているのだろう? からだを科学的に学ぶことは、自分を大切にする第一歩。

ユネスコ編「国際セクシュアリティ教育ガイダンス」にもとづいた包括的性教育のための絵本シリーズ、刊行開始!

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●壊れた世界を立て直すために
コロナが暴く支配と抑圧――生の蹂躙に抗う(唯物論研究年誌第26号)
唯物論研究協会[編] 3,500円(税別)

補償なき時短や休業はては解雇を迫られる非正規労働者、障害児・者とその家族……コロナ禍は、さまざまな領域に存在する矛盾や抑圧をあぶりだしている。「社会的弱者」に牙をむく現状を見据え、抵抗と変革の基盤を探る。

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●特集=ジェンダー平等と自治体
季刊 自治と分権秋号 no. 85 1,000円(税別)

●首長インタビュー(八板俊輔さん 鹿児島県西之表市長)●日本のジェンダー平等と地方自治体の課題(辻村みよ子)●自治体職場における女性活躍とジェンダー平等の実現に向けて(清山玲) ほか

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●特集=シンポジウム「NHKに公共放送の役割を果たさせるために」
放送レポート11月号 no. 293 500円(税別)

●NHKに公共放送の役割を果たさせるために(稲葉一将・佐藤真理・砂川浩慶・長井暁・醍醐聰)●『主戦場』上映差止訴訟本人尋問を傍聴して――訴えの目的は「黙らせること」(岡本有佳) ほか

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●特集=学校統廃合で地域の未来は
月刊 クレスコ11月号 no.248 500円(税別)

過疎化や財政危機、競争主義的な教育観などを口実に、全国各地で学校統廃合が推進されてきた。しかし、それが子どもたちや地域にもたらす影響は検証されないままだ。子どもたちの願いに基づく学校と地域のあり方を考える特集。

【話題の本】NHKで『差別はたいてい悪意のない人がする』紹介予定

8月に刊行した『差別はたいてい悪意のない人がする――見えない排除に気づくための10章』(キム・ジヘ 著)が、NHKハートネットTVで紹介されます。番組も本も要チェック!

【イベント】『#MeTooの政治学』刊行記念イベント ほか

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★ 『#MeTooの政治学』刊行記念イベント ★
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新刊『#MeTooの政治学――コリア・フェミニズムの最前線』(鄭喜鎭 編)の刊行記念イベント。本書の訳者と監修者にお話をうかがいます。

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★ 故・半藤一利さんの『焼けあとのちかい』に学ぶ ★
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1月に亡くなられた半藤一利さんの絵本『焼けあとのちかい』(大月書店)の朗読&トークイベントです。

【お知らせ】まもなく終了! Readin' Writin' 大月書店フェア

東京・田原町のReadin' Writin' BOOKSTOREで展開中の大月書店ブックフェア
「ジェンダーと多様性を考える」。10月31日(日)までです。お近くにご用のある方は、ぜひお立ち寄りください。

【編集後記】

日本でもジェンダー平等や性の多様性への関心が高まり、家庭での性教育のニーズに応える書籍が目立つようになりました。とはいえ、生きることと不可分の「性」の学習は、どんな家庭の子どもにも人権として保障されるべきことで、本来ならば学校教育のカリキュラムにしっかりと位置づけてほしい。そんなことを願いつつ、今月刊行スタートの『人間と性の絵本』シリーズを鋭意製作しています。

子どもたちの未来、日本社会の行く末がかかった衆議院選挙がいよいよ目前。有権者の方々はお忘れなく投票を!(子)

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