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イルカやシャチと水族館

「狭い水槽で可哀想」「海に逃して」
水族館のイルカやシャチに関して、この様に言ってくる人が居ます。水族館のイルカやシャチに対して、どの様な印象を持つかは知ったこっちゃ無いです。しかし、ただ何も考えずに、水族館に対して、この様な意見を言うのは浅はかとしか言えません。自分も専門家みたいに詳しいわけでは無いですが、少なくとも、ただ水族館を批判する人よりは賢いはずです。

イルカやシャチを海に逃せない理由

海に逃しても生きていけない

水族館で飼育されているイルカやシャチは、野生で生まれた個体でも無い限り、野生で生きていく術を知らないはずです。水族館で飼育員に餌を貰い、人に慣れてしまった個体が、野生で生きていくことは厳しいはずです。
「野生復帰のための訓練をする」という方法もありますが、その方法が確立されてもいないのに、飼育されていたイルカやシャチを海に逃しても、結局は生きていけないので、可哀想な結果になるでしょう。それでも、「可哀想だから海に逃して」と言えますか?それとも、「海に逃して」と言う人は、「自然の中で死んでいくのが素晴らしい」という美学でも持っているのですか?

ベルーガ(名古屋港水族館で撮影)
イルカやシャチを海に逃したことで
生きていけなくなったら、
「可哀想」じゃないのですか?

逃す場所に問題あり

野生復帰の訓練が成功したとしても、イルカやシャチを逃す場所にも問題があります。人の住む地域の近くであれば、人に慣れているため、人に近づいて様々な問題(漁業で獲れた魚を食い漁る、船と衝突する etc.)を起こす可能性もあります。また、逃す場所には既に生態系が存在しており、新たにイルカやシャチを放つことで、イルカやシャチが外来種となり、その生態系が崩壊する可能性もあります。

シャチ(名古屋港水族館で撮影)
元々シャチが生息しない地域に放たれたら、
そこの生態系は崩壊するでしょう。

責任を持って最後まで飼いましょう

ペット等にも言えることですが、イルカやシャチを無責任に海に逃すことは、いわゆる飼育放棄に繋がります。散々「最後まで責任を持って飼いましょう」と言われているのに、何も考えずにイルカやシャチを海に逃すのでは、あまりにも無責任じゃありませんか?

何故イルカやシャチだけ?

これは単純な疑問ですが、何故イルカやシャチだけ「海に逃して」と言うのですか?
大きいから?ならば、水族館のサメや動物園のゾウは逃さなくても良いのですか?

水族館のジンベイザメ(海遊館で撮影)
サメも大きいですよ


賢いから?ならば、水族館のアシカや動物園の類人猿やゾウは逃さなくても良いのですか?

動物園のゾウ(ズーラシアで撮影)
ゾウも賢いですよ(しかも大きい)


色々と矛盾してんだよ。ちゃんと説明して下さい。

水族館だって頑張ってる

今時の水族館では、動物福祉も考慮して、飼育生物の健康や生活の質を向上させるために、色々と工夫している施設が大半でしょう。例外も残っているとは思いますが、少なくとも、全ての水族館が工夫していない訳では無いはずです。
イルカショーだって、ただの娯楽では無く、イルカに指示を覚えさせることで、健康管理等をしやすくする目的もあるはずです。
イルカやシャチの飼育に反対する者は、追い込み漁に反対している者も多いです。追い込み漁に色々と問題が存在するのは分かりますが、その場合に批判すべきは追い込み漁であって、水族館そのものでは無いはずです。

そもそも手遅れ

これらの理由から、イルカやシャチを海に逃すのは厳しいでしょう。イルカやシャチを水族館で飼い始めた以上、どれだけ水族館が嫌いでも、今となっては「水族館を廃止しろ」なんて言っても手遅れです。
水族館は単なる娯楽施設では無く、飼育生物の保護・繁殖によって絶滅から守る役割や、自然教育の役割も担っています。その役割を果たす上でも、水族館は必要不可欠な存在です。

人間社会の縮図?

イルカやシャチの問題を通して思うのは、「この問題には人間社会の問題が反映されているのでは無いか」ということです。

偏った見方

水族館のイルカやシャチは、「水槽の中で自由が無い」と言われがちです。しかし、広い海と比べれば行動範囲は狭いものの、安定して餌を貰えるうえに、天敵も存在せず、体調が悪くても即座に対応して貰える環境です。自然界では、行動範囲は広いですが、自力で生きていく必要性が飼育下より高くなり、餌を自力で調達し、天敵から身を守る必要がありますし、体調が悪くても治療して貰えません。自然界は「自由」というより「放任」に近いでしょう。飼育下か自然界、どっちが良いと感じるかは人によって違うとは思いますが、少なくとも「イルカやシャチを海に逃せ」と言っている人の大半は、自然界のデメリットを考慮しておらず、偏った側面しか見ることが出来ないのかもしれません。

自由の履き違え

また、水族館への批判・誹謗中傷を「言論の自由」と主張する者もいるでしょう。しかし、先述の通り、動物福祉の向上を目指して、水族館だって色々と工夫しています。それなのに、水族館を批判・誹謗中傷するのは、理不尽以外の何者でもありません。自己中心的で、他の存在を平気で傷つける、こんな心ない「言論の自由」を認めるくらいなら、言論統制した方がマシです。
批判・誹謗中傷に限定せず、自分のことしか考えず、平気で他人や他の生物の権利を侵害し、傷つける者も多いです。それを「自分の自由」と履き違える者も多く、この水族館の件は、それを象徴しているのかもしれません。

ただ、否定的な意見により、議論が活性化することも想定されるので、その場合は一概に「批判するな」とは言えないかもしれません。
ただし、誹謗中傷は辞めましょう。
イルカやシャチと水族館の件は誹謗中傷です。

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