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東大生は首都圏集中しているのか?

はじめに


最近の東大生は、東京をはじめとする首都圏の中高一貫校出身者が多く、多様性が失われている、といった言説をよく見かける。まるで、かつては全国津々浦々から秀才が集結していたかのような言い方である。しかし、昔の東大合格者ランキングを見ると日比谷高校など首都圏の公立高校が上位を占めており、むしろ昔のほうが首都圏に集中していたのではないか?という仮説を持った。

そこで本記事では、東大合格者に占める各地域の割合の推移を過去70年間(1955年~2020年)で確認する。

結果

結果は以下の図のようになった。図1は首都圏と東京出身者が、東大合格者に占める割合である。

図1:東大合格者に占める割合(首都圏・東京)

図1から言えることは、以下のとおりである。

・1950年代~1960年代前半は、東京出身者が40%以上占めており、50%弱を占める年もあった。
・しかし1960年代後半以降、東京出身者の割合は一貫して減少を続け1988年には27%まで落ち込んだ。
・しかしその後は東京出身者の割合は再び増加するようになり、現在では40%弱を占めている。
・首都圏出身者の変化も東京出身者の変化と同様、1960年代~1980年代:減少、1990年代~現在:増加という推移であるが、東京出身者ほど増減は激しくない。

続いて、図2で東京以外の地域が占める割合の推移を確認する。

図2:東大合格者に占める割合(東京以外)

このグラフより言えることは、以下のとおりである。

関西:1980年代にかけて割合は7%から最大21%(この年は東大京大ダブル受験が可能だったので、例外ではあるが)へと大きく成長した。その後も高い割合を維持している。
神奈川:1950年代は約5%だったが、一貫してに割合を伸ばし現在では10%を占める。
九州:1980年代まで増加を続け、その後はやや減少している。
中国、四国:一貫して微減し続けている。

まとめ:東大生は首都圏集中しているのか?

・1960年代から1980年代までの東京出身者の割合低下は、関西や九州、神奈川の割合増加が要因といえる(つまり灘やラサール、聖光など中高一貫私立の発展である)。
・そして、1980年代以降の東京出身者割合向上は、中国・四国・九州の割合減少が要因である。経済的理由で地元志向が高まったことで、これらの地域の進学校が相対的に落ちたからだろう。

現在の東京/首都圏出身者の割合は、1980年代に比べると確かに増加しているが、1950年代60年代に比べれば低い水準にある。そのため「昔は多様性があった」という主張は、昔を1980年代とするならある程度正しいが、もっと昔は今よりも多様性は低かったというのが結論である。

※グラフ作成にあたり、「進学校データ名鑑」というサイトを活用した。https://www.shindeme.com/record/univ/tokyo/y1950/

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