火星に来て変わったこと
こんばんは。はじめてお手紙します。今週のお題は「火星に来て変わったこと」でしたね。
わたしはこれまで、問いのない答えの生き方をしていました。でも、ここへ来てから、答えのない問いの生き方に変わった気がしています。
だから、誰かと仲違いしても、苦しいと思わなくなりました。地球ではすぐに気になり過ぎて「消えてしまえばいいのに」と苛々していたのですが。
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あの頃のわたしは執着がひどくて、人間関係ばかりがギスギスしていました。なにもなく平穏な時期は、無かったんじゃないかな?
わたしにとって「この人はだめだ」という答えは、そこに至るきっかけなんて、ほんの些細なものばかりだった気がします。むしろ「目も合わせたくないほど」という強迫観念ばかりが膨らんで、鬼の形相になっているわたしがいました。
挨拶だってしたくないし、顔も見たくない。
目を合わせなくなった人たちの数が、どんどん増えていく。
相手が居たたまれなくなるまで無視し続けて、居なくなると安心していました。そして「わたしの気に入らない人は、必ず居なくなる」とすら自慢していました。
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贅沢な鬼だったと思います。
だから、周囲から猛烈な鬼退治にあってから、名前も捨てる覚悟でここに渡ってきました。贅沢のつけは大きかった。
火星に逃げてきたわたしを待ち受けていたものは、いろんな意味で「虚無」でした。あらゆるものが瓦解した、生きることを目的にシフトした場所でした。
どれだけ甘えていたんだろう?人のせいにして思い上がっていたんだろう?
誰かがどうとか、そんなことを考えあぐねていた過去は、愚かすぎました。
「答えがある」という自信は、ただ自分を誤魔化していただけでした。
自身のエラーを正当化し続けてずっと忘れていたこと、それは「どうしてそう拒むようになったのか」という問いでした。拒むという目的にばかり集中するあまり、相手の声を聞こうとすらしていなかったのです。
相手が呆れ返って、わたしの前から居なくなるのも無理はありませんね。
火星には正解がない。間違った答えというものもない。すべてが建設中で、竣工する日は訪れそうにない。だからこそ、開拓に夢中になる人がいつも溢れ返っているのです。みんな問い続けているのです。
まさにマーズ・ドリーム。
わたしは火星という夢の中で、目覚めた気がしています。
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