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無職、ひとり焼肉ライクにて決意を新たにする。

初めて行ったが、とんでもない空間だった。非常にシステマチックな焼肉屋。旨い肉、スマホで注文、水はセルフ。安く美味しい肉を提供するための、合理性の塊みたいな店だった。

もともと駅の近くにあるのは知っていた。しかし、私はそこまで焼肉が好きではないし、1人で焼肉もなんだかなぁという理由で敬遠していた。

しかし、今日の私の境遇。猛暑の中屋外での派遣のアルバイトを終え、明日に面接を控えた無職の私。3ヶ月目の求職期間を迎え、未だ内定はいただけず。會社様々からのお祈りの連続に世間から爪弾きにされたような気持ちになる。そんな惨めにとぼとぼ帰途していた私を照らしたのは「ひとり」焼肉ライク。店の前で立ち止まり一瞬考えたものの、何故か今日は吸い込まれるように入店した。

がっつり8時間働いた後に焼肉で精をつけたかったのかもしれない。明日の面接に向けて、肉で気合いを入れたかったのかもしれない。もしくは週末しっかり働いた私へのご褒美か。

しかし1番惹かれたのは、「ひとり」という部分。なぜか今の私の境遇とぴったりのような気がして、その字面を見たとき思わず嬉しくなった。

カルビとホルモンのハーフ焼肉定食と、追加で豚トロを注文。しっかりご飯大盛りを2杯食べて1,500円。正直もっと早く来ればよかったと後悔した。空腹や疲れも相まって金額以上の満足感が得られた。今日ばかりはスマホを眺めながらでなく、しっかり飯に集中した。美味しかった。因みに私は豚トロが好物なのだが、ライクの豚トロは私の舌の琴線を太いバチでかき鳴らしてきた。脂身がそこまで多くなく、さくさくと噛める豚トロ。美味すぎた。

しかし店の奥の方から何やら誰かの「おげおげ」嘔吐く音が聞こえた。少し目をやるとレモンサワーを飲みすぎているお客の様だった。吐瀉物は出ていなかったが、どうやら喉につっかえたらしい。日曜の晩に豪勢だなと視線を自分の網に戻す。しばらくの間豚トロの焦げ目に集中していると、他のお客もレモンサワーをガンガン飲んでいた。チェーンなのにこの店はよほど旨いレモンサワーを出すのかと訝しんでいると、「レモンサワー飲み放題500円」の張り紙があった。


私は明日面接を控えている。更に朝は就職エージェントとの面談もある。飲んでいいはずがない。何しろ先程は生ビールも我慢したではないか。今日は酒でなく飯に集中すると決めたではないか。実際それが功を奏しているではないか。無職が焼肉を食んでいる事実だけでも軽犯罪なのに、そこに酒があっていいはずがない。

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私はスマホを開き、そっとご飯のおかわりのボタンを押した。もちろん大盛りだ。

早く就職しよう。そしてそのお給金で今度こそ、焼肉を食んでビールやレモンサワーをガンガン飲んでやるのだ。明日も気張ろう。


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