【感想文】生成AIで世界はこう変わる
近年、生成AIの発展がめざましい。動画や文章、画像生成など、いくつか種類があるが、なかでも言語生成AIの進歩速度は顕著である。近時の戦争では大統領演説のフェイク動画が流布されるなど、軍事的な利用も現れはじめた。
その進歩速度は、AI研究・開発の分野においては、1か月前の技術は「はるか昔」の技術と言われてしまうほどだそうだ。
このAIは、世界に、また、人類に何をもたらすのか。
本書は、東京大学大学院工学系研究科に属し、人工知能分野における強化学習の研究に従事する今村氏が、現時点での生成AI技術の概説したうえで(テクノロジーのわかりやすい解説)、AIが労働に与える影響、人間の「創作」に与える影響、生成AIと歩む人類の未来について考察したものである。
生成AIは、世界に、また、人類に何をもたらすのか。
将来、人間の営み(主に労働や創作活動)がすべてAIにとって代わられてしまうのではないか、という得体の知れない不安感も漂いつつある。
しかし、AIが文章やイラストを生成できたとして、その生成物をどのように人間社会に活用するか、どのように評価し、価値づけを行うのかは人間にしかできない。AIはあくまでも道具であり、人類に進むべき道や宇宙の真理を示してくれるものではない・・・と私は思う。
AI技術が進歩するにつれ、「人間」を観察する(見つめなおす)新たな視点がもたらされる。つまり、「AIと対比して人間を理解する」という視点だ。
近い将来の予測も難しい現代において、また、あらゆる価値観が認められうる現代においては、「われわれが何を望むか」ということが非常に大切な問いになってくるものと思う。AIを何に使うのか、どのように位置づけるのか。問いに対する答えによっては、AIは、人間の首を絞めることにもなろうし、人間が幸福を得る一助にもなるのであろう。