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最終回の予定は? シリーズを長続きさせる秘訣は? IWGP最新作『炎上フェニックス』大特集!

小説家 石田衣良が、若い仲間たちと大人の放課後をテーマにお届けする、自由気ままな番組『大人の放課後ラジオ』、通称オトラジ。
毎回映画・マンガ・本、音楽など最新カルチャーから、恋愛&人生相談、ほんのり下ネタまで、日常のひとときをまったりにぎやかにするエイジレスでジェンダーフリーなプログラムをお届けしています。

そんなオトラジで2021年9月23日に放送された「IWGP最新作『炎上フェニクス』を語る」放送回。

IWGPシリーズ最新刊発売記念として、執筆の裏話や創作の秘訣などを大公開。ファン必見の裏話や、「シリーズ作品を長く続けるポイント」など、ここでしか聞けないエピソードに早川洋平武井ひろなも大興奮!

大盛り上がりだった収録を、ぜひテキストでもお楽しみください!

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【炎上フェニックス 池袋ウエストゲートパーク17】

――炎上、上等! 
ストーカーと化したADが自殺。「悪女」「尻軽」と大炎上し焼かれた女子アナ。
マコトが接触したネット放火魔のなかに真の“モンスター”が存在した!
ネット社会の闇にGボーイズが打った手とは――
半グレ集団に脅かされる“パパ活女子”、女性ばかりを狙う“ぶつかり男”、トラブルに巻き込まれた“デリバリー配達員”……
現代を鮮やかに切り取る4編収録。(文藝春秋BOOKSより引用)


石田 ついに発売になりました、IWGP(以下、池袋)最新刊。

早川 なんともうシリーズ17冊目になるんですよね。

石田 あっという間だったなあ〜。

ひろな 池袋シリーズが衣良さんのデビューのきっかけということは、小説家になってからほぼ毎年出版されているようなペースですよね。
時代小説ではない作品でここまで連載が続くって、あまり他にない印象があります。

石田 なかなかないかもね。小説誌に掲載しやすくて読者も読みやすい、読み切りの連作形式が良かったのかもしれない。

早川 今日は最新刊の裏話に触れつつ、書き手に向けた執筆の秘訣を公開していくオトラジの人気企画『小説家スペシャル』のような感じで、創作の秘訣も訊かせていただきたいと思っています。

ひろな いいですね〜。

早川 今回この4つのテーマの話が収録されていると思うのですが、そのうちの一つが「炎上フェニックス」なんですよね。
単行本のタイトルを「炎上フェニックス」にされるのは、いつ頃から決められていたのですか。

石田 原稿を書いている段階でもう「これにしよう」と思っていた。今回は一番初めに収録したパパ活か、4本目のネット炎上の話がポイントになるかなあと思っていて、結局4本目になったんだよね。

ひろな パパ活の話、インパクトありましたね〜。
最新刊を読んで、単純にとっても面白かったのと、衣良さんの小説らしく現代社会を映し出すようなテーマがふんだんに盛り込まれていてすごく刺さりました。
今回のテーマで言うと「パパ活」「Uber eats」「女性限定の当たり屋」「ネット炎上」……それぞれの目からウロコな実態についても書かれていて、勉強になりました。

でも最終的に、この炎上フェニックスというのがすごく前向きなタイトルだと分かったのが良かったです。

石田 そうそう、それも最後まで読んでもらえるとわかるんだよね。

早川 炎上フェニックスはネット炎上の話ですが、ぼくも十数年ネットでコンテンツを公開しているとそれなりにアンチコメントをもらうことがあって。
インタビューでの言葉遣いに対して「不遜だ」みたいなレビューが書き込まれていたりするんですね。

石田 ええ、そうなの?

早川 作中にアンチをする人に会いにいくシーンがあったと思うのですが、そこで「アンチも基本は普通の人で、決して怪物ではない」というような表現をされていて。
確かにアンチにも色々いて、どんなに言葉で傷つけてきたとしても実は普通の人だったり、本来自分のファンだけれど一部分だけ切りとって言葉を発している人だったりするわけですよね。
読んでいくうちにそれをしみじみ感じましたし「怪物ではない」という表現に救われた気がしました。

ひろな 毎回感じるのですが、センシティブかつ時代にマッチしたテーマだと、自分に重ねて読むことができますよね。

石田 せっかく書くならその時代についてきちんと残しておきたいと思う。池袋のような短編だと、写真を撮るみたいに時代が抱えた問題を切り取っておけるから良いんだ。

ひろな これも読んでいて感じたのですが、文章のテンポが急にグッと変わる印象があって。これまでゆっくり歩いているようだったのが、ダッシュするぐらい急激に展開が進んでいくポイントが結構あったように思いました。
これは衣良さんの小説の書き方の特徴なんですか?

石田 これは小説全般というより、池袋シリーズの書き方の特徴なんだ。一番最初に池袋を書いた時、カナダのピアニスト、グレン・グールドの演奏にハマっていてね。
ゆったりとしたテンポが急に切り替わって激しくなる……ぼくもういうふうに小説を書きたいと思って意図的に緩急をつけたのが、今でも反映されているんだ。

ひろな だからなんですね。読んでいく上でのワクワクというか「何が起こるんだろう?」という求心力みたいなものがあると思っていたんです。

石田 最初の頃は緩急を意識していたけれど、今は特に何も意識しなくてもこうなる。
それに池袋ではあまり無駄なことを書きたくないという気持ちがあるから、そこもテンポの良さに繋がっているのかもしれない。

早川 小説家は作品に自身を強く投影するタイプとそうでないタイプがいて、衣良さんは後者だと以前おっしゃっていました。とはいえ、池袋シリーズには衣良さんらしさが色濃く出ている感じがしていて。
キャラクターの性格で言えば、マコトの温かさとタカシのクールさ、そしてどちらにも見られる優しさとか。それから、以前衣良さんが絶賛されてオトラジでも最近取り上げた『戦争は女の顔をしていない』の話も出てきたりして。
そういった部分は、衣良さんとしてはどう感じますか。

石田 自分でも、デビュー作というのもあってかなり素に近い部分が出ていると感じるよ。
書き続けていくにつれてだんだんと自分を隠したり「自分以外の人」の書き方を身につけていくものだけれど、デビュー作はありのままに近い自分が出てしまうものだからね。

そういう「ライブ感」がこのシリーズの良さなのかもしれない。

ひろな そういうところから池袋の躍動感が生まれているのかぁ〜。

今回もおなじみのマコトの1人語りで始まったと思うのですが、1作目の構想段階で既にこの書き出しパターンにしようと決めていたのですか。

石田 そう。池袋の縛りとして「書き出しをマコトの1人語りにする」「1本につき1曲、クラシック音楽を絡める」という2つを決めているんだ。それ以外は自由に書く。

ひろな そうそう! クラシック音楽もいろんな曲が出てきますよね。

石田 重々しくて複雑な曲よりも軽やかなのが好みだから、選曲に悩むといつもモーツァルトかバッハになる。

ひろな 音楽とストーリーを結びつけるというのはすごく斬新で面白いなぁって。

早川 読者としても、ストーリーを味わうのはもちろんのこと、音楽、時代に沿ったテーマ……色々な楽しみ方があるシリーズだと感じます。

石田 あれこれ読みどころがあるよね。
20年続いた理由としては、2つのポイントがあると思っていて。
まずは、キャラクターの関係性が現代的だったこと。

早川 「現代的」、ですか。


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