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小説家になりたいあなたへ! 「書き続けられない時はどうすればいい?」石田衣良が徹底回答

「小説家 石田衣良が、若い仲間たちと大人の放課後をテーマにお届けする、自由気ままな番組『大人の放課後ラジオ』、通称オトラジ。
毎回映画・マンガ・本、音楽など最新カルチャーから、恋愛&人生相談、ほんのり下ネタまで、日常のひとときをまったりにぎやかにするエイジレスでジェンダーフリーなプログラムをお届けしています。

そんなオトラジで2021年 5月20日に放送された『プロ作家・石田衣良が「書き続けられない」お悩みに答えます!!』特集。
文章に関わる多くの方が陥る「書き続けられない」という悩み……。
石田衣良が語る「続けられない最大の理由」には、オトラジメンバーの早川洋平武井ひろなも思わず目から鱗!

また、視聴者の皆様から寄せられた「すごい作品と出会うとその作家の手法を丸ごと真似したくなる「小説家を目指しているものの、毎日焦ってしまって苦しい」「風景描写と心理描写を交互に描くと文章がぎこちなくなるのをなんとかしたい」……といったリアルなお悩み・ご質問にも徹底回答。

大盛り上がりだった収録を、ぜひテキストでもお楽しみください!

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石田 最近は2人とも毎月オトラジのKindle版用にエッセイを寄稿しているけれど、書いてみてどう?

ひろな 私はいつも締切前に超ギリギリで書いているのですが(笑)、執筆自体は楽しいです。

石田 そうなんだ。楽しくもありつつ、はじめに1本書きあげる時って「壁」を感じなかった?

ひろな めちゃくちゃありましたよ! 何なら今でも毎月感じています。締切やボリューム感は決まっていてもテーマがギリギリまで決まらないから、書き上げるのに一苦労。

石田 なるほど、テーマが決まっていない苦しみがあるんだね。

ひろな そうなんですよ。眠る前のまどろんでいる時間にぼんやり思いついて、それをなんとかテーマとして書いていくことが多いです。

石田 まどろみの時間って結構いいアイデアが浮かんでくるものだよね。
洋平くんはこれまでも別の媒体でエッセイを書いてきたし、かなり慣れているんじゃないかな。

早川 いやいや! 自分のエッセイについて、どうしてもガジェットや健康についてのテーマが多くなりがちですし、長々しくなってしまうのも気になって……。「これは本当に面白いのだろうか」という不安は常に感じています。

ひろな 自分の書いた文章って、テンポが悪かったり、同じことを何度も書いているような感じになったりするんです。そのうちだんだん書いている日本語が正しいのかよくわからなくなってくる(苦笑)。これって、どうすればいいんでしょう?

石田 「テンポの悪さ」「同じことを何度も書いているような気になる」……いい質問だね。これにはちゃんと答えがあります。
小説でもエッセイでも「テーマは2回主張すると良い」。まず1回テーマを書く。それを言い換えてもう1回主張する。
たとえば「人はみないつか死ぬ」をテーマに書くとしたら、まず「人はみないつか死ぬ」と書く。それから、文章の中で「これだけ健気に頑張っている人も死んでしまう」「全く悪いことをしていない人も死んでしまう」「病気の子どもでさえあっけなく死んでしまう」というように具体的なことを書いてつなげる。
1回目は抽象的でよくて、2回目はできるだけ具体的な驚きの事例を出せると良い。そうすると、結局は同じことを書いているけれど2回目は「テーマを具体的に伝える説明」として成立する。この「テーマを噛み砕いていろんなバージョンで書く手法」は、小説でもエッセイでも使える王道のテンプレートのひとつなんだ。

早川 なるほど。「同じことを何度も書いているような気になる」というのを不安に思わなくてもいいんですね。

石田 そう。同じことについて書く回数をちゃんとカウントしておいて、「ここで1回目を書いて、ここで2回目を書いた」と自分の中でまとめていれば大丈夫。「自分が何を書いているのか分からない」状態におちいらないためにきちんとカウントはしておこう。それから、3回も4回も繰り返し書くとつまらなくなってしまうことが多いから、2回で留めるのがポイントだと思う。

ひろな なるほど〜。
ふと思ったんですけど、たとえば衣良さんは「人はみないつか死ぬ」というテーマにたいしてすでに自分の中で「こう思う」という結論を持っていて、書き始めるんですか?

石田 そうだね。そういう大きなテーマだったら「最終的にこの方向へ持って行こう」という大きな流れは考えてある。その上で、個人的には、最初にテーマをバーンと打ち出すよりかは「あんなことやこんなことや切ないことや考えることがあって、結論こう考える」という構成にしたほうがいいと思う。

ひろな 文章の書き方をかみ砕いていくと、やはり王道の型というものがあるんですね。

石田 そうそう。もちろん、それを使えるようになったら壊していい。

早川 「守破離」ですね。この「破るタイミング」は、自分で決めていいものでしょうか。どのタイミングで書き方を変えるのが良いでしょう。

石田
 エッセイでも小説でも、大体3、4回同じパターンで書くと飽きてくる。そうしたらすぐ変えて大丈夫。文章って意外と上達が早いし、1度使った型は忘れないものだから、あまり気にせずにどんどん新しい技を覚えていけばいいよ。

早川
 そうなんですね。
話しているうちに、問答みたいですが「書き続けるためには書き続けないといけない」のだとわかってきました。

石田 そうだね。ただ「書き続けるぞ」っていう使命感なんて持たなくていい。執筆って、すごく時間がかかるもの。長い時間「書き続ける」だとか「絶対プロになる」みたいに自分を追い詰めてしまうとすぐに潰れてしまうから、楽に付き合うほうがいい。……なんだかちょっと、恋愛に似ていない?

ひろな たしかに〜。すごく好きだと続かないし、付かず離れずのいい距離感を保ちながら続けるのがいいんですね。

石田 今回のテーマのポイントである「書き続けられない時」だけれど、「同じことを何度も書いているような気になる」というのも含め、書き続けられない最大の理由が「疑い」なんだ。

ひろな 「疑い」ですか?

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