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8月14日、バガテル=取るに足らないもの、に、見る、ベートーヴェンの深淵...

鍵盤楽器の巨匠、アンドレアス・シュタイアー(1827年製、コンラート・グラーフのピアノのレプリカを弾く... )と、ピリオドのチェロの巨匠、ロエル・ディールティエンスによる、ベートーヴェンのチェロ・ソナタとバガテル。ちょっと妙な組み合わせ... なのだけど...

ベートーヴェンの中期、1815年に作曲された連作のチェロ・ソナタ、4番と5番に、初期と後期に作曲されたピアノの小品による11のバガテル(Op.119)を挿み、後期、1823年から翌年に掛けて作曲された6つのバガテル(Op.126)で締めるという構成... いや、他に見ない構成で、どういうこと?となるのだけれど、バガテル=取るに足らないもの、が、テーマか?

"楽聖"なんて呼ばれるものだから、その音楽、どうしても気難しいイメージが纏わりついてしまう。けど、ベートーヴェン、その人の人生を丁寧に追えば、悲喜交々、人間臭い姿が浮かび上がってくるわけで、当然ながら、そうした面を反映した音楽もある。で、その象徴が、バガテルか...

いや、人間、ベートーヴェンの、お茶目なところ、表情豊かなところ、さり気なく引き立てる、バガテル... おもしろいのは、4番と5番のチェロ・ソナタにも、そんな表情が窺えて... 特に4番の自由さ!ソナタとしてかっちりと音楽を構築するのではなく、思いの向くまま、チェロが歌い... そこからこぼれ出す気の置けない雰囲気... ベートーヴェンの音楽を"楽聖"という呪縛から解き放つようで... 解き放たれて、作曲家、ベートーヴェンの深淵が見えてくるようでもあり... 取るに足らないものこそ、実は深い?

そんなベートーヴェンを綴ったシュタイアー、さすが鬼才!1827年製、コンラート・グラーフのピアノのレプリカを味わい深く鳴らしつつ、ちょっと控え目のようで、バガテルのいたずらっぽさを卒なく引き立てる。そして、ディールティエンスのピリオドのチェロの飾らない響き!この絶妙な無邪気さが、尊い。いや、取るに足らないところに感動が溢れる。

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