3月27日、旧教から新教へ、教会音楽のうつろいを掘り起こす、"REFORMING HYMNS"... そこから、溢れ出す、やさしさ...
ボー・ホルテン率いる、デンマークの古楽ヴォーカル・アンサンブル、ムジカ・フィクタが、16世紀、宗教改革が進むデンマークで歌われた賛美歌の数々を取り上げる、"REFORMING HYMNS"。
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17世紀、宗教改革(1517)により新たな教会音楽が模索された時代、新教へ移行するデンマークの状況に注目した、"REFORMING HYMNS(改革派賛美歌集)"。神学者にして牧師、ハンス・トミソン(1532-73)が編纂したデンマーク語詩篇集(1569)、デンマーク王の宮廷副楽長、ペーザスン(ca.1583-ca.1623)のモテットと賛美歌集『魂の牧場』(1620)などから、デンマーク語による賛美歌の黎明を捉えつつ、そこへと至る道筋も網羅... フランドル楽派の大家、ラッスス(1532-94)に、ローマの巨匠、パレストリーナ(ca.1525-94)、ルターと交流を持ったドイツ・ルネサンスの作曲家、ゼンフル(1486-1543)、プロテスタント、最初の賛美歌集を出版したヨハン・ワルター(1496-1570)らのミサ、モテット、そして賛美歌、幅広く取り上げる。
もうね、軽く引くほどにマニアック... なのだけれど、普段、見過ごされがちな旧教から新教へ、教会音楽のうつろいを丁寧に掘り起こす、"REFORMING HYMNS"... 幼い頃からしっかりとトレーニングされたプロフェッショナルの聖歌隊が歌った聖歌から、教会に集った音楽のアマチュアたる会衆により歌われる賛美歌へ... その流れを追いつつ、賛美歌の、誰もが歌えるシンプルさを如何にして生み出すか?その試行錯誤にも迫り、普段、見落とされがちな宗教改革がもたらした教会音楽への影響、見事に捉える。で、そこに浮かび上がる、ポリフォニーからモノフォニーへの転換のもうひとつの背景... これまでとは違う窓から見つめる斬新さに、唸る。
という、"REFORMING HYMNS"を聴かせてくれた、ホルテン+ムジカ・フィクタ... まず、その真摯な歌声に惹き込まれる。ポリフォニーでは澄んだハーモニーを織り成し、モノフォニーでは素朴な表情を紡ぎ出し、旧時代から新時代へのうつろいを繊細に表現。で、そこから何とも言えぬやさしさが溢れ出す!いや、実際には苛烈を極めた旧教vs新教の対立があったわけだけれど、そうした歴史を呑み下し、達観へ至っての"やさしさ"だろうか... 21世紀、複雑怪奇の極みの中にある現代人にとって、この"やさしさ"が、深く、心に沁みるのです。
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