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12月10日、転換点、1948年、東側の音楽のパノラマの興味深さ...

ツォルト・セフツィク(ヴァイオリン)が率いる、ハンガリーの室内管弦楽団、エルデーディ室内管の演奏で、ヴァインベルクにバツェヴィチ... 東欧の作曲家の1948年を切り取る、"1948"。
DUX/DUX1802

近頃、よく目にする2人... ポーランド出身、ソヴィエトを生きたモイセイ・ヴァインベルク(1919-96)に、ポーランドの女性作曲家、グラジナ・バツェヴィチ(1909-69)。そして、このアルバムで初めて知った存在、20世紀、ハンガリーの作曲家、セルヴァーンスキ・エンドレ(1911-77)と、シュガー・レジェー(1919-88)。なかなかにマニアックな、20世紀、東側で活動した作曲家、4人による、1948年に書かれた4作品...

始まりは、セルヴァーンスキのセレナーデ。いや、思いの外、まったりセレナーデ感漂わせて、おもしろい。かと思うと、バルトークっぽい躍動感にも彩られ、バルトークばかりではないハンガリーの近代音楽、興味深く聴かせてくれる。続く、ヴァインベルクのヴァイオリンと弦楽オーケストラのためのコンチェルティーノは、ヴァイオリン・ソロが歌うテーマに魅了!ちょっと映画音楽のような佇まいがあって、惹き込まれる。が、恩師、ショスタコーヴィチを思わせる不穏さも聴こえてきて、ソヴィエトの音楽なのだなと再確認。いや、それ含めて、魅力的。

からの、シュガーのディヴェルティメント... バルトークのディヴェルティメント(1939)を思い起こさせるその音楽。しっかりとハンガリー流モダニズムを踏襲... どこか仄暗い牧歌性と、ワイルドに盛り上がるリズム、ハンガリーのローカルな音楽性、改めてカッコいいなと... で、最後は、バツェヴィチの弦楽オーケストラのための協奏曲。バルトークを洗練させ、オネゲルあたりに寄せる感じ?近代音楽としてよりセンス感じ、何気にゴージャス。いや、バツェヴィチのモダニズム、魅惑的。

という、"1948"を聴かせてくれたセフツィク+エルデーディ室内管。重心低めで、骨太な演奏を繰り出すその姿勢、まさに20世紀的... これもまた、ハンガリーの音楽性か... "今時"のスタイリッシュな"室内"ではない、20世紀のあの頃に還って生まれるガチ感、今、かえって新鮮かも... 何より、1948年の東側の音楽のパノラマの興味深さ!

第二次大戦が終結して3年目、1948年。それは、凄惨な戦争を乗り越えて、一歩を踏み出そうとしていた頃... だから、"1948"には、新しい時代への希望も聴こえてくる。一方で、東側では共産主義独裁体制が整いつつあり、ソヴィエトにおいてはジダーノフ批判が繰り出され、ヴァインベルクは窮地に陥っていた。そう、東側音楽界には冬の時代が到来しようとしていた。まさに、転換点を見つめる、"1948"。マニアックだけれど、この切り口の鋭さ、なかなか凄い。

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