107 プーチンに学ぶ:愚かであることぐらいしか幸せに至る方法を見つけられない

沈没の旗艦モスクワ、ロシア側の発表では1人死亡、当初完全に退避したと伝えていたが、安否を心配する家族の声が高まり、発表にいたる。
乗員27名が不明とも伝え、「船の存亡をかけた戦いの中で死者や不明者が出た」と説明。

日々口にする食物で我々の身体が形成されているように、我々は日々供給される情報で思考の核を形成する。
多くのロシア人がプーチンの正義の戦いを信じていることは、与えられる情報がそうであり、信じたい現実がそうであれば容易に成立する。
そして彼らは歴史上、地球上、慎ましやかな正義のイチ庶民として幸せのうちに亡くなる。

脳に直接コードを差し込み有線チューブから仮想現実を供給し続けるデバイスが開発されていない現代では、国民を幸せのうちに死なせるにはこれが最善の方法だ。
ロシアの庶民層が、かつての兄弟国に対し、残虐行為をいとわずジェノサイドを行う国の国民であることに自らの民族意識と国家帰属感情と普遍的ヒューマニズムの間で心を引き裂かれて死を迎えるよりは、我々は悪魔でなく天使であると伝えるプーチンは慈悲深い指導者であるといえるwww

アリはアリという生き方に疑問をもたず一心不乱に役割を全うするが、それは自らをアリだと自覚しアリとして生きていこうとしているからではなく、アリであることに気づいていないからに過ぎない。
アリは自らをアリであると自覚した時から、アリという実存を疑う、そこからアリはアリでないことの証明の獲得を目指すことにより、逆説的にアリであることを発見しようとする。それは苦しく茨の道であり疑いは晴れることはない。
しかし人間と同じように自らをアリと自覚した後も、実存疑義に惑わされることなく生を全うできる方法はある。アリである前に、食料の確保者、卵の守護者、黒アリとして別種のアリとの差異、地域に根差したコミュニティの一員であることで・・・・帰属や役割を与えられることでアリとしての実存疑義から逃れられる。

我々は役割や所属のうちで愚かであるまま死ぬべきで、国というフィクションを信じ、ここは我が国固有の領土です、とか、金メダルの数とか、「〇〇人スゴイ!」等々茶番のなかで一喜一憂して死まで時間を消費していけば、一部のヒューマニストのインテリが高所高段から語る根源的普遍的課題に立ち入る必要はないのだ。

プーチンはまさに凡庸な支配者であるが、独裁者たりえず凡庸ゆえに多くのロシア国民にとってよい指導者たろうとする。
その自我がムダなのだがプーチンレベルではこれがせいぜいだろう
彼を担いだロシア国民の弱さは、誰もが持ち得る共通項であり、権力を委託し脳みそを構造に預けている我々は、わざわざ、より今以上に、自己の選択権、裁量できる範囲を削り、自然以外の要素で人生を寄る辺なきものにしている愚を継続する以外に道はない。

もう今更、制度、経済システム、共同体、日常、安全保障、あらゆる要素で形成される構造という巨大な枠から離脱して生きていくことは非常に困難。

ハーメルンの笛の音に先導された子供たちはいつ目の前が激流と気づいたか?目の前が崖だと、歩く途中で気づいたが離脱できなかったか?
激流にのみこまれ、あるいは崖から落下している途中で気づいたか?

でも、いいじゃないか、皆死ぬのなら。誰かが助かり、誰かが死ぬ理不尽さは耐えられないが、みんな一斉に死ぬのなら許容する程度の倫理しか持ち合わせていないのだから

限られた現実の中で、フィクションのなかで幸せに死んでいくロシア国民を憐れむことはできない。
我々も似たようなもので、我々が事実のおおよそを知っているという前提でみるのは、それが可視化できている現実の範囲のほとんどだと思い込んでいるからで、枠外の可能性を想像できない限りは、存在しないかのように振る舞うしかない。

中世の人に現在の世界地図を見せて、これが事実だとどう証明するのか、彼らは容易に信じないだろう。
実は世界は量子もつれで構成されたパラレルな別世界があり、同じ空間に別のレイヤーで構成された世界が共存していることが証明され、
我々のところに未来人が来て、実は世界はこうでしたと全く現在と違う地図を見せられても誰も容易に信じないだろう

脳はそんなに優秀な器官ではない、繰り返し刷り込まれた事実と思わしき情報の蓄積を裾野のように広げ、少しずつ上積みしていくしかなく
活火山が爆発し、突然3000M級の山が出現するかのような突拍子もない事実に対し、平等に振る舞うことはできない。

どうやら世界を構築している巨大システムの構造や、脳がもつ神経回路の持つクセからして、フィクションに生きフィクションに死ぬしかなさそうだ。それが幸せに人生をまっとうする手段。そもそも幸せがフィクションなのだから

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