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秋になるとロマンは。

 優秀な科学者が、反物質の謎解明に近づいたとあった。宇宙を形成するものを解き明かす鍵になるんだそうな。科学に目のないかつての『科学と学習』愛読者は、素人ながらも難しそうな科学の深淵に、首を突っ込みたく焦れながらも遠巻きに記事を読んだのでありました。

【2023年9月28日 BBCニュースより】

 記事の一部を直訳してみた。
『反物質が落下するのではなく、重力に反応して上昇することを発見したら、私たちが物理学について知っていることは吹き飛んだ』
 なるほどぉ。私たちの知らないところで、科学者のみぞ目にしたすごいことが起こっているわけね。
 難しいことはわからないけど、それって世界は重力に従うものと抗うものとでできていて、目に見えない抗うものが反物質ということかしら? このジャンルをよく知らないくせににわか仕込みで猪突猛進、その先に『反世界』なる言葉が出てきたよ。物理学で使う語らしく、なんでも私たちの知る世界を構成している物質は基本的粒子で、反世界とは反粒子からなると考えられている世界なのだそうな。
 ね。科学の妄想心、かき立てられてくるでしょう? 何が何だかよくわかっちゃいないけど、わからないところがまたたまらない。惚れたあの子の謎に包まれたヴェールに阻まれたみたいで、めくって中を覗き込んでみたくなるでしょう?

 LINEで広告営業の職に就いていたって、パン屋を経営していたって、noteの企画部門で脳味噌に日々汗流していたとしても、私たちの目にするものは反物質ではない『物質』の、見て触れて理解できるものばかり。理解は自律的ではなく外圧で教え込まれているのかも知んないけれども、脇道話はさておいて「わかっている」ことが前提で地球と一緒に社会で回っているわけよ。そこに突然、実は「わからないもの」に支えられているのだよなんて言われた日には、これをロマンと呼ばずになんとする。

 話は変わるけど、山はとっくに秋の顔で、狭い県道を上下左右に抜けてくと、路上に栗のイガイガがかたまって落ちてるところがある。山栗の秋の大放出、この時期限定の出血大サービス。走るタイヤにブレーキかけて、避難所に一寸で済むから御免の駐車、こぼれ落ちた実を車に踏み潰される前にひとつふたつと拾い上げ。
 こちらはマロンの花ざかり。
 山道には『落石注意』の看板がかなりの頻度で現れるけれども、なんでないの? と疑問に思った。今どきの車のタイヤはきっと優秀で(今どきのものでなくても優秀だったか?)、栗のイガイガ踏んづけてもパンクしないのか? どうして『落栗注意』を促さない?

 落下する物質には、それを押し戻そうとする反物質がついてまわる。ロマンはマロンで落ちた実を重力に逆らって拾い上げさせようとする反発の力を誘発してくる。家に持ち帰ればマロンだって調理後口に放り込んで姿を失くす。消化されエネルギーに変わった動力がアンチマテリアル、か⁉︎
 ロマンは自分の尾を追いぐるぐるまわる虎の如し。「わからないもの」の理屈を今日もまた無心に無駄に追いかける。

 人生の旅が終わらないゆえん? 秋の夜もまた長い。



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