貧血の私と力強い母と(前半)
お母さんがんばれー
がんばれー。
青白い顔をした少女は弱々しく言った。
迎えにきた母親は
サドルに私を乗せ、
通学鞄をカゴに入れ、それぞれが落ちないよう支えながら自転車を押していた。
“また”お母さんに負担をかけてしまった。”
朦朧とした意識の中で
申し訳ない気持ちが頭に浮かんだ。
小学生とはいえそれなりに体重が増えてきた私を学校から家まで運ぶのは
中々の重労働だっただろう。
『何が”がんばれー”なのよ。
あなたこそしっかりしなさいよ。
お母さんは力持ちだから大丈夫よ』
私の言葉に呆れながらも心配な面持ちで母は、クスッと鼻で笑いながらそう答えた。
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4月のある日。
全校生徒が校庭に集まっていた。
新学期が始まる朝会の為だった。
私はその時間が好きではなかった、
というか、”得意”ではなかった。
全校朝礼は年に何度か行われていたが新学期の朝礼はとにかく長い。
校長先生の話から始まり、
表彰式や生徒会やら委員会やらの各種連絡事項が続く。
座って聞ければまだ良いのだが、
立ちっぱなしの時はとにかくキツい。
”早く終わって欲しい”
叶うはずもない願いをただ繰り返し頭の中で唱えていた。
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ようやく終わり解散の声が掛かった。
一斉に皆が動きだす。 少し遅れて一歩踏み出そうとした瞬間、 突如耳鳴りが始まった。
『あれ、ヤバいかも…』
“あの”予兆に気付く。
目の前がキラキラ光りだす。
周りの声が遠くなる。
バランスが取れなくなり、しゃがみ込む。
脳貧血だった。
(次回に続く)
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