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【松江ビアへるん】 島根を貴ぶビール

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地元への慈愛 ビアへるん

諸国を漫遊する時、貴方は何を思うだろうか。殊の外祖国への親しみを意識する人が多い中、長きに渡り世界を見てなお、異国日本を選んだ人物がいる。名を「ラフカディオ・ハーン」、松江の人々にはヘルン先生と親しまれていた。
彼は島根で英語教師をしつつ、島根の旧国名「八雲立つ出雲国」に因み自らを小泉八雲と名乗るほどに島根を愛したと言われる。

そんな彼をモチーフにしたビールブランド、それが松江ビアへるんだ。
世界を渡り歩いた後に日本に帰化したヘルン先生にあやかり、同じく島根を訪れる人々が島根の自然と食と文化に触れた時、島根の良さ、ひいては日本文化の深さを、一層感じられるようにという願いが込められ付けられた名である。このようなルーツを持つ松江ビアへるんは現在、レギュラービールとして4種、限定ビールとして8種展開されている。今回は2種のビールを紹介するが、どちらも島根の文化を貴び、島根県産の作物や料理を活かしたビールで、島根への愛をひしひしと伝えてくる。

島根を引き立てる柚子の味わい

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初めに紹介するのは「ゆずフレッシュ」だ。島根県産柚子(益田市美都町産)を使用した柑橘香るベルジャンホワイトスタイルのフルーツビールである。

元々ベルギー発祥のベルジャンホワイトは、今や日本やアメリカでも人気である。味わいはフレッシュで、まるで搾りたての柚子の様な風味が特徴的だ。

また、苦味はやや強めだが、最後に鼻を透き通る柔らかな酸味のある香りが堪らない一本であり、計らずも余韻を探して瞼を下げてしまったのは言うまでもないことである。

出来れば島根県料理の「鯖しゃぶ」や、日本海に沈む牡蠣と一緒に嗜みたい。一層香り引き立つに違いないであろう。

ほんのりと舌を刺す 島根の苦味

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ビアへるんの中でも最たる衝撃を受けたのは、「縁結びの神」大国主大神様が祀られる出雲大社に因む、焙煎マイルド黒ビール「縁結麦酒スタウト」である。このビールはWorld Beer Award2018 ミルクスタウト部門で日本チャンピオンに輝いた。

イギリスで人気のあった「ポーター」から進化したアイルランド発祥のスタウトは、英語で「丈夫な、頑強な、恰幅の良い」などの意味を持つ。文字通りふくよかな口当たりで、想像を絶する深いコクは月光至らぬ深海を彷彿とさせた。

ミルクスタウト製法で製造されていることもあり、ディープで黒光する表層とは対象的に非常にマイルドな仕上がりである。
口に含んだ瞬間、心地良い控えめな苦味に自然と狂喜し、それは甘いひと時にちょっとしたスパイスを提供するほどに丁度良い。願わくば、小さな主張をする麦芽のえぐみを、出雲名産の無花果や出雲大社でいただく「出雲ぜんざい」と共に味わいたい。


島根と歩んだ20年

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月光を浴びる夜桜に華を添える濁り無き酒、彩り豊かな食卓を飾る色艶の良い酒。
元来、酒は食や自然を引き立てる無上のスパイスであった。
それを省みると、島根の自然、料理を引き立てる味わいを醸す松江ビアへるんのビールは、酒本来の役割を貫徹していると言えるのではないだろうか。

2019年に20周年を迎えた島根ビール株式会社が生んだ松江ビアへるん。是非島根に足を運び、美味な料理達と共に島根を余すことなく味わってみては如何だろうか。

文 : サピエん太郎

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