山の中の村での出来事
去年の夏、ある山奥の村で2か月くらい住み込みで働いた。
前職の船を下船した後は、人との関わりに疲れて、住む家もなく、今後どうするかもわからないまま、
とりあえずお金よりも居場所と自然を求めてたどり着いた。
前職では人間の嫌な部分をたくさん見てしまった気がして、
人とコミュニケーションをとりたくないくらい、人嫌いになっていた。
それでも人と関わらずに生きていくことなんて出来ないので、とりあえず働いた。
畑で野菜を収穫したり、釣った魚を捌いて囲炉裏で焼いたり、今までやったことのない事の連続で、
火を起こすこと、生きてる魚を食べれる状態にするということ、全部ひっくるめて
私がこれから生きていく上での生業を学んでいる気がした。
その様子を興味津々になって子供たちが隣で見ていたりして、
きっと彼らも私と一緒に生業を学んでいたと思う。
夜には道に寝そべって星をみたり、
鹿やタヌキにちょっとびくびくしながら真っ暗な道を歩いたり、
熊が出たと聞けば、山の中を大声で歌いながら熊よけをした。
そんな日々を過ごしているうちに、気づいたら「人嫌い」なんて言葉は頭の中からすっかり消えていて、
たった数カ月だけど、その村で有意義で貴重な経験ができたと思う。
いまになって、村での出来事を思い返す時、ある男の子に言われた言葉をいつも思い出す。
それは虫取りにいった男の子が、捕まえた虫を見せに来たときのこと。
そもそも虫が嫌いな私は、「そんなもの私に見せに来なくていいよ」なんて内心思ってたし、最初虫を見せられた時はゾッとした。
でも縞模様のついたその虫をみて、彼は
「これを創った神様はすげぇよな」
って一言ぼそっとつぶやいた。
何をどう感じるかって、
誰にも邪魔されるべきじゃないと思うし、
どこにいて何をしていても、
自分に心に響くものはひとそれぞれ違うけど、
それでもこの虫を創った神様はすごいし、
それを私に伝えてくれてありがとう。って思った。
そんな夏の思い出。
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