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お人好しを卒業した日。

人あたりのよいママ友がいる。

人の悪口は言わないし、いつも笑顔で穏やかだ。学校の役員仕事も引き受ける。でも、自分一人では引き受けないし、一人では決断して動くことができない人。仲良しの誰かが一緒でないとダメなタイプ。自分の意見を大きく言えなくて、仲良しママの次に「私もそう思う」と必ず言う。そんな人。今まできっと、いつも誰かにタイミング良く助けられながら、うまく生きてきたんだろうと思う。これからもきっと、誰かの助けをタイミング良く受けながら、生きていくのだと思う。

そして、いつしか私が、その「誰か」になっていることを知った。。。


私は、子どもの通う学校内のとあるボランティア団体に所属している。彼女は私の一年後あたりに入会してきた。その団体は基本的に、順番で代表の仕事が回ってくる。でも彼女は、代表なんて他でもたぶんしたことがないし、自信がないのだ。そんな話を他のママ友さんにしていたのを、たまたま私は聞いてしまった。一人のママが「それなら乙女ちゃんが代表になった時、一緒にやっっちゃえばいいじゃん。(あなたの)お仕事全部やってくれるよ!やってもらっちゃいなよ!」半分冗談のように聞こえるが、意外に本音だと感じた。彼女もそれしか方法はないと思ったのだろう。「そうだね、乙女ちゃんの時、(私の分の)仕事、やってもらおう!」そう、はっきり、言った。

。。。そうか、私は

仕事のフォローを全部してくれる人っていう位置づけ

なんだな。。。聞いてしまった。。。深い悲しみが私を襲う。。。


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実は私、数年前に彼女の仕事のフォローをしていた実績(?)がある。自分が「副」という立場で、彼女は私のママ友さんで、、、書類作成などが全くできないことを知った私は、立場上フォローすることが普通の流れで、「できない」という彼女の代わりに全て作成していた。彼女が何か取りまとめる時も手伝いを惜しまなかった。仕事の面で彼女に頼られていることはその時から十分感じていた。だからこそ、上記のような発言につながった、そう思う。そして彼女のその気持ちが、行動にハッキリあらわれる出来事が最近あって、私をひどく落胆させた。


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来年度、私は学校の執行役員に内定している。

それなのに、

そのボランティア団体の代表のお願いまで来てしまった。

正直、兼任は難しいと感じたし、今までも執行役員の仕事が学校内では優先という暗黙の了解があり、兼任の実績はない。今どき働く母は珍しくないが、私も僅かばかりの仕事を持っている。三つ巴生活は苦しみしかないように思えた。申し訳ないが団体の代表はお断りした。

しかしその後すぐ、再度ボランティア団体の現代表から連絡が入った。急遽転勤が決まったので今年度の残り数か月だけでも引き受けてくれないかという依頼。今年度であれば動けるし、断る理由もない。一つ返事でOKした。が、現代表は来年度の代表が決まらないことでものすごく困っていらっしゃった。誰一人、引き受けてくれる人がいないというのだ。

最近の活動を振りかえってみると、活動に良く参加し、常に協力的な人って、みーんな現執行部だったり、元代表・元副代表という所謂「免除」されるべき人たちばかり。それ以外の人で引き受けてくれそうな人・・・本当に誰もいないように思えた。実際、引き受けるべき人たちに向けて今まで何度も立候補のお願いをしているのに、なしのつぶてらしい。

そうこうしているうちに、現代表の引っ越し日程が迫ってきて、いよいよにっちもさっちもいかなくなってきた。先日行われた、現代表主催の最後の会議(コロナ禍によりズーム会議)。会もそろそろ終わるという頃に、現代表の悲痛な叫びがあった。「申し訳ありません。今年度の残りはお引き受けくださる方が見つかっているのですが(=私のこと)4月からの来年度が決まりません。どなたも引き受けてくださらない・・・」

引き受けねばならないはずの方々は、、、会議は欠席している(良くある話だ。)会議に出ている人はみな免除の人。そこにぽつんと、引き受けることができるはずの彼女が映っているのだが、彼女には立候補する気はさらさらない。だって、私が代表を受けた時に便乗して手を挙げる気なのだから!!!


現代表の悲痛な叫びに、来年度私と一緒に執行部をするママ友さんが「もう、乙女ちゃん、やらない?」と個別のチャットで誘ってきた。「兼任大変だろうけど、、、(現代表がかわいそうすぎる・・・)」。兼任の重圧に押しつぶされそうではあったが、もはや、誰かが引き受けなければ。色々な思いが頭の中を一瞬にして廻ったが、、、誘ってくれたママ友さんは、自分で考え一人で動ける人なので、対等な立場で仕事ができそうだ!そう思ったら、今私に幸運の矢が放たれていることを感じた。

そうだ、ここで引き受ければ、私はこの先、“彼女“のフォローをすることはない!!!


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執行部の私たち二人が、ボランティアの代表(=私)・副代表も兼任する!という決断を下した。

私たち二人が来年度の執行部であることを、会議に出ているみなさんには伝えていなかったので「大丈夫?」「いいの?」「本当はやらなくてもいい仕事じゃない?!」「でも、ありがたいよ」そんな複雑な面持ちで、戸惑いながらも、感謝の気持ちを込めた拍手を送ってくれた。

そして私には、この瞬間、ある思いが生まれた。

そうなのだ、本来は、私たち二人は「免除」の人。それを引き受けてやっているんだそ!という思い。誰もいないから引き受けてやっているんだ!と。今年度の残りも引き受けるんだぞ!どうだ!見たかっ!くらいの強い気持ち(笑)。

少しくらいのワガママを聞いてもらおうじゃないか!


「私、やります。自分で決めたから頑張ります。でも、兼任は本当に正直不安です。なので、来年度はレアなケースと捉えてもらい、あと2名程度仲間を入れていいですか?」

私のこの発言に反対する人はもはやいない。今は立候補した私の気持ちが大切にされるべき!というムードになっている。ふと目をやると、画面の中で少しそわそわした感じに写っている彼女の姿が見られた。

きっと、いや、絶対、私が「一緒にやってくれない?」と誘ってくれることを待っている。。。


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会議終了後、私は即座に動いた。

来年度私がストレスなく上手く兼任するためには、私と同等の動きを、積極的にしてくれる人に加入してもらうしかない。私はそんな「同士」に囲まれないと代表の仕事を絶対にうまくまわせない。断られるかもという不安もあったが、執行部2年目のママと、以前代表を務めてくれた経験のあるママ、どちらも「免除」のママだけれど、背に腹は代えられず、素直な気持ちでお願いのラインを送ってみた。すると、二人とも、引き受けた私たちの苦悩ぶりを重々承知してくださっており、快くOKを貰えたのであった。

嬉しい。

私は今回、私をフォローしてくれるママ友3人に囲まれた!

私のフォローを期待しているママではなく、私を「助けるよ」と誓ってくれた3人のママ友に支えられたのだ!!!


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私から何のお誘いも来ないことで気が急いたのであろう。会議の翌日、彼女から一通のラインが届いた。「私は〇〇も〇〇も〇〇も苦手で、足手まといになるかもしれないけれど、乙女ちゃんと一緒だったら何かやりたいなと思っていたので、代表以外ならやるから、何かできることがあれば一緒にやらせてもらえないだろうか」というような内容だった。。。

私が仕事を持っていることを知っている彼女。そして昨日、私も副代表も執行部兼任で引き受けた事実を、あの一部始終を、画面でシッカリ見ていた彼女。なのに、それでも、「代表以外なら」と未だに言う姿勢にもガッカリだったし、、、何よりも、やっぱり私のフォロー目当てに一年間やりすごそうという魂胆だったことが、こうしてラインを送ってくることで丸わかりではないかっ、正直、落胆。やっぱり私って、、、

笑顔でいつも彼女の分の仕事をやる、彼女にとってみたら“貴重な”存在だったのだな・・・。


「私が代表でやりたいことって、〇〇ちゃんの苦手だと言ってる分野なので、たぶん役職付きで一緒に仕事をすることになったら〇〇ちゃんの気持ちの負担が大きくなっちゃうと思う。無理して一緒に役職付きでお仕事しなくてよいから、来年度は参加できる活動の時に気軽に参加してね。ちなみに、私が兼任で不安に思っていることを察してくれた方2名が、既に快く役職を引き受けてくれているので、もうそちらは大丈夫なの。もし少しでもやろうかなという気持ちがあったのだとしたら是非私の代の次の年に、立候補する心積もりをしておいてくれたらうれしいな。」

少し突き放したラインを返してしまった。

彼女に、昔からの付き合いなのに「冷たい!」とか「ひどい!」とか思われたかもしれないが、不思議と、もうそんなことはどうでも良いと感じた。


私は自分にできる精いっぱいのことを、今までだってちゃんと考えてやってきたし、今もちゃんと考えている。兼任を決断したその時は、(誰にも話していないが)主人に病気が見つかり長期入院を余儀なくされている時で、気持ちが不安定な部分もあった。そんな中で決断しなければならなかった苦しさも、本当は伝えてやりたかった!!

▼主人の入院・・・


一緒にお仕事しようと思って集まってくれたママたち。その存在が、今の私の心の大きな支えである。そういうママたちには、今まであまり話せなかった自分の弱い部分もさらけ出せるような気がする。現に、免除であることを理解しながらも、支えてほしいと頼れた自分を、以前とは少し変わったな、と思うのだ。対等な立場で、頼り頼られるのが、人間としてステキなつながりと思う。やっと、見つかった。

私はそのママたちの気持ちに応え、協力し合って、子どもたちのためになる活動をただただ団体のトップとして考え、頑張ればよいのだ。

私は、もう、ただのお人好しではない!



20201228




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