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七夕の夜を泳ぐ

まだ片手で歳を数えられた頃、

一年に一度だけ
夜と遊べる日があった

七夕飾りに埋め尽くされた
アーケード街を
金魚帯をなびかせながら駆けまわる

ほわほわの綿菓子を喰んで
氷水に冷えたラムネを飲み
金魚掬いに袖を濡らす

終いには草履の先つぼが痛いと座り込む

自由に泳ぎまわれる夜があった

織姫と彦星が会えるのも
年に一度だけ

小さな頃は、
なんでたった一度なのかと
神様に怒った日もあったけれど

今ならば、
その一度がどれほどの尊い宝になるか
分かる気がする

会えることよりも
会えることに焦がれる時間の大切さ

七夕の夜の記憶は、
そんな"一度きり"の尊さを思い出させてくれる