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地上から消えた動物


地上から消えた動物

 絶滅した動物たちを、紹介した本です。
 一九八三年に出た本ですが、二〇一一年現在に至るまで、ロングセラーのようです。

 類書は、日本で、何冊も出ています。それらの中で、本書は、やや抜きんでた存在だと思います。
 なぜなら、文章が上手いからです。感傷的になり過ぎず、それでいて、二度と帰らない動物たちへの愛惜に満ちています。
 人間の手で動物を滅ぼすことが、いかに罪深いことか、心に沁み入ります。

 これは、書き手が、科学者ではなく、作家だからでしょう。
 作者のロバート・シルヴァーバーグ氏は、SF作家として著名な人です。多作なことでも知られます。残念ながら、彼の作品で、日本語に翻訳されているのは、そのごく一部です。

 本書で語られるのは、単に「絶滅した」という事実ではありません。絶滅の物語です。

 例えば、表紙に描かれている鳥、ドードーです。
 彼らが、どこで、どのように発見され、どのように虐殺され、わずかに残された標本が、どのように博物館に収められていったのか、作者の筆は、克明につづります。

 読んでゆくうちに、非常に申し訳ない気持ちになります。人類だとて動物の一種ですのに、なぜ、こんなに横暴なのでしょう?

 幸いなことに、末尾の三つの章に、希望があります。これらの章では、絶滅の瀬戸際まで行きながら、ヒトの手によって保護された動物たちが、紹介されます。
 それらは、タカヘ、バミューダシロハラミズナギドリ、モウコノウマ、ハシジロキツツキ、シフゾウ、ナキハクチョウ、ハワイガンといった動物たちです。

 しかし、この本で「まだ絶滅していない」とされていながら、二〇一一年現在、絶滅が確認されている動物もいます。
 例えば、インドネシアのバリ島にいたバリトラ(トラの一亜種)です。同じく、トラの一亜種で、インドネシアのジャワ島にいたジャワトラも、絶滅しています。

 人間は、どれだけ罪を重ねれば、気が済むのでしょうね?

 悲しい本です。けれども、私たちは、現実を見つめるべきでしょう。

 以下に、本書の目次を書いておきます。

1 絶滅の意味するもの
2 ドードー
3 オーロックスとバイソン
4 ステラーカイギュウ
5 オオウミガラス
6 クァッガ
7 モアとロック鳥【ちょう】
8 地上生のオオナマケモノ
9 リョコウバトとヒース・ヘン
10 忘却の淵より
11 絶滅のせとぎわで
12 滅亡の門の前に

解説/堀 浩



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