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甘くて、やわらかいのが好き。

マレーシアの人気のおやつを分布図にまとめてみた。横軸が「味」で、縦軸は「食感」。左方向は甘く、上方向はよりやわらかくなる。

資料マレーシアごはん通信_おやつ_01

この図を見ていただくとわかるように、左上のスペースに多くのおやつが分布している。つまりマレーシアのおやつは、甘くてやわらかい味が定番、ということ。

な~んて、旅にいけない現在、不要不急の極みのような情報だが、個人的にこの俯瞰作業が楽しい。なるほどそういうことね、という発見も多々ある。というわけで、マレーシアのおやつについて、5つの特徴をまとめてみた。


特徴1 生菓子と揚げたおやつが人気

以前も書いたように、マレーシアの人気No.1(と言ってもいいと思う)おやつは、米粉にココナッツミルクを加えて蒸した「クエラピス」。日本のういろうに似ていて、もっちりやわらかい食感、やさしい甘さ。買ったその日に食べ切る生菓子だ。マレーシアには、このような日持ちのしない蒸したおやつが多い。(図の左上部分)

また、同じぐらい種類豊富なのが、揚げたおやつ(図の右下部分)。カレー味のジャガイモが中に入った「カレーパフ」、海老のかき揚げ「チュチュウダン」。甘くないものが多く、揚げることで水分を飛ばし、比較的日持ちがする。なお、甘いものも、甘くないものも、どちらもマレーシア人は好物である。

ここからは、図を離れての全体考察。


特徴2 甘いものは嗜好品ではなくエナジーバー

マレーシア人は甘いものが好きだ。種類も豊富にある。食事中、食事前、ときには朝食として。つまりは1日中いつでも甘いものを食べる。

食べる時間に決まりがないのは、甘いもの=食後のデザート*ではなく、小腹が空いたときに食べるおやつだから。そのため、腹持ちがよく、米、豆、芋など栄養価の高い材料をつかったものも多い。

また、1日に少量の食事を何度も食べる習慣のあるマレーシア人は、おやつを1食にカウントすることもある。つまり、マレーシア人にとって甘いものとは、嗜好品というより、エネルギー補給源=エナジーバーに近い存在だ。

*食後のデザートとして食べるのは、果物か汁系の甘いもの。これらのデザートのことをPencuci Mulut (口を洗う)とよぶ。


特徴3 おやつの
色には意味がある

マレーシアのおやつはカラフルだ。でもよく見ると、おやつの色は、そのおやつがどんなものかを示した印であることに気づく。

たとえば、紅白のしましまなら「クエラピス」。緑色ならパンダンリーフの香りつきということ。青はニョニャ菓子であることをアピールし、黄色はドリアン味やコーン味を意味する。

というのも、マレーシアのおやつ屋台では、陳列されているおやつに名前の記載がない。そのためマレーシア人は、おやつを見た目で覚えていて、名前を知らない方も多い。そこで、この色がキーポイントになってくる。つまり定番のカラーがあったり、味が想像できるカラーのおかげで、マレーシア人はおやつを見分けることができる。

ちなみに、一番多い色は、パンダンリーフの香りつきの緑。おめでたい色の赤系のクエラピスは、結婚式の定番のおやつでもある。


特徴4 キーワードは「クエ」

昔から食べられているローカルおやつのことを「クエ」とよぶ。福建語の「粿」が語源といわれ、もともとは米を加工したものを指し、「クエラピス」「クエタラム」「クエスリムカ」などクエの代表格は、米が原料。現在は、米は関係なく、手でつまめる(かき氷は入らない)地元のおやつをクエとよび、蒸したものから揚げたものまで多彩にある。おやつ類となると「クエムイ Kueh Muih」という。

※人によってクエの定義は微妙に違う。
※人気の米麺「クイティオ Kuetiau」のクイとクエは同じ語源。


特徴5 おやつがつなぐ時間と家族

マレーシアにおやつ文化が根付いたのは、イギリス占領時代のアフタヌーンティーの影響という説がある。

実際、十数年ほど前までの官公庁や企業では、ランチ休憩と同じように15時ごろおやつ休憩が設けられていた。そこからおやつの習慣が個人に浸透したと考えると、おやつには過去からの時間が込められている。

そしてもうひとつ。わたしがいつも感じるのは、マレーシア人のおやつ(とくにクエ)にたいする深い愛情。

これは、屋台(とくに夜市)文化が関連しているのでは、と思う。というのも、生菓子の多いクエは工場生産ができず、専門店のものが多い。とくに露店が立ち並ぶ夜市でよく売られていて、お客さんが集まる人気コーナーだ。

家族で夜市に訪れる習慣のあるマレーシア人は、親がクエを買い、子どもたちはクエのおいしさを知る。その子どもが大人になり、また家族で夜市に行き、その子どもにクエを買ってあげる。そうやってクエの味は代々伝えられていく。と同時に、家族のかけがえのない思い出の味としても大事にされていくのだ。


だから、マレーシアのおやつを食べると、マレーシア人の思い出におじゃましているような気分になる。

大事にされている味というのは、とてもおいしい。

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マレーシア、ペナンにあるニョニャ菓子店「Moh Teng Nyonya Koay」のおやつ。2015年の取材時、これらのお菓子は1個50セン(約15円)で販売。サイズがこぶりで、甘さひかえめ、上品な味なので2人でぺろり。詳しいレポートはこちらに

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