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人気のおやつ、クエラピス。

今日はマレーシアのおやつの話しをしよう。

マレーシアの北から南まで、マレー系や中国系などの民族を問わず、子どもからおじいちゃんおばあちゃんまで、みんなに人気のおやつ。それは「クエラピス Kueh Lapis」である。

最近気づいたのだけど、おやつって、実は味の想像がしにくい。

たとえばおかずなら、茶色で汁っぽいとカレー味かな、となんとなく想像(もちろん外れていることも含めて)できるが、お菓子の場合、味に関係のない色で飾られていたり、中に別の味が入っていたりして、見た目と味の関係性がうすい。小さなポーションのわりに味のバリエーションは無限大で、甘いと思って食べたらしょっぱかった!のように反対のベクトルに振れることもあり、正真正銘の体験型フードである。

とはいえ、見た目から、あらゆる体験を総動員して、こんな味かな、それともあんな味かな、と想像をめぐらせるものが人間というもの。そんな習性を刺激するのが、マレーシア人が愛してやまないクエラピス。

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見た目をひとことで表現するなら、ドピンクのしましま。

日本にドピンク(淡いピンクだと桜味があるが)のおやつはあまり無いので、初めて見る日本人は、この色だけで、おおぉ……(手がのびない)となる。でもこれ、おいしいんですよ。

ひとことでたとえるなら、マレーシアのういろうですね。米粉にタピオカ粉や緑豆粉とココナッツミルクを加えてねって蒸したもので、かめば、もっちりしたやわかい食感。水分にココナッツミルクを使うため、アジアンな香りとまろやかな風味が口のなかにやさしく広がる。甘さは、ういろうぐらいで羊羹ほど甘くないので食べやすく、和菓子と同じように買った当日に食べ切る生菓子。このフレッシュ感も特徴だ。


さて、マレー語で「クエ」とはおやつ、「ラピス」とは層。つまり“しましまの層のおやつ”というのが名前の意味。

しましまにするために、一層ずつ、ていねいに蒸していく。たぶん昔は、ガスなどなく、薪や炭火で作る場合、一気に蒸すより、少量ずつ蒸したほうが均等に火が通り、失敗が少なかったからでは、なかろうか。その際、同じ色だとつまらないから、しましまカラーにすることを思いついた誰かがいて、それが特徴になったのでは、と妄想している。

色はピンクが基本で、緑のパンダンリーフ色もある。緑はパンダンの香りがつけられているが、ピンクは単にカラーリングで味は白い部分と同じ。

なぜピンクが定番になったのかは定かではないけど、この色は縁起がいいともされ、お祝いの席のおやつとしても人気である。

このクエラピス。ルーツは、中国の客家のおやつ「九層糕」だそうだ。縁起がいいとされる「9」層に蒸したもので、「糕」とは米を加工したもの、ということ。つまり、クエラピスはのクエは、クイティオのクイと同じ語源。「九層糕」は、黒糖を使っているためブラウンカラーが多い模様。

そしてクエラピスは、インドネシアやタイ、シンガポールなど周辺諸国にも同じものがあり、それぞれの国で親しまれている。レシピ本をみると、インドネシアのクエラピス、タイのカノムチャン(この名前になっている)の定番カラーはパンダン由来の緑だそう。つまり、ピンク色のクエラピスをみると、あ、これはマレーシアね、となる。

あともうひとつ。どこの国にも共通している “クエラピスあるある” は、子どものころ、白とピンクのしましまの層を1枚ずつ剥がして食べて、親に「行儀が悪いからやめなさい」と怒られた、という思い出ばなし。この話しをマレーシア人に聞いたとき、そういえばわたしもポッキーのチョコだけ舐めて怒られていたなぁと記憶がよみがえりました。

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マレーシアのショッピングモールの菓子店で、

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道端の手作りのおやつ露店で、ピンクのクエラピスは売っています。ぜひ注目してみてください。


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