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【エッセイ】「耳鳴りは幽霊がいる証拠だよ」じゃあこの音はおじいちゃんだね

 最近、ちょっと怖い動画を見るのにハマっている。本物の心霊動画は怖いから、ユーチューブでフィクションのホラー動画を見ている。この、制作費のあまりかっていない、明らかに個人で作りましたという雰囲気が好きだ。
 元々ホラー全般がすごく苦手だったのに、二年前くらいからだんだん大丈夫になってきた。今年で三十二歳、大人になった証拠だろうか。
 最近では、家の中で音がする、いわゆるポルターガイスト的な現象も楽しめるようになった。「死んだおじいちゃんがいたずらしてるのかな」と思うと少し嬉しい。

 小学校一年生から高校二年生までの約十年間、私は祖父母の家で暮らしていた。二人とも優しかったが、特に祖父とはとても仲がよかった。祖父はB級ホラーが大好きで、リビングや応接間の本棚には所狭しとホラービデオが並んでいた。たまに私を、「とうふちゃん来てごらん。面白い映画を一緒に観よう」と誘い、ホラーと知らずに見始めた私が怖くて泣き出すのを見て大笑いしていた。またあるときは、自作の怪談話を聞かせてくれた。この自作の怪談話というのがなんとも祖父らしく、最後の最も盛り上がる部分は「そして……そおっとふり返るとそこには………わぁっ!!!」と大きな声を出して私を驚かせるだけ、というなんとも雑なオチだった。しかし当時純粋だった私は椅子から飛び上がって驚き、祖父を大いに喜ばせた。その他にも、散歩中公園にある銅像を指差して「あれはメデューサに睨まれて石になっちゃったんだ」と言ってきたり、入院したときは「ここにはネズミの霊がいるんだ。毎日みんなで行進していてかわいい」などと冗談なのか幻覚が見えているのかよくわからない話をして、集まった家族を困惑させていた。
 そんな祖父との思い出があったので、幽霊が怖くなったとき(夜シャワーを浴びている時や三面鏡を見ているときなど)には、もし幽霊が見えたとしたらそれは祖父だ、と思うようにしている。

 小学校時代は、母との思い出よりも祖父との思い出の方が多いかもしれない。私と祖父は、ほとんど友達のような関係だった。冗談を言い合ったり、喧嘩をしたり、一緒に寝たり。思い出すと、目の前があたたかい思い出でいっぱいになる。当時は私にとって寂しい時代でもあったけど、祖父のおかげで毎日楽しかった。ありがとう、本当に。たまには幽霊になって出てきてもいいからね。

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