記事に「#ネタバレ」タグがついています
記事の中で映画、ゲーム、漫画などのネタバレが含まれているかもしれません。気になるかたは注意してお読みください。
見出し画像

舞台感想 宝塚歌劇 星組公演 夜明けの光芒

東京観劇遠征二日目はこちら。
ちなみに、一日目のBIG FISHの感想はこちら
舞台感想 宝塚歌劇 星組公演 BIG FISH ビッグ・フィッシュ|おとぼけ男爵 (note.com)

楽しくハッピーでハートウォーミングな作品の翌日はディケンズの名作「大いなる遺産」が原作の舞台「夜明けの光芒」です。
1990年の宝塚の作品は観ていないので、全くの初見です。
原作が有名な作品なので、きっとどっしりと重々しく、暗い苦しい作品ではないかと予想しておりましたが……
人間の心の闇が、闇ダンサーたちによって描かれて幕開きから不穏な空気が漂います。
ピップの歩む人生が、明るいものではない。いずれ、道を外れていくのだと思わされて、苦しくなります。でも、その不穏な空気は、観客のワクワク感を後押しします。これから、どうなるの……

藍羽ひよりちゃんの少年ピップ登場。
最初からなかなかの存在感を感じさせるひよりちゃんです。
そして、脱獄囚との出会い。
命拾いしたという礼を言う脱獄囚を、無垢な瞳で見つめるピップ。
その優しさに心を揺り動かされるマグヴィッチを輝咲さんが見事な伏線として演じておられたと思います。

少年時代と青年時代を交互に繰り返すように、エステラとの出会いなどが描かれ、物語はスピーディに進みます。

ありちゃんのピップ。
少年の心を残した明るさと、分不相応な野心をもった青年として、危なっかしい。全体を通して、この危なっかしさがとっても良いです。
エステラに見合う為に紳士になろうと考える危なっかしさ。
大金を手にして散財する危なっかしさ。
ベントリーに突っかかっていく危なっかしさ。
ギャンブルに手を出す危なっかしさ。
ジョーたちとの縁を切ってしまおうとする危なっかしさ。
全ての行動が転落へのきっかけになりそうな危なっかしさを持っていて、それがとてもよく表れていたと思います。
最後に、マグウィッチを殺せと囁きかけるもう一人の自分の声に抵抗して彼を助けることで、その危なっかしさが消え去ったように思います。

優しい義兄、美稀さんのジョーは本当に包容力があって、優しくて、この不穏な物語の中の不変的な「善」として存在しています。
彼が登場するだけで、ホッとする。不穏な物語の中で安心できる存在です。
綾音美蘭ちゃんのビディもジョーと同じく「善」だけど、ピップへの叶わぬ思いを持っていて、それが悲しみとして根底に流れていて、その切なさもよく表現されていました。彼女がジョーと幸せになるのは嬉しいよう~

乙華ちゃんの少女のエステラの美しさと高慢さは、ピップが夢中になってしまっても納得。愚かな男の子は、こういう女子に弱いんだよなあ~

七星さんのミス・ハヴィシャムが素晴らしい!
白い化粧と細く震えるような声が、この世の人でありながら幻のようにも見える。この物語のすべての原因である彼女の存在の不気味さがでていて、見事でした。

瑠璃さん演じるエステラ。美しくて高慢で、歌声も素晴らしい。人を傷つけることしかできないエステラが、愛する心を初めて知って、美しいデュエットダンスへと繋がっていくのは宝塚らしくって本当素敵。
原作ってこんなにハッピーだったかしら?と思っちゃうほど美しいデュエダンでした。

稀惺さん演じるハーバート。爽やかで清々しい青年ハーバートがぴったり似合っていました。
天飛さん演じるベントリーは、これまた憎たらしいキャラがぴったりです。
ピップの闇の顔も演じているのですが、見事な闇感ですごく大きく見えました。

文豪の作品は重くなるけれど、芸達者が揃って見事な仕上がりになっていたと思います。

デュエットダンスも素敵だったのですが、そのあとのありちゃんのソロのダンスがこれまた美しくて。
見惚れてしまいましたね。
フィナーレがある宝塚の良さが存分に味わえました。

重々しい、苦しい作品ではあるけれど、宝塚らしいフィナーレで心洗われて楽しく家路に向かうことが出来ました。

いや~ 楽しい東京観劇遠征でした。

過去の舞台感想はこちら
宝塚歌劇 舞台感想まとめ|おとぼけ男爵 (note.com)

宝塚OGさん出演の舞台感想はこちら
宝塚OGさん出演 舞台感想まとめ|おとぼけ男爵 (note.com)

宝塚以外の舞台感想はこちら
宝塚歌劇以外の舞台、映画感想まとめ|おとぼけ男爵 (note.com)


この記事が参加している募集

#舞台感想

5,944件

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?