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職場のストレスと企業の対応

職場ストレスの要因

職場でのストレスは、肉体的、精神的、あるいは感情的なさまざまな要因から引き起こされます。歴史的にみると、かつてストレスの主な要因は、肉体的な危険を感じる職場環境や長時間労働などでした。近年はその重心がより心理的、精神的な要因へとシフトしてきました。その結果、職場を離れて帰宅後であっても、何かを心配している状態が続いたり、不眠症、鬱気味になったりとメンタル的な問題で悩む人が増えてきています。

職場で起こるストレスに関して行われた色々な調査で、大抵上位にあがるものとしては、「人間関係」「常に多い仕事量」「急な仕事・時間制約」などがあります。その原因としては、コミュニケーション不足、不明瞭な役割・責任範囲、不十分な計画による場当たり的な対応などが挙げられます。

ストレス対策のフレームワーク

企業として、この職場ストレスへの対応を考えた場合、大きく2つの方向性があります。1つ目が、ストレスの原因となり得るものを削減し、ストレスが発生することをなるべく未然に防ごうというもの。2つ目は、ストレスが発生してしまった場合でも、そこから受けるインパクトを減らす、その影響を受ける時間を少なくすることで、ストレスからのダメージをなるべく最小化しようという方向のものです。これらはさらに、個人レベルで取り組むもの、組織レベルで対応するものに分けると、全体としては大きく4つの象限マトリックスで考えることができます。

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組織におけるストレス対策マトリックス

ストレスの原因を取り除く方向性

個人レベルでストレスの原因を削減しようという取り組みとしては、例えば、規則正しい生活、特に睡眠時間をしっかりとることや、仕事のスケジュール・優先順位をしっかり把握し仕事の順番・量をうまく調整するスキルを習得し習慣化するといったもの。あるいは、日頃から仕事上のやりとり以外でも周囲とのコミュニケーションをまめにとることで、困ったときに気軽に質問したりサポートをお願いできる人間関係を築くことを心がけておくことも重要でしょう。

組織レベルで取り組む、ストレスの原因の削減を図るものとしては、仕事のルール・作業プロセスの見直し、勤務時間・シフト体制の改善、管理者へのマネジメントトレーニングの提供など。あるいは、上司と部下との定期的なOne on Oneミーティングの実施を制度として導入したり、チームでのランチミーティングなどに予算をつけて推奨することで、日頃からのコミュニケーションを促進を図る企業も最近増えています。

ストレスの影響を最小化する方向性

次にストレスが起こってしまった場合の、その影響を最小限に抑えるものとして、個人レベルでは、レジリエンス(復活力)トレーニングを受講してストレスのインパクトを削減するスキルを身につけることや、毎日軽い運動をしたり瞑想を実施することで、ストレスの解消を図ることなど。あるいは、自分でストレスを抱えてしまっていると思った場合は、早めに専門のセラピーやコーチングを受けることも選択肢としてもっておくことが必要でしょう。

ストレスを受けた人を守るために組織として対応する方法として、社内でのコーチング制度を導入したり、外部の専門機関を利用したメンタルヘルス相談室の設置などが挙げられます。また、役割分担・責任範囲等で対立問題が頻繁に起こる部署やチーム間の調整にマネジメントが介入したり、必要な場合はジョブローテーションや適材適所の配置変えをより短期間に行えるような仕組みをもつことも、ストレスによる退職リスクを削減する意味でも有効でしょう。

ストレスマネジメントは企業の優先課題

従業員の身体そして精神を健全な状態を保つことは、個々人のパフォーマンスを高めるだけでなく、より良い企業文化を醸成し、優秀な人材の定着率を高め、結果企業全体の業績向上にもつながります。ここ数年、特に優良企業はその重要さに気づき、経営上の重要課題としてストレスに真剣に取り組み始めています。企業組織としてストレスマネジメントの打ち手を色々と検討する際、2つの軸つまりストレスへの対処の狙いが 「発生の防止」あるいは「インパクトの削減」なのか、取り組む主体が「個人レベル」あるいは「 組織レベル」なのかという枠組みで議論・整理していくことは大いに役に立つはずです。

次回からは、個人として、あるいは組織として、ストレス解消・バイタリティー(活力)の向上を図るための具体的な対策についてご紹介していきます。

- Takeaways -

・近年の職場ストレスは、メンタル的な問題で悩む人が増えてきています
・ストレスへの取り組みは、主体が個人か組織は、あるいは狙いが原因の削減かインパクト(影響)の最小化かで整理することができる
・ストレスマネジメントを企業経営の優先課題と位置付けて取り組んでいる優良企業がここ数年増えてきている


(参考)
・Fingret, A. (2000). Occupational Mental Health: A Brief History
・Holman, D.(2018). Stress Management Interventions: Improving Subjective Psychological Well-Being in the Workplace
・Wolfe, B. (2015). Five Tips for Launching a Meditation Program at Work



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