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源氏物語「明石巻」を読む

  やっとのことで「明石巻」。

 この巻では、須磨に流された源氏の夢に故桐壺院が現れる場面と朱雀帝が故桐壺院の幻を見る場面があり、その対比ができよう。

 須磨に流された源氏であったが、夢に現れた故桐壺院が次のように告げた。


故院ただおはしまししさまながら立ちたまひて、「などかくあやしき所にはものするぞ」とて、御手を取りて引き立てたまふ。「住吉の神の導きたまふままに、はや舟出してこの浦を去りね」とのたまはす。


 桐壺院によって場所を移るよう促されたのである。当時の夢の存在は大きく、前世からの因縁であったり、そうするべきであるというお告げの意味をもっていた。罪を許されるには十分な理由となりえたのだろう。それに対して、朱雀帝の前に現れた故桐壺院はにらみつけるところから始まる。


三月十三日、雷鳴りひらめき雨風騒がしき夜、帝の御夢に、院の帝、御前の御階の下に立たせたまひて、御気色いとあしうて睨みきこえさせたまふを、かしこまりておはします。聞こえさせたまふることども多かり。源氏の御事なりけんかし。いと恐ろしういとほしと思して、后に聞こえさせたまひければ、「雨など降り、空乱れたる夜は、思ひなしなることはさぞはべる。軽々しきやうに、思し驚くまじきこと」と聞こえたまふ。睨みたまひしに見合わはせたまふと見しけにや、御目にわづらひたまひてたへがたう悩みたまふ。


 朱雀帝は故桐壺院に睨まれ、眼病を患うことになった。源氏を近場ではあるが流罪にしたことによる分かれ道。罪を犯したはずの源氏は許され、被害者であるはずの朱雀帝は結果として罰を受けたような形となったのだ。

 この展開は大変興味深く、場面としては近いわけではないが、そのようにして隠された細やかな展開がこの源氏物語を面白いものにしているのかもしれない。



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台風がほぼ直角に曲がって接近しているらしく、その影響か今はすごく晴れている。暑すぎて久しぶりにクーラーをつけてしまった。明日は雨らしい。早めに温帯低気圧にかわってほしいものだ。中学生のころといえば、台風で休校になることを望んでいたため、学校の放送をみんなで注意深く聞いていた。「緊急連絡です」から始まると大抵は「台風は温帯低気圧に変わったため、そのまま授業を行います。」という放送であった。このときの盛り上がりは、まるで満塁ホームランでも打ったかのような、いやしかし喜びではなく落胆の声が大きく上がっていた。

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