祭囃子でスイングしたっていいじゃない。
突如である。
10月に入ってから、私はなぜか郷土愛に目覚めた。
"日本一の巨樹がある"だの、"鹿児島弁のロックがあるぞ"だの、やおら言い出した。
とくべつ"ふるさと"への想いが深かったわけでなく、むしろ田舎で生まれ育ったコンプレックスを抱えて生きてきたのに。
理由は、明確には謎だ。
ただこれだけはわかる。
私もそれなりに年をとった。
過去が、とてつもなく美しくみえる…。
それはさておき、もうすぐ鹿児島では、"おはら祭り"というお祭りが開催される。
11月2日が前夜祭、あくる3日が本祭で、この日の鹿児島市内のメインストリートは、"おはら節”を踊り散らかす人々と、それを見る人々でごった返す。夜通しでないにせよ、2日にもわたって踊り歩くその熱量、よくよく考えたらすごい。
そもそも他の地域でも、お祭りというのはそういうものなのか、そこんとこよくわかってないので、比較できないけれど。
あなたは、"おはら節”を知っているだろうか。
私にとっては、子供の頃からよく聞く唄であった。
そして、私はこの唄が好きだ。
この一番の詩だけみても、悠然として、美しい鹿児島の自然を端的に表している。
秀逸な詩である。
また、歌の節ものんびりとして、不思議と心楽しいきもちがわいてくるのがいい。
実はこの唄、くるりも歌っている。
なぜくるりが"おはら節"をやることになったのか、そのあたりの事情はよくわからない。鹿児島が舞台にもなっている映画「奇跡」(2011年・是枝裕和監督)で使われていたそうで、そういうことも関係しているのかもしれない。
このバージョン、良くないですか?
岸田繁の声が、とてもよく合っている。
ちょっとイングランド民謡の香りを漂わせて。
おしゃれなことをしよる。
さすがの一言。
こうなってくると、
「他にも色々できるんじゃないのか」
という好奇心が、頭を擡げる。
他にも色々とは…?
古今東西、この世には、ありとあらゆるジャンルの音楽が存在する。
そして、今、時は2024年。
人類の叡智が結集しまくっている時代。
ロックが、R&Bから派生したように
メタルとパンクが融合してグランジができたように
"おはら節"だって、他ジャンルの音楽と結婚したっていいんじゃないか。
"おはら節"で、もっとスイングしたい!
探しました。
見つかりました。
世界は広い。
そして、狭い。
ググったら数分で、色々出てきたよ。
ありがとう、YouTube。
ありがとう、ミュージシャンの皆さん。
まずは、超絶カッコイイ、スイングバージョン。
イントロからまず激シブ。
トランペットが泣いてるぜ。
007の世界に迷い込んだよう。
"おはら節"がこんなにアバンギャルドな響きを漂わせるとは、ついぞ思ったことがない。
まさか"007"の気分になれるなんてねえ。すごいわ。
続いて、もっと「祭囃子」感が強いキューバ風バージョン。
こっちはとりあえず、踊らなきゃいけない感じがビンビン伝わってくるね。
90年代に流行した、ブエナビスタ・ソシアル・クラブを思い出しました。
(懐かしすぎる)
"おはら節"とラテンミュージックの融合。
違和感なく、こういうことできるなんて、本当にすごすぎる。
こんなにかっこいいモノにしてもろて…。
鹿児島県民の一人として、僭越ながらお礼を申し上げたい。
こうやってみて初めて、当たり前すぎることに気づく。
もともと、音楽に国境なんてない。
日本の民謡だから、他のジャンルと合わないなんてことはなく、味付け次第で、そして料理する人の腕次第で、新たなフレーバーはどんどん生み出せるのだ。
昔から慣れ親しんだものだって、もちろん好きだけど、こうして他ジャンルとのミクスチャーに触れることで、唄が根本的に持つチカラに気づくことができる。
音楽って、本当に、本当に素晴らしいものですね…。
あなたの故郷の、慣れ親しんだ民謡だって、もしかしたら他ジャンルと融合したバージョンがあるかもしれない。
探してみたら、ちょっと楽しいかも。