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短歌鑑賞 潜望鏡の一首

 連日の暑さで日焼けし痩せているためか、中高生と間違われた。一方で冬は、ひと回り老けて見られる。マスクをしているから尚更だ。

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菊池洋勝さんの短歌、潜望鏡というソープランド用語を使いながら、自己を客観視する描写である。天国とは、呼吸器をとるため文字通り隣りあわせの世界にある。入浴とは、この場合介護における危機的状況であり、その緊張と恥じらいを機知で乗りこえる奥ゆかしさがこの短歌に表現されている。潜望鏡という言葉に過剰な反応を示すものがいるならば、それは表面的にしかこの短歌を鑑賞していないのではないか。気管切開患者において入浴時の呼吸器補助を必要とするものは、83.2 %におよび、さらに人工呼吸器を希望すると答えたものが 65.4 % である(三谷ら 2006) 。介護者は、異性であることもあるという(菊池洋勝 『横臥漫録』)。それらの背景を踏まえたならば、この短歌が単なる助平心から来るものでないと分かる。ここまで医療と介護へ踏みこんだ作品は、この作者だからこそ書ける。

 余談だが、作者は、エロトピアという漫画雑誌を通して性癖をつくったらしい。洋勝さんの作品に触れて、改めて性に対する価値観を見直す機会となった。

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ヘッダーの画像は、ニシキレオ 様の作品です。みんなのフォトギャラリーから拝借いたしました。鑑賞した短歌は、菊池洋勝 様の作品です。ありがとうございました。

ぎんが

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