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夢日記〜オルフェウスとエウリュディケー〜
2023年4月25日
おそらく人生で初めて明晰夢を見た。
明晰夢とは、自分で夢であると自覚しながら見ている夢のことを指す。
私はこれまで見たことがなかったのだが、大学時代に付き合っていた彼氏は頻繁に明晰夢を見るタイプだった。
彼曰く、「これは夢だって分かるし、夢の中の自分は自分でコントロールできる。好き放題動ける」という状態らしい。
つまりはRPGゲームに入ったような感覚なのだろうか、と当時の私は思っていた。
そしてついに自分で初めて体験できた。
感想としては、あまりにもリアルだった。
目が覚めてからもしばらくは現実との境目がつかないくらいに。
その日はうまく寝付けず、長い夢を見た後目が覚め、再び眠りについた後もう一度夢を見たがまた目覚め、そこから再度眠りについた後3回目に見た夢が明晰夢だったのだ。
それは映画のワンシーンのようにとても短い夢だった。
死んだ父が泣いている私を抱きしめ「大丈夫、大丈夫だよ」とひたすら慰めてくれていた。
抱きしめられている夢の中の私は、父がもうこの世にいないと理解していたので、「これは夢だ」と思い目を開けると、現実世界にいる私も目を開けたような感覚があった。
だからこれで目が覚めるものだと思っていたのだが違ったようだ。
夢の中の私が夢から覚めようとしたのに、私はまだ夢の中にいる。
夢の中の私と現実の私の境目がなくなった。
今寝ている私と夢の中の私は同じ人間だという感覚でふわふわした。
今の状況について少し考えた後、恐怖がたちまち私を襲った。
これが夢ではないなら、私も父のように死んでしまったのだと。
だから、死んだ父に抱きしめられることができているのだ。
私がその考えに至ったのとほぼ同時ぐらいに、また父が私を強く抱きしめてくれた。
確かに温もりを感じる。
人間のあたたかさだ。
ということは、ひょっとすると私も父も死んでいないのではないか。
父が死んでしまったということがそもそも夢だったんじゃないか、そんな考えが頭をよぎった。
そして私は叫んだ「行かないでよ」。
そこでベッドの上で痙攣したかのように体が飛び跳ね、目が覚めた。
心臓がバクバクする。
数秒の間何が起こったか理解できなかった。
思考と現実が私に追いついた時、自分がひどく泣いていることに気づいた。
残念ながら私は死んでいなかったし、残念ながらやはり父はもう死んでいる。
夢の中の私はずっと背中から抱きしめられていたので、父の姿を見ることは叶わなかった。
今このnoteを書きながらようやく頭が整理できてきたのだが、まるでオルフェウスとエウリュディケーの神話のような夢だった。
私はきっと「行かないで」と振り返って父を抱きしめようとして、ハーデースとの約束を破ってしまったのだろう。
その夢を見る前の私は、一日中憂鬱な気分だったので、父が冥界から励ましに来てくれたのかもしれない。
まだこっちに来てはいけないよと、叱りに来てくれたのかもしれない。
大丈夫。
いつかきっとまた会える
今私がいるべき世界はこっち。
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