マガジンのカバー画像

考え・妄想

46
運営しているクリエイター

記事一覧

テクノロジーにより進む幼児化とその先に待ち受けるもの

情報化社会が幼児化をもたらした? 先日、社会の情報化によって文化の変質が起こっているとする論説が地方紙に掲載されました。 ゆっくり時間をかけて物事を経験、反復したり、吟味するという習慣がなくなった結果、その習慣によって培われ、cultivateされてきた文化の重厚さが失われている。 そしてそれは文化を生み出してきた人間の精神の衰退、幼児化を意味しているのではないか、ということを指摘しています。 社会の情報化、ネット化によって失われた習慣。 特に大きいのは、じっくり

IQの上がった人類は本当に賢くなったのか?

IQの高いバカが増えている? 人類のIQ(知能指数)は過去数十年にわたり一貫して上昇し続けてきた。 フリン効果として知られるこの現象が世界のあらゆる地域で起きているという報告は、当時の心理学界に驚愕をもって受け止められました。 それまで主に遺伝的な要因によって決まるとされていたIQが、比較的短期間のうちに急激な上昇をみせていたからです。 このことはつまり、IQの上昇が環境の変化によってもたらされたことを意味していますが、その具体的な理由としては教育制度改革による基礎教

所持金$100からの覆面ビリオネア起業チャレンジにみるサバイバルTips

少し前にネット界隈でも話題になった『覆面ビリオネア(Undercover Billionaire)』シリーズ、シーズン1。 2019年にアメリカのディスカバリーチャンネルで放映された番組で、金融業で巨万の富を築いた起業家グレン・スターンズが、誰も知らない無名の人になりすまし、見知らぬ街で所持金わずか100ドルから90日で100万ドルのビジネスの立ち上げを目指すというドキュメンタリーです。 この作品はあくまでリアリティーショーであり、常に番組スタッフが帯同していたり、妙に都

"ぼっちで来る人"は実はいい人?

他者とつながる力は人の強さの源泉 近年、社会構造の変化やインターネットの普及などにより、世界的に孤独を感じている人が増えていると言われています(※1)。 2018年にイギリスで世界で初めての孤独担当大臣が任命されたのに続いて、昨年2月には日本でも同様のポストが新設され、話題を呼びました。 このような動きからわかるのは、いまや国家レベルで孤独を社会的な問題として位置付けるようになってきているということです。 その背景としては、孤独の健康に対する悪影響が見過ごせないほど大

ファイトクラブにみるセミリタイア戦士の精神性

ファイトクラブの精神とは先日尊師がファイトクラブについて書いていました(※1)。 『ファイト・クラブ』は今から20年以上前、1999年に公開されたブラッド・ピット主演のアクションドラマで、10代~20代の若い世代には知らない人も多いかもしれません。 大まかなストーリーとしては、高級家具のコレクションを生きがいとしているが慢性的な不眠症に悩まされるサラリーマンの主人公(僕)が、タイラー・ダーデンという謎の男との出会いをきっかけに人生を大きく変えていく……というものです。

暴走する承認欲求と自己肯定感の低さ、カオナシにみるその解決策

SNSは承認欲求を満たすどころか暴走させる今や世界中の人々にとって欠かせないツールとなったスマートフォン。 しかし近年、その過剰使用に警鐘が鳴らされるようになってきました。 背景にあるのはインターネットやゲームへの依存の問題ですが、なかでも依存性の強いコンテンツとして取り上げられることが多いのがSNSです。 SNSをつい覗いてしまうのは、退屈だから、何となく手持ち無沙汰だからという理由が最も多いのではないかと思いますが、自分の投稿にどんな反応がついたか気になってしょうが

オタクを保護すべき理由

ネットがつまらなくなったのはオタクがいなくなったせい?先日はてなでこんなエントリを見つけました。 これに対する反応に以下のようなものがありました。 日本語のブログ記事は浅く表層的なものにとどまっているという主張に対し、その原因は遊び心の無さ、つまりは探求心や知的好奇心の不足にあるのではないかと言及しています。 これはそこから来るマニアックさ、ある種のオタク的要素が欠けているとも言い換えられるかもしれません。 実を言うとベテランネットサーファーであるこの私も同じように感

数千年ぶりの狩猟時代に稲作型農耕民はどう立ち向かうか

民族性が生まれる理由現生人類であるホモ・サピエンスは約20万年前にアフリカ南部で誕生し、その後世界中に散らばっていきました。 そして世界各地に根付き、そこから独自の文明を築いていくことになります。 ところで普段、私たちがその地域の風習や社会の慣習を説明するときに、国民性や民族性をその理由として挙げたりすることがあります。 たとえば日本人は農耕民族だから集団で協力し合うのが得意なんだ、といった具合です。 しかし共通の祖先を持つ人類が、その土地土地で独自の性質を身に着ける

お坊さんという人類の進化の最先端をいく人々

理性を極めし者このブログにはこれまで何度か、人類の力の源泉は理性にあるということを書いてきました。 動物脳である大脳辺縁系に由来する利己的な欲求、社会的な本能を乗り越え、ダンバー数を超える人数での協力体制を築き上げることで、文明は進歩してきたのです(※1)。 その象徴が近代国家であり、近代国家はまさに高度な理性を持つ人類だからこそ成り立つ統治制度と言えるでしょう。 それは裏を返せば理性を欠いた本能的な社会は、表面上は近代国家という体裁をとっていたとしても、その実部族(群

皇室問題から考える国家という宗教の構造

皇室なんてやめてしまえ?このところメディアでは連日のように皇室の婚姻問題に関するニュースが報道されています。 マスコミが盛んにこの皇室問題を報じるのは、それだけ視聴率やページビューが期待できる、すなわち情報の受け手である国民の関心が高いことの裏返しとも言えますが、一見いちゴシップに過ぎないこの問題がなぜこれほど注目を集めているのでしょうか。 背景には内親王のお相手であるK氏の実家の金銭問題があり、端的にいえば皇族、皇室という立場を利用(して税金を私的流用)するフリーライド

理性なきところに社会の繁栄はない

※今回は停滞する社会の背景について考えてみましたが、かなり批判色の強いものになってしまいました(テイストとしては『言ってはいけない』に近いと思います)。以下はあくまで個人的な見解であり、読後感もあまり良いものではないと思いますが、今の社会に違和感を感じていたり、問題意識を持っている方の一助となれば幸いです。 自己責任社会という伝統以前に日本は自己責任社会であり、とりわけ自助が求められるというようなことを書いたことがあります(※1)。 少し前のデータになりますが、以下は米シ

withコロナ時代のお手軽メンタル強化術

セロトニン欠乏脳という国民病以前、日本人は民族的にセロトニンという神経伝達物質の分泌量が少ないということに触れました(※1)。 セロトニンは主に神経の興奮を抑える抑制性の神経伝達物質で、ストレス中枢でもある動物脳(大脳辺縁系)をなだめる働きがあります。 しかし日本人はセロトニントランスポーターというセロトニンのリサイクルポンプの数が少ない遺伝子を持っている人の割合が世界で最も高いため、脳内セロトニン濃度が低くなりやすく、原始的な動物脳が興奮してしまいやすいのです。 セロ

社会はマッチョの誠実さで繁栄した?

※本記事はジェンダー的な要素を多分に含んでいます。ご注意ください。 経済はオキシトシンでは繁栄しない『経済は「競争」では繁栄しない』という本があります。 内容を一言で言うと、競争を生むテストステロン(男性ホルモン)ではなく、共感と信頼を育むオキシトシンこそが経済を活性化させるというものです。 しかしこの本にはオキシトシンの負の側面についての知見が抜け落ちています。 その負の側面とはオキシトシンには愛着形成を促すと同時に排他性や攻撃性を高める作用があり、正確には敵と味方

デキる男になるべきかモテる男になるべきか Part.2 ー論理と共感のジレンマー

~前回のあらすじ~ 車のことが大好きでたまらない理系の非モテ男。ある日、知り合いの女性のカートラブルを解決しようと奮闘するものの、対応を誤り女性の機嫌を損ねてしまう。その後モテ男のスマートなやり取りを目にするが、ことの流れに納得がいかず腹を立ててしまうのであった… さて今回は解説編ということで、例のエンジントラブルのコピペについてもう少し掘り下げて考えてみたいと思います。 論理モードと共感モード件のコピペはとどのつまり、論理と共感のすれ違いを表面化させたものですが、その