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otari sap bakery club の設立へ到るまで①

 長野県の小谷村の中谷(なかや)地区が5年前から取り組んできた『小谷(おたり)樹液プロジェクト』。

 カエデ類は、冬季に幹に孔を開けると、糖度2~3%の樹液を採ることが出来ます。多いときには、一晩で20ℓも出ることがあります。
 その樹液を糖度66%まで煮詰めると、国産メープルシロップを作ることが出来るのです。40分の1の量になるまで煮詰めるようになる、と言われていますが、実際に煮詰めてみると1/60~1/100にまで減ることがわかりました。仮に1/40としても、40ℓの樹液を採って1ℓのシロップしか出来ないのです。
 クルミ類も同様の甘い樹液が出てシロップ化出来ますが、メープルとは異なる味になります。
 なお、芽吹きの時期が近付くと、樹液はパタリと出て来なくなります。

 中谷地区は、平成26年に計画を立て、樹液生産の先進地である埼玉県秩父市へ3回行って情報提供していただき、平成28年2月から毎年交替の当番制で樹液の採取を行ってきました。

 しかし、前述のとおりメープルシロップにするには気の遠くなるような煮詰める作業が必要であり、また完成してもわずかの量になってしまうため、樹液原液のまま使うことも検討していました。

 さらに、販路が無いまま樹液を採取することは、「何のためにやっているんだろう」というモチベーションの低下を招き始めていました。

 そこで、活動を知ってもらうことと併せて、樹液を活用したい人の発掘にもつなげようと平成30年からイベントを企画し開催しました。

 平成31年のイベントは、「第1回おたりの森のスイートフェスタ」と名付け、シロップをかけたアイスクリームと共に樹液で作ったカレーライスを参加者に提供しました。

 ここまでの企画・立案・実行は、森林(もり)づくりコーディネーターの山口真保呂が前職時代から人を紡ぎながら続けてきました。

 地元紙の大糸タイムスの記者は、こうした活動に大いに賛同してくださり、「これでもか」というぐらいにいつも記事を掲載して応援いただいています。

 地元の小谷小学校でも授業に取り入れていただくよう働き掛けした結果、昨年から樹液の授業が実現しました。

 人の興味や関心は向いてくるようになってきましたが、まだ肝心なことが進まない。

 樹液をお金にしていくことです。

 「第1回おたりの森のスイートフェスタ」の情報発信は、次のステップへの足掛かりになってくれました。安曇野市明科の「のきさきカフェ」とつながったことが、前へ進めてくれたのです。

                       (文責:山口真保呂)

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